|
ほぼ日 |
まずは、最初のお話をうかがいたいのですが、
つむぎをはじめたのは、何年前で?
|
緒方 |
もうすぐ10年になります。
|
ほぼ日 |
10年ですか。
どういう出会いだったんでしょう?
|
緒方 |
近所にある絵本やさんで、
つむぐ前の羊毛を見かけたんです。
かごの中に寄り添うように入っていて、
綿菓子みたいにふわふわで。
「何、これは?」って思ったんです。
「何にするものなんだろう?」
お店の人に聞いてみたら、
「これがフェルトになるんです」って。
自分で好きな色をのせて、
お湯と石けんをかけてこすれば、
好きなデザインでフェルトができるって聞いて、
びっくりしたんですよ。
|
|
ほぼ日 |
フェルトが最初だったんですね。
|
緒方 |
そうです。
以前は子供服のテキスタイルとかを
やっていたので、
模様や形をあんなに自由につくれるって、
ほかにあんまりないじゃないですか。
それで、子どもが寝てる間につくりはじめました。
|
ほぼ日 |
緒方さんは、
お子さんがふたりいらっしゃるんですよね。
|
緒方 |
上は男の子で、下が女の子。
絵本の登場人物をつくったりしていたんです。
こんなのですとか。
|
|
ほぼ日 |
わあ、かわいいですねえ。
|
緒方 |
このフェルトの材料が、
山梨の「アナンダ」というお店に
いっぱいあるっていうのを聞いたので、
通信販売で注文していたんです。
そうしたら、たまたま「アナンダ」の奥さんが
電話に出て「あなたは吉祥寺ね」って。
今度、吉祥寺にお店ができるって
教えてくださったんですよ。
「お店ができたら遊びにきてね」
と言われたので行ってみたら、
その日から働くことになりました。
|
ほぼ日 |
その日から!
|
緒方 |
ええ。
それで、働くことになったお店に、
いっぱい並んでいたんです、これが。
|
|
ほぼ日 |
つむぎ車が。
|
緒方 |
みた瞬間に、
「ほしい」と思っちゃったんですよ。
編み物も得意じゃないのに、
とにかくほしくて、買って‥‥。
それで、こうして今まで続いているんです。
|
ほぼ日 |
10年‥‥。
「つむぐ」という作業の、
いちばんの魅力はどういうところなのでしょう。
|
緒方 |
そうですね‥‥やっぱりきもちいいんです。
無心になれるというか。
|
ほぼ日 |
なるほど。
見ているほうも、頭がふんわりしてきます。
──それで、その10年の間には、
この本も出版されていますよね。
|
|
緒方 |
はい、『羊毛のしごと』という本を。
2006年の出版です。
|
ほぼ日 |
とてもいい本だと思いました。
ながめていると、羊毛に触れたくなるんです。
|
緒方 |
ありがとうございます。
ご縁があって、出させていただきました。
|
ほぼ日 |
お話を戻しますね。
その『アナンダ』というお店では、
現在も働いていらっしゃるんですか?
|
緒方 |
そうですね、今は週に2〜3日。
|
ほぼ日 |
ほかの羊毛のおしごとは、
どういったことを?
|
緒方 |
つむぎ以外でも、
フェルトや染色の教室を開いたりしています。
イベントのワークショップとか。
あとはときどき、
テレビ、雑誌、広告などで
羊毛のたのしさを伝えられるようなお仕事を。
|
ほぼ日 |
テレビといいますと?
|
緒方 |
NHKの『おしゃれ工房』とか。
|
ほぼ日 |
あ、『おしゃれ工房』に。
|
緒方 |
それをみていただいたり、
『羊毛のしごと』を読んでいただいた方から、
いろいろな雑誌のお話を
いただくようになりました。
『ミセス』という雑誌では、
桐島かれんさんの連載「手作りのある暮し」で、
室内履き、テディベア作りをご一緒できて
すごくたのしかったです。
|
ほぼ日 |
桐島かれんさん、すてきです。
ご主人が写真家の上田義彦さんですよね。
|
緒方 |
その上田さんとは「無印良品」の
広告でご一緒させていただきました。
|
ほぼ日 |
ああー、つながって。
|
緒方 |
2008年の秋に、こういうことを。
|
|
ほぼ日 |
これ、記憶にありますよ。
なんか、すごく大きなポスターになってて。
なるほど、手つむぎだ。
‥‥この手は、緒方さんの手だったんですか。
|
緒方 |
もう、おばあちゃんみたいな手で(笑)。
|
ほぼ日 |
いや、手で仕事をしている方の写真です。
それに、撮り方やデザインで
こういう雰囲気になっているんですよね。
|
緒方 |
デザインは原研哉さんです。
|
ほぼ日 |
原研哉さん、大御所ですね。
|
緒方 |
撮影のときは、とても緊張しました(笑)。
|
|
ほぼ日 |
そうですかあ、
10年続けていると、
そういうふうに広がっていくんですね。
|
緒方 |
でも、ほんとはもっと、
多くの人に羊毛のたのしさを
伝えられたらと思っています。
|
ほぼ日 |
「つむぐ」って、たのしそうですよね。
やってみたくなるんですが‥‥
できるんですか?
|
緒方 |
できますよ。
「アナンダ」の講習会だと、
だいたい8時間が目安です。
そのくらいで、だいたいの方が、
ひとまず「つむぐ」ことはできるようになります。
|
ほぼ日 |
「ひとまず」ということは、
そこから先に、やはり深さがあるんですね。
|
緒方 |
あります。
まず、羊の種類だけでも、ものすごい。
糸の撚り(より)方とか、色とか、
その組み合わせとか‥‥無限なんですよ。
|
|
|
(インタビュー後編につづきます) |