「ほぼ日手帳コピー大賞」入賞者山本奈見さんほぼ日手帳は、自分を励ましてくれる存在です。

昨年9月に行われた「ほぼ日手帳コピー大賞」では金賞1名、入賞2名、特別賞1名の計4名の方が受賞されました。そのうち、入賞作の「じぶん応援手帳」というコピーを応募してくださった山本奈見さんは、2007年から「ほぼ日手帳」を愛用してくださっているとのこと。どんなふうにつかっているか、ぜひ聞いてみたい!滋賀県在住の山本さんと、琵琶湖のほとりで待ち合わせ、お話をうかがってきました。
ーー
はじめまして。
よろしくおねがいします。
山本
よろしくおねがいします。
今日、ぜったい緊張するだろうなと思って
昨日は予行練習をしてきたんですよ。
ーー
えっ、そうなんですか?
山本
はい。主人を相手に手帳を見せていたんですけど
「ちょっと見て。こんなん貼ってる!」
「うわあ、私のこのときの心境!」
みたいな感じで大騒ぎ(笑)。
ーー
(笑)
手帳を読み返されてみて、いかがでした?
山本
読み返すと、書いた当時の
いろいろなことを思い出しましたね。
たとえば、このページを見ると
「うちの犬、このとき、まだ生きてたんやなぁ」とか。
ーー
「犬のごはん」とか「ペットシーツ」とか
書かれていますね。
山本
はい。このときは徳島の実家で
暮らしていたんですけど
毎日、犬の介護に追われていたんです。
うちの家族は私以外みんな犬が苦手だったのと
私が頼み込んで飼うことになった経緯もあって、
「自分がリッキーの面倒をみなくちゃ」と思って。
仕事の昼休みに家に帰って
面倒を見てから仕事に戻ったり、
床ずれをするから3時間ごとに動かしたり‥‥。
すごく大変だったのを覚えています。
ーー
このページを読むと、リッキーへの
思いがあふれていて、切ないですね。
山本
そうですね。
「リッキーとは添い遂げた」という気分でしたね。
この時期はずっと犬の面倒をみていたので
自分の時間がなかったんですけど、
リッキーがいなくなって、悲しみつつも
だんだん自分の時間が持てるようになって、
旅行もできるようになって
少しずつページの内容が変わってきました。
ーー
ほんとですね。だんだんカラフルに。
このイラストも、かわいいですね。
山本
ほんとですか? うれしいです。
でも、イラストを描いているのって
このページぐらいだと思います。
昔は、マンガ家を目指していたんですけど。
ーー
え! そうだったんですか。
それは、どんなきっかけで?
山本
小学1年生のときに、卑弥呼のことを描いた
歴史マンガを読んで、それがおもしろくて
自分も絵を描くことが好きだったし
「マンガ家になりたいな」と思ったんです。
高校では美術を専攻していたのですが、
「やっぱりやりたいのはマンガなんだ」と
京都精華大学のマンガ学科にすすみました。
ーー
マンガ学科!
じゃあかなり本格的に目指されていたんですね。
山本
そうですね。
当時は持ち込みに行ったりとか、応募したりとか、
かなりがんばっていたんですけど、
まぁ、いろいろあって、こんがらがって
結局挫折した形になってます。
卒業後は全然関係ない職場で働いて
東京に住んでからは
資格をとって不動産業界に入りました。
これは、宅建の資格試験前のページです。
このときちょっとナーバスだったみたいです。
ーー
ご自分を励ましているのが、文章からも伝わってきます。
山本さんが「コピー大賞」の授賞式のときに
「20代後半から、友達と一緒に
 自分応援キャンペーンを始めた」
とおっしゃっていたのを思い出しました。
山本
そうですね。
「自分を応援する」という発想も
自分に自信がないところが始まりでした。
がんばりたいときとか、不安で仕方ないときとか、
どうにか踏んばりたいときに
まわりから「自信持って」と言われても、
信じられる自分がいない。
だけど、信じられないからといって、
自分なので見捨てるわけにはいかず。
「じゃあもう、応援しかないやん」という感じで(笑)。
そこから、この発想につながりました。
ーー
そのときの気持ちや状況が
手帳に正直に書かれているように感じます。
山本
そうかもしれないです。
だから後になって読み返すと、
書いている内容に励まされることもあります。
と言いつつ、忙しいときは
何も書いていないんですけどね。
そういうときでも「日々の言葉」の
気に入ったところに付箋を貼ったり‥‥。
ーー
付箋がたくさん!
しかもこうやって感想も書いてくださって。
山本
はい。けっこう思ったことを
自由に書いちゃってます。
ーー
あと、手帳にはさんでいる、
このイラストも、すごくかわいいですね。
山本
あ、これは、大学時代に、
当時同級生だった今の主人が
「551の蓬莱」という豚まんを
モチーフにして描いたキャラクターなんです。
何年か後に再会して、付き合うことになって、
その記念に私が描きました。
なんか、ちょっと浮かれていたのかも(笑)。
ーー
ということは、
旦那さんも同じマンガ学科だったんですか?
山本
はい。主人は今、マンガ家になっています。
ーー
え!
山本
『コミックビーム』という雑誌に
山本健太郎という名で描かせてもらっています。
ファイトじじいクラブ』とか
最新作だと『ウインド・ハート・ブレーカー』と
いうマンガなんですけど。
ーー
(iPhoneで検索して)
うわぁ。ほんとだ。 すごいですね!
後で読ませていただきます。
ところで、このコピー大賞があった月のページに
「式まで1か月!」と書かれているんですけど
ご結婚されたのは
コピー大賞の授賞式のすぐ後なんですか?
山本
そうなんです。入籍は先にしていたんですけど、
結婚式は10月だったので、
この時期は、もうめちゃくちゃ忙しかったです。
ーー
予定がぎっしりですね。
披露宴の準備で相当お忙しい中、
授賞式に出ていただいて
ありがとうございました。
山本
いえいえ、とてもうれしかったです。
それに、あんなふうに人前に立たせていただいたので
おかげさまで結婚式では緊張しなかったんですよ。
授賞式で全く知らない人の前でスピーチするという
あの緊張感と比べたら
結婚式なんて「みんな知り合いやん」みたいな(笑)。
ーー
(笑)
ところで山本さんご自身は、
マンガは今、全然描いてないんですか?
山本
ここ2年ぐらいは
まったく描いていないですね。
本当に気が向いたときだけ、
イラストをちょこっと描くぐらい。
‥‥ただ、実は今日、付け焼き刃なんですが
感謝の気持ちをマンガで描いてきたんです。
しばらく描いてないから自信がないんですけど‥‥。
ーー
えっ!
マンガを!?
山本
はい。
ペンが乗っていないところもあるし、
お見せするのが恥ずかしいんですけど。
「ほぼ日」の松本さんから、
取材のお話をいただいたときに
すごくうれしかったので、その気持ちを。
ーー
うわぁ‥‥これはすごいです。
糸井や乗組員の特徴がよく出ていますね。

クリックで拡大します

山本
久しぶりに描いたから、線もガタガタで恥ずかしい。
でも「ほぼ日手帳」は方眼がガイドになって
フリーハンドで線が書けるから
漫画を描くのにちょうどよかったです(笑)。
ーー
なるほど、方眼が意外なところで役にたつ(笑)。
最後にすごく素敵なページを
見せてくださってうれしいです。
今日は本当にありがとうございました。
山本
こちらこそ、ありがとうございました!

▲手帳のポケットには、愛犬リッキーの写真など
「応援」グッズがいっぱい詰まっていました。

1冊ずつ、当時の気持ちをたしかめるように
ページをめくってくださった山本さん。
「じぶん応援手帳」というコピーがうまれたのも
日々起こる、いいことも悪いことも、
すべて正直に手帳に書き込んできた
長い時間があったからなんだなと思いました。
そんな山本さんは、
「取材中にうまく答えられないかもしれないから」と、
コピーを書いた理由を、ご自身で文章にまとめて
持ってきてくださったんです。
その内容も、とても素敵だったので、
そのまま掲載したいと思いました。
どうぞ、ご覧ください。

「じぶん応援手帳」というコピーについて

山本さん、どうもありがとうございました!

2014-02-26-WED

撮影協力:なぎさWARMS(オーガニックカフェ&レストラン)
〒520-0806 滋賀県大津市打出浜15-5

「じぶん応援手帳」というコピーについて

「ほぼ日手帳」を友人に薦める時、
私ならなんて言うだろう? って考えたら
「自分を応援するにはぴったりのアイテムやで!」とか
「自分応援キャンペーン中なら、
 ぜひこの手帳を薦める!」でした。
それで、分かりやすくまとめて
「じぶん応援手帳」にしました。
口に出すと気恥しいし、
ちょっと重い気もしてしまいますが、
文字だと受け取るほうも気楽に、気持ち良く、
受け取ってもらえるかも、と思いました。
そのためにも、『自分』はひらがなの方が
優しい雰囲気になるなぁと思い、ひらがなにしました。

「自分を応援する」という意識は、
自信の無さから来ています。
必然的に何かやらなあかん時、勘違いされたと感じた時、
頑張りたい時、理想に追い付きたい時、
不安でしょうがない時、
とにかく踏ん張りたい時に、自分に自信がない。
自信を持てと何度も言ってもらえた事はあるけど、
それでもイマイチ自分が信じきれない時に
生まれた発想です。
この先信じられないからと言って
自分自身を見放すわけにはいかない。
じゃあ、もう「応援するしかないな」と思いました。

「ヒトに優しくって言うときの、
 ヒトのなかには自分も入ってるんだよ」という事を
私は「ほぼ日」で気づかされたと思います。
「ほぼ日」のコンテンツを何気なく楽しんできた中で、
自分の事を励まして行こうと思えたところがあります。
そんな「ほぼ日」のスピリットが入った手帳は
そばに置いておくだけでも、私にとって
自分を応援するのに役に立ってきたアイテムです。

また、このコピーには、友人がひとりで落ち込んだ時に
自分自身を応援してほしいと言う思いも込めています。
電話できる時や会える時なら励ますことができますが、
いくら私がエールを送っても、
本人が自分に優しくしてあげないと、
苦しいし辛いだろうと思います。
そんな時、そばにふと手帳があって、
オススメした私の言葉を思い出してくれたらいいな、
どんな状態であっても、とりあえず生きる方向で
自分に優しくしてほしいなぁという思いが入っています。

そんなつくる過程はさておき、
このコピーが気さくに目に止まってくれることを
まずは願っています。

山本奈見

とじる