<語られている内容の、日本語の抄訳>
「世界中どの国にも古くから織物の文化があります。
元々は実用性から生まれたものですが、
今ではそれがほとんどの国でアートの域にまで達しています。
私たちがデザインするときに大切にしているのは、
長く使えるものをつくるということ。
今でも私たちが最初に制作したコレクションの
マフラーをしている人を街で見掛けることがあります。
冬が来たらまたこれを身に着けたいと思ってもらえて、
ずっと同じアイテムを楽しんでもらえるのは
本当に素敵なことです。
布に携わる仕事は、ゼロから何かを構築していくことです。
布づくりのスタートで必要なのは自分自身と糸。
絵を描くような感覚ですが、糸を使った表現は三次元です。
その糸と糸を組み合わせ、
織りあげて作品を構築していくのは素晴らしい作業です。
Wallace#Sewellは織物に特化したデザインスタジオですが、
テキスタイルプリントや
カラーコンサルタントの仕事もしています。
現在は約20か国に200~300の卸先をもっています。
デザインを起こす時に特に考えるのは色合い、
そしてそのバランスです。
様々な絵を見て、その絵の中にある色を分析しながら、
台紙に糸を巻いてデザインを組んでいきます。
大学時代に学んだ方法です。
その絵の中にある精神も汲み取って表現したいと思っていますが、
複雑で美しいだけでなく、
商業的に生産できるもの、
そして欲しいと思ってもらえるものを作りたいと考えています。
とてもアナログですが、手織りの織機でサンプルを作って、
最終的に製品化するデザインの構成を考え、
工場に渡す仕様書の形にしていきます。
工場で生産するためのスペックは、
一本一本の糸の組み合わせまですべてデジタルで指示し、
コントロールしています。
ロンドンかドーセットのスタジオでこの指示を出し、
織機をまわして製品化していきます。
織機を動かすための指示はとても数学的で複雑ですが、
この複雑ささえも楽しんで創作しています。
アイデアを実現するためには障害もありますが、
織機を使いこなしてその障害を乗り越えた時は
大きな解放感を感じています。
ひとつのプロダクトの中で表現する織りやテクスチャー、
小さな柄のバリエーションが少しずつ増えていて、
仲間うちでしか通じない言語で
柄の構成について話をすることもあります。
いつも考えているのは
私たちが作ったものがどこに届けられるのかということです。
毎年発表するコレクションが
毎回違いすぎてはいけないということは、
これまでの経験を通して学びました。
お客様は常に新しいデザインや
今までと違う色合いを望んではいるけれど、
それは小さな違いであればよいのです。
Wallace#Sewellのエッセンスが
常に感じられるデザインであることを大切にしています。
テートギャラリーをはじめとするクライアントワークでは、
求められる最終の形がはっきりしているので、
様々な研究を重ねて新しい表現方法を開発してきました。
その経験を通して私たちも前に進むことができ、
自分たちのコレクション作りにも生かされています。
ロンドン交通局の仕事をするという幸運にも恵まれ、
地下鉄や列車、トラムの椅子の張地をデザインしました。
公共の場のデザインに携われたのは
ひとつの夢がかなったような経験です。
今でも地下鉄に乗るたびに、
これを自分たちがデザインしたんだ、
この空間できちんと機能しているんだと、
車内を見渡してしまいます。
私たちは本当にこの仕事が好きで、
アーティストとして創作に没頭しています。
自分たちの創作活動を通じて、
商業的な世界でのニッチな部分を見つけることができたのは
信じられないと言ってもいいくらいです。
色々な意味で素晴らしいことだと思っています」