- ――
- (西尾さんの著作を見ながら)
ここにあるのは代表作の一部ですから、
あらためて西尾さんの著作物って
ものすごい数ですね。
- 西尾
- いえいえ、そんな。
- ――
- 私が西尾さんのことを知ったのは、
週刊連載していたマンガの原作者としてでした。
西尾さんの独特の言い回しや言葉遊びが
おもしろくて、毎週たのしみにしていました。
- 西尾
- ありがとうございます。
- ――
- 当時は週刊連載もかかえながら、
これらの小説も
コンスタントに出されていましたよね。
- 西尾
- そうですね。
- ――
- なかなかハードな
スケジュールだったと思うのですが、
もともと、スケジュールは
手帳で管理されていたんですか?
- 西尾
- いえ、それがそもそも
僕は手帳をつけるのがすごく苦手だったんです。
最初のほうは張り切ってぎっしり書くんですけど、
だんだん書かなくなって、
最後はただの白紙になってしまうんですよ。
仕事をした記録とかスケジュールとか、
ちゃんと残しておきたいという気持ちは強いのに、
買えども買えども続かない、を繰り返していました。
そんな僕がはじめて1年間通してつかえた手帳が、
「ほぼ日手帳」だったんです。
- ――
- わあー、うれしいです。
それはいつごろのことだったんですか?
- 西尾
- 2009年ですね。
今日同席してもらっている
担当の矢島さんがつかっていらっしゃるのを見て、
この世にそんな手帳があるんだ、
ということを知りました。
- ――
- この世に(笑)。
- 西尾
- 今では1日1ページの手帳って
そんなに珍しくなくなりましたが、
当時はまるっきりの初見でして。
- 矢島
西尾さんの
担当編集者 - わたしは2007年からなので、
もう7年間、「ほぼ日手帳」です。
「ほぼ日」もずっと好きで、読ませていただいてます。
- ――
- ありがとうございます!
まず、矢島さんがつかっていたのを見て
西尾さんは「ほぼ日手帳」を知った、と。
- 西尾
- そうです。
そういう手帳があるんならつかってみたいと思って
いくつか文房具屋さんをまわったんですが、
どうしても見つけられなくて。
思い切って、矢島さんに
「すみません、
その手帳はどこに売ってるんですか?」
と聞いて、ロフト限定であることが判明(笑)。
- ――
- ああ、ご足労をおかけしてすみません(笑)。
そのころは、
実店舗でほぼ日手帳を置いていただいていたのは
ロフトさんだけだったんですよね。
手にした感想は、いかがでしたか?
- 西尾
- 今ではそれも当たり前のことなのかもしれませんが、
手帳が180度開くのは革新的だったし、
バタフライストッパーにも感動しました。
1日1ページとは思えない軽さもありがたかったし、
名言好きとしては日々のページにある言葉も外せません。
そして、ここが重要なのですが、
はじめて「ほぼ日手帳」を買ったとき、
ガイドブックも一緒に買ったんです。
この本がとてもよかった。
いろんな人の工夫されたつかい方のほかにも、
マス目を意味なく塗るとか
大胆に謎の図が書いてあるとかが載っていて。
案外手帳のつかい方って、
こうも詳しく、しかも多様に
教えてもらえるものじゃないですからね。
それも四角四面でなく、
手帳なのに、なんだかものすごく自由で、
どんなつかい方をしても受け入れてくれるスタンスに
とても救われた気がしました。
- ――
- たしかに、
2009年度版のガイドブックには
「男のほぼ日手帳」などの
小ネタがありましたね。
それが、人を救っていたとは‥‥。
- 西尾
- ガイドブックがあったからこそ
どんなつかい方をしてもいいんだ、と思えて、
はじめて手帳を1年間、続けることができました。
それ以来、毎年欠かさず「ほぼ日手帳」です。
もちろん、ガイドブックも一緒に買っています。
たぶんですが、僕ほどガイドブックを
読み込んでる使い手はなかなかいないと思う(笑)。
▲西尾さんの歴代のガイドブック。
お話から、隅々まで読んでいただいていることが伝わってきました。
- ――
- 今日お持ちいただいたのはオリジナルですね。
いつもカバーなしでつかわれているんですか?
- 西尾
- カバーをつけなくなったのは、
今年からです。
▲西尾さんの「ほぼ日手帳」。2014年版はカバーなしで使用中。
- ――
- それには、なにか理由が‥‥?
- 西尾
- ほんとうは、
2013年のカバーを継続してつかう予定だったんですよ。
2013年につかっていたカバーが
ことのほかお気に入りだったので。
2014年版の本体は発売されると同時くらいに
購入して置いてあったんですね。
しかしせっかちなもので、
手帳をつかいはじめられる12月1日で
我慢がきかなくなってしまい、
カバーをつけないまま本体を、
2013年版と並行してつかいはじめてしまって。
そしたら、意外とつかいやすくて、
カバーをつけずに、そのままつかってます。
現在はオリジナル、カズン、
WEEKS、Hobonichi Plannerを
1冊ずつつかっています。
- ――
- 4冊もつかっていただいてるんですか!?
- 西尾
- 4月からはspring版もつかうんじゃないでしょうか(笑)。
もともと文房具が好きで、
ノートとかいろんな種類を買っちゃうタイプなのですが、
さすがに全種類つかうのは今年がはじめてです。
- ――
- うわー、ありがたいです。
どのようにつかい分けられるんでしょう?
- 西尾
- オリジナルがメインでなんでもありの雑記兼備忘録、
WEEKSが近未来のスケジュールといったところでしょうか。
WEEKSのつかい方はまだ模索中です。
こちらはまだどうにも上手につかいきれていません。
別に手帳をつかう腕があがったわけではないらしく(笑)。
springをなににつかうかはまだ決めていませんが、
4月で一度気持ちを切り替えたいというか。
それから、
カズンはスクラップブックにしています。
映画の半券とか印象に残ったレシートとか、
『日々の断片』みたいなものを貼っています。
オリジナルについてもそうですけれど、
手帳に「貼っていい」というつかいかたが、
ガイドブックが教えてくれた
一番のパラダイムシフトでしたね。
- ――
- 貼るって、実は
一番手をわずらわせない記録方法ですよね。
Hobonichi Planner は、どのように?
- 西尾
- Hobonichi Planner は
見た瞬間、これは欲しい、つかいたいと
衝動買いをしてしまいました。
オリジナルをカバーなしでつかいはじめていたからこそ
カバーがなく、表紙にただ「手帳」と書かれていたその一冊が
ハマる感じだったのだと振り返りますが、
しかしつまり、
それはすでにオリジナルをつかいはじめていたということで
買ってから、さてどうしようかと‥‥(笑)。
僕にとって、1日1ページという区切りは
とてもつかいやすいのですが、
あえてネックをあげるとすれば、
1月の時点で、2月から12月のページが、
まっさらだということなんです。
もちろん時系列にそって
前から順番につかうのが当然なのですけれど、
ときには全ページを均等につかえたらいいなあと、
思っていました。
その考えから、小口のツメの部分を利用して、
辞書にするのはどうかとひらめいたんです。
- ――
- 辞書、ですか?
- 西尾
- ツメの部分に
「あ」「か」「さ」「た」「な」‥‥と書いて、
新しく知った言葉とか、おもしろい言葉とかを
その行のページに書き留めていくんです。
こうすれば最初から全ページを均等につかいはじめられる。
▲この本体の縁の部分のツメに
「あ段」を書き込んで、辞書のようなインデックスに。
- ――
- 手帳を辞書がわりにつかうとは‥‥。
今までに聞いたことがないつかいかたです。
- 西尾
- 職業柄、辞書好きでして。
いつか、自分の好きな言葉を集めた独自の辞書を
つくりたいと思っていたのですが、
まさかこんな形で実現するとは、
衝動買いもしてみるものです(笑)。
ただノートに好きな言葉を書き留めていくのではなく、
この場合「あ行」「か行」「さ行」と
ざっくりした分け方になるので、
時系列が自然に散って、
ランダムになっていくのが刺激的で。
マス目があって書きやすいし、
つくっていても読み返していてもたのしいです。
- ――
- たしかに、不規則になって
単語帳とはひと味ちがうたのしみがありますね。
- 西尾
- 2014年にこだわらず、このまま1冊完成させたいです。
まだ白紙のページのほうが多いですけれど、
これからそれだけの語彙を増やせる余地があるということで、
小説家冥利に尽きます。
- ――
- そういっていただけて、非常にうれしいです。
- ――
- 別のインタビューを読んでいて
旅行がお好きだということを目にしたのですが、
旅行には手帳を持っていくんですか?
- 西尾
- オリジナルを持っていきます。
事前に地図を書いておいて、
旅先では、その地図を見て行動しています。
ただし、地図はできる限りいい加減(笑)に
書くようこころがけています。
道に迷うのが好きなので。
どこだかわからない場所で、
どこだかわからない場所を目指して歩くのが好きで。
このあいだは、山梨の山中で迷いました。
町につながる道だと思って歩いてたんですが、
いっこうにつながる気配がなくて、
これはやってしまったかも、と思っていたら、
遠くにイオンの看板がかすかに見えたんです。
「やった! 町だ!」って‥‥。
あれは、ものすごくうれしかったですね。
- ――
- (笑)。
Hobonichi Planner の辞書としてのつかいかたとか、
道に迷うのが好きとか、
「偶然性」を大切にされているんだなあと思いました。
- 西尾
- そうかもしれません。
旅の目的地も、実はどこでもいいんですよ。
道中で本を読んだり、道に迷ったり、
そういう旅そのものが好きなんで。
旅が好きというより、旅程が好きなのかな。
そういえば、去年は「ほぼ日手帳」に
1~75くらいまで数字をふって
都道府県名や観光名所、テーマパークなどを書いていき、
ビンゴマシンで出た数字のところに旅をしていました。
- ――
- わ、そんなところでも「ほぼ日手帳」が(笑)。
- 西尾
- そういう思い出も、
全部残っているから、読み返したときに
ちょっとした物語になっていて、おもしろいですね。
もちろん、遊びだけじゃなくて
仕事でもちゃんとつかっていますよ。
<おもしろいつかい方を発明しては
試している西尾さん。
後編では、仕事でのつかいかたを紹介します>
試している西尾さん。
後編では、仕事でのつかいかたを紹介します>
終物語(下)
著:西尾維新
Illustration:VOFAN
価格:本体1,500円(税別)
吸血鬼の体質となった高校生・阿良々木暦が、
怪異現象に悩まされる少女たちを助けるべく奔走する
大人気小説「〈物語〉シリーズ」の最新作。
本作では、謎の転校生・忍野扇との戦いがついに決着!
アニメ最新作『花物語』は2014年5月31日より放送開始。
アニメ〈物語〉シリーズヒロイン本
其ノ伍 戦場ヶ原ひたぎ
編: 講談社BOX
価格:本体900円(税別)
「〈物語〉シリーズ」に登場するヒロインそれぞれを主役にした
キャラクターブック第5弾。
今回はついに、阿良々木暦の恋人・戦場ヶ原ひたぎが登場。
恒例の西尾維新書き下ろし企画は、ひたぎの中学生時代を描いた
イラストノベル「ひたぎスローイング」。
書籍については
講談社BOX公式サイトを、
アニメについては
西尾維新アニメプロジェクト公式サイトにて
くわしい情報をご覧ください。
Illustration/VOFAN
©西尾維新・講談社
2014-04-04-FRI