- ───
- 糸井さん、「虎へび珈琲」オーナーの
タナカサトルさんです。
- 糸井
- よろしくお願いします。
はじめまして、ですよね?
- サトル
- はじめましてです。
よろしくお願いします。
ぼくはよく青山で
糸井さんのお姿を拝見してますが。
- 糸井
- え、ほんとですか?
見られてた(笑)。
- ───
- そして焙煎士の今井惇人さんです。
- 糸井
- この方はね、
パルコのお店で何度もお会いしてます。
- 今井
- いつもありがとうございます。
よくお越しいただいて。
- 糸井
- なぁんとなく、おふたり、似た雰囲気で(笑)。
一緒にやってると似てくるんですかね。
- 今井
- あ、甥っ子なので。
- 糸井
- え?
- サトル
- ぼくが今井の叔父なんです(笑)。
- 糸井
- ほんとですか?
- サトル
- ほんとです、親族なんです。
- 糸井
- あー、そりゃあ似てるわけだ。
親族経営。
- サトル
- そうですね(笑)。
- 糸井
- で、きょうは試飲をする。
- 今井
- そうなんです、3種類もってきました。
- 糸井
- 3種類。
- ───
- いつか「虎へび珈琲」さんと「ほぼ日」で
コラボブレンドができるといいねと
ずいぶん前からご相談をしていました。
それで、おふたりが試行錯誤を重ねてくださって、
ついに3種類の候補まで絞り込まれたと、
いまはそういう状況です。
- 糸井
- その候補から、ひとつを選ぶ。
- ───
- はい。
- 糸井
- ここにいるほぼ日のみんなはもう飲んだの?
- ───
- いえいえ、まったくはじめてです。
ですからものすごくたのしみです。
- ───
- ではサトルさん、候補の3種類を
ご紹介いただけますでしょうか。
- サトル
- そうですね、
3種類のうち最初の2つは、
糸井さんのイメージかなと思うものです。
もう1つは、ほぼ日ぜんたいの、
明るさやクリエイティブをイメージして。
どれもフルーティーな感じです。
- 糸井
- フルーティー。
きっと、ぜんぶおいしいんでしょう?
- サトル
- ええ、どれも(笑)。
なのできょう却下されたふたつはボツではなく、
うちのお店で出します。
- ───
- つまりすべてが自信作‥‥。
ぜひ、試飲させてください!
- 今井
- わかりました。
ではまず、こちらのブレンドから。
- 糸井
- ほぉ‥‥。
- ───
- え、この色‥‥。
もう、見た目から迫力を感じます。
- 今井
- 豆の香りをどうぞ。
- 糸井
- ‥‥‥ん? これは‥‥。
ちょっとみんなも香ってみてよ。
- ───
- うわぁ‥‥。
- 糸井
- ‥‥なんか、覚えがある香りだな。
- 今井
- その豆をおとしていますので、
飲んでみてください。
きょうはホットで試飲していただきます。
- ───
- ありがとうございます、いただきます‥‥。
- 糸井
- 飲みます。
- 糸井
- ‥‥すぐに感想を言えない。
- ───
- すごい‥‥。
なんてさわやかな。
そして飲みやすい。
- 糸井
- ‥‥これ、なんの匂いだっけなぁ。
- ───
- たしかに記憶のどこかに触れるような‥‥。
- 糸井
- べつに謎解きをしてるわけじゃないんだけど、
この香りを知ってる気がして‥‥。
おおきく言うと、チョコレートですよね。
- 今井
- はい。チョコレートには近づけています。
- 糸井
- ただそれだけじゃなくて、
なんかこう、柑橘系の風味が‥‥。
オレンジピールを入れたチョコレートみたいな。
- 今井
- 正解です。
- 一同
- おーー。
- ───
- そうか、これ、チョコオレンジの味だ!
- 今井
- はい(笑)。
- サトル
- これがいちばんラグジュアリーというか、
華やかな味わいのブレンドですね。
- 糸井
- きらきらしてるよね。
ああ、いいなぁ‥‥。
- サトル
- これはぼくもおすすめです。
- 今井
- いまのが①番で、
次が②番のブレンドです(袋をあけている)。
- ───
- 期待が高まります。
- 糸井
- わくわく。
- ───
- ‥‥あ、もう香りが。
- 糸井
- ああ~、はいはい。
- ───
- ②番の香りが、もうここまで。
- 糸井
- これは、メロンです。
- 今井
- 正解です(笑)。
気づくのが早いですね。
(すでに②番を淹れている)
- 糸井
- だってニュースが飛んできてるもん。
「お伝えします、メロンです!」みたいな。
- ───
- はっきりと届いていますね。
- 糸井
- 笑っちゃうくらいメロン。
- 今井
- 豆がこちらです。
- ───
- ①番と見た目は似てますが香りが‥‥。
吉本ばななさんの「Banana Blend」ときには、
バナナそのものの香りでしたが、
これも同じく、メロンそのものを感じます。
- 糸井
- 何かで香りを
付けたんじゃないかと疑っちゃうくらい。
- サトル
- インフューズドコーヒーですね。
フルーツやスパイスに漬け込んだり、
香料を加えたりする。
- 糸井
- そういうことはしていない。
- サトル
- してないです。
そういう香り付けはもっとダイレクトで、
トゲトゲしているというか、
ちょっと嫌な香りになっちゃうんです。
「虎へび」の香りは、
豆の焙煎とブレンドだけでつくっているので。
- 糸井
- 魔法ですよね。魔法。
(ぽいっと一粒、コーヒー豆を口に放り込む)
- ───
- 食べた!
豆をそのまま食べちゃった!
- 糸井
- (ポリポリ)あまーい。
- 今井
- どうぞ、②番のホットです。
- ───
- わぁ、ありがとうございます。
いただきます。
- 一同
- いただきまーす。
- 一同
- ‥‥‥おいしい~~~。
- ───
- コーヒーには、メロンも合うんだ。
- 糸井
- もう、やりすぎなんじゃない?
っていうくらいメロンだね(笑)。
- 今井
- やりすぎましたか(笑)。
- 糸井
- でもねぇ、でも、これはすごいよ。
- 今井
- ありがとうございます。
- 糸井
- で、まだもう1種類ある。
- サトル
- はい。
- 糸井
- うーん、ぜいたくな試飲会だなぁ。
最後はどんなのがくるんだろう。
- 今井
- まずは豆の香りを。
- 糸井
- ああ、いいですね。
- ───
- メロンの次はなんの香りか。
当てたいですね。
- 糸井
- クイズ?
- 今井
- どうぞ。
飲みながらイメージしてみてください。
- ───
- これは‥‥
コーラ? クラフトコーラとか。
- 今井
- なるほど。
でもちょっと遠いかもしれません(笑)。
- ───
- ですよね、もっとフルーティだし‥‥。
- 糸井
- あえて言うなら、パイン飴みたいな。
- サトル
- ああ、それは近いです。
- ───
- 正解は?
- サトル
- 正解はトロピカルフルーツ。
- 一同
- ああーーーー。
- 糸井
- きょうのブレンド3種類は、
いつもちゃんと、この味になるんですか。
- 今井
- なります。
- 糸井
- すっごいね。
- 今井
- 香りを解析したり、
微生物の発酵で香りをつくったり、
計算をしてつくっていますので。
- 糸井
- その数字とか、
作り方のメモは残してるんですか。
- 今井
- パソコンにデータを残してはいます。
ただ、おそらくですけど、
ほかの人がそれを見てつくっても
再現はできないと思います。
焙煎の感覚とか、発酵の具合とか、
そのあたりは書ききれない部分があるので。
- 糸井
- はあ~、変な人だなぁ(笑)。
どうしてその道に入り込んだの?
- 今井
- どうしてでしょう(笑)、
気づいたら出られなくなっちゃって。
- ───
- うーーん‥‥。
ここでひとつに決まるんですね。
- サトル
- 決めていただきたいです。
- 糸井
- ‥‥‥‥。
- ───
- ぜんぶ個性的で、それぞれにおいしい。
難しいです‥‥。
- 糸井
- ‥‥‥‥。
- 一同
- ‥‥‥‥。
- 糸井
- ‥‥あんまりその、なんだろう。
- ───
- はい。
- 糸井
- 香りの答えをみんなで探すみたいなのは、
ちょっとこう、話が立ちすぎるんです。
クイズが中心になっちゃうような。
たのしいんだけどね。
- ───
- ああ‥‥。
- 糸井
- もっとこう、
「コーヒーを飲んでいる」っていうところが、
大事にされるべきだなぁとは思うんですよ。
- ───
- たしかに。
虎へびさんの「エイジドブレンド」に夢中なのは、
「いちごチョコみたいな香りだから」が
真ん中の理由ではないです。
やっぱり、
「あのおいしいコーヒーが飲みたい」です。
- 糸井
- うん。
そう考えると、①番の香りでぼくが、
「なんか覚えがある」って思って、
記憶を追っかけていって、
その香りのコーヒーを飲んで、
「ああ、おいしいなぁ」と思ったのは、
すっごくたのしかったんですよ。
- ───
- 「チョコオレンジ」という答えを見つけなくても。
- 糸井
- うん。
- サトル
- ぼくのイチオシも①番ですね。
- 糸井
- そうですか。
- サトル
- 飲む人の様々な感覚を刺激する
ブレンドに仕上がったと思っています。
- ───
- ‥‥わかりました。
コラボブレンドは①番に決定ということで。
- 糸井
- そうだ、この①番に決めてさ、
これと、「コーヒーらしいコーヒー」の
2種類をセットにして販売すれば、
飲む人は両方を
いったりきたりできるんじゃない?
- サトル
- ああー。
- ───
- コーヒーらしいコーヒー?
- 糸井
- 「あそこの珈琲屋はたしかにおいしいよね」
っていうオーソドックスなコーヒーが、
ひとつ、こう、
センターに居る必要がある気がするんですよ。
そうしたら、そこからうまれる、
いろんなものがぜんぶ、
「いい変化球」として味わえると思うんです。
- ───
- まさしくそういう存在、
オーソドックスな深煎りがありますよね。
- サトル
- ええ。
虎へび・ダークブレンド。
- 糸井
- ダークブレンド。
ぼくはまだ飲んでいないコーヒーです。
- サトル
- おいしいですよ。
もともと「虎へび珈琲」は、
そこがはじまりだったんです。
- 今井
- 常連さんは、
ダークブレンドを選ぶ方が多いですね。
- サトル
- カビ毒とかタンニンとか、ネガティブな成分を
科学的に削ぎ落としたコーヒーをつくるという
誕生の経緯がありまして、
そこを初期から
評価してくださるお客様も少なくないので。
- ───
- コーヒーが苦手とか、
飲むとお腹をこわすという人でも、
「虎へび珈琲」ならいけちゃうそうです。
- 糸井
- すっきしりてますよね。
- サトル
- そういうすっきり飲めるコーヒーを、
誰でも簡単に淹れられるのも特徴なんです。
- 糸井
- 誰でも?
- サトル
- ええ。
タンニンをおとさないために、
フィルターとかお湯の注ぎ方とか、
様々なところで精度の高い調整ができるのが、
「いいバリスタ」と言われています。
ところがうちの豆は、
最初の時点でタンニンを抜いてあるので。
- 糸井
- 気を使わないでください、と。
- サトル
- ええ。
- 糸井
- あなたがどう淹れてもおいしいです、と。
- サトル
- はい。
「虎へび珈琲」の豆にはすべてその
自然科学的な処理を施していますが、
ダークブレンドはシンプルなだけに
飲みやすさの特徴がわかりやすいかもしれません。
- 糸井
- その豆は、いまここには無いんですか。
- 今井
- いま、あります。
- 糸井
- あ、ある。
(ポンと手を打ち)飲ませて。
▲この日たまたまお持ちだった「ダークブレンド」。
▲まずは香りから。
▲今井さんが手際よく淹れてくださいました。
▲オーソドックスなブレンドの、感想は?
「おいしいわ。やっぱりこれと組み合わせるのが正解だね」
▲ぜいたくな試飲会は、終了です。
こうして、3つの候補の中から1つが選ばれ、
「虎へび珈琲」と「ほぼ日」の
コラボレーションブレンドが決定しました。
また、試飲会での糸井重里の発案により、
コラボブレンドの最初のお届けは、
オーソドックスな深煎り
「Torahebi Dark Blend」との
セット販売というかたちとなりました。
個性的な風味と、オーソドックスな味わい。
2つの「虎へび珈琲」を、
いったりきたりしておたのしみください。
(コラボブレンド試飲会のレポート、終わります)