伊藤まさこさんの連載
「白いもの。」が
本になりました。
「なぜ、白が好きなんだろう?」
インテリアも、着るものも、
日々つかうものにも「白」が多いのに、
それが「なぜ」なのかは考えたことがなかったという
伊藤まさこさんといっしょに、
「白」をめぐるちいさな旅をはじめたのは、
2012年の夏のことでした。

うつわ、シャツ、紙、真珠、料理、道具。
ゆっくり、ゆっくり、3年をかけて、
「白」にかかわるいろいろな場所を訪ね、
たくさんのひとに会って──。
「ほぼ日」に連載してきたそのルポルタージュを、
伊藤さんが、じぶん自身のことばとして書きなおして、
一冊の本に、まとめました。

タイトルは、もちろん、『白いもの』。
実用書でもなく、ものがたりでもなく、
カタログ的な本ともちょっとちがう、
けれどもそのぜんぶが、入っているような。
しいていえば、白を探しに出かけた「旅」の記録‥‥?
どこにもなかったあたらしい、「白」の本になりました。
どうぞ、お読みくださったら、うれしいです。
  • 『白いもの』
    伊藤まさこ 著

    ページ数:160頁
    ISBN:9784838727643

    定価:1,500円 (税込)

──
伊藤さんの本は、1冊ごとに
テーマ性がはっきりしていて、
同じものを2度つくらないというのが特徴です。
いつも「はじめて」の本なんですよね。
伊藤
そんな気持ちで作っています。
じつはこの本に関しては、
「ほぼ日」で連載が始まったのが2012年、
それから3年をかけて連載を続けてきたわけですけれど、
書籍化はマガジンハウスさんが担当してくださいました。
そういうかたちでの書籍づくりという意味でも、
わたしにとっては「はじめて」の本になりました。

──
いつもは、連載から書籍化まで
同じ編集者と二人三脚なんですね。
思い返すと、ぼくらは
「ほぼ日で伊藤さんとコンテンツがつくりたい」
という気持ちで、このプロジェクトをスタートしました。
スタイリングの仕事をお願いする
プロのスタイリストの方である、という以上に、
一緒にコンテンツがつくれる“仲間”に
伊藤さんが加わってくださったことが、
すごくうれしくて、たのしくて、
おもしろかったです。
伊藤
しかも、テーマが“白”だけ。
どうなるのかわからないままに
スタートを切ったことも、
とても新鮮でしたよね。
──
「ほぼ日」の連載も、
いちばん最初に伊藤さんの好きな、
ご自身でお持ちになっている「白いもの」を
紹介していくところから始めましたが、
この本の最初にも、さらにたっぷりの
「白いもの」が掲載されていますね。
伊藤
それに関しては、担当をしてくださった
マガジンハウスの山際さんが
「読者は伊藤さんのもちものも見たいと思うんです」
とおっしゃって。
たしかに、なるほどと思ったんです。
では導入の第一章で
たっぷりページをとりましょうということに。
──
いきなり、もういまは白くなくなってしまった、
かつて白かったほうろう鍋が出てきますね。
度肝を抜かれましたよ。
伊藤
白だけが並ぶときって、
質感がとても大切になってくるんですよ。
──
鍋が黒ずんでしまった質感も、そのひとつ。
伊藤
同じ白なんだけど、布もあれば、
陶器や磁器も、白漆も、紙も、
プラスチックや金属、竹もあって。
──
そのいろんな質感を並べているのが、
第一章になっています。
しかも、表紙は、
白地に白い器を描いたイラストレーション。
とても印象深いですね。

伊藤
表紙を写真にするか、絵にするかは、
最後の最後まで考えたんです。
写真にしたほうがいい、という意見もあるなか、
絵がいい、というわたしのわがままを通して、
こうなったんですけれど、
凸版印刷で行なった最終校了のとき、
立ち会ってくださった
プリンティング・ディレクターの千布(ちふ)宗治さんが、
「生活の本に、この表紙というのは、
 とても目立つから、よかったですよ、伊藤さん」って。

△こちらが凸版のプリンティングディレクターの千布宗治さん。
 私が立ち会ったからといって、
 プリントがいいかんじになるということでもないのですが
 (まったくおまかせなので)
 でも自分の本が作られる工程を見ていくのは
 とても大事なことだと思うし、
 何より現場の方が喜んでくださる。
 本はいろんな人の手がかけられてできあがるんだなぁと
 毎回しみじみ。
──
千布さんというのは、
出版業界でとても有名なかただそうですね。
「白いもの」の写真はデジタルカメラで
写真家の有賀傑さんが撮っていますが、
モニターを通して見るウエブサイトと、
4色のインクを重ねて紙に表現する本とでは、
そもそもの写真表現のなりたちがちがうので、
こういった凄腕の
印刷会社のプリンティング・ディレクターのかたが
ついてくださったのは心強いですね。
伊藤
はい。白の質感も、
とてもきれいに仕上がっていました。

△アートディレクターの有山達也さんからの
 細かい指示がびっしり入った色校。
 この指示をもとに千布さんが色の指定をし、刷っていきます。

△刷り上がったばかり、できたてほやほやのページ。
──
伊藤さんがこれまで出されてこられた本のなかでも、
キリッとした本ですよね。今までにないような。
中の文章も、「ほぼ日」掲載時から、
また、ちがう表現になっていますね。
第1章のほとんどと、
第2章の「白いものをめぐる旅」編の文章は、
書き下ろしですよね。
第3章の対談編は、再編集版に加えて、スペシャル対談も。
伊藤
はい。
──
ちなみに書き下ろしになっているテーマは、
細川亜衣さんの「白い料理」、
山本美文さんの「白漆」、
坂田旬さんと永井製竹さんの「白竹」、
ミキモトさんの「パール」。
「ほぼ日」での取材をもとにしながら──。
伊藤
一人称での文章になっています。
──
細川亜衣さんのところは、
ウエブではけっこう苦労したのをおぼえています。
というのも、おふたりがもともと、
よく知った仲だということもあるのか、
あまり対談らしい対談にならなくて。

写真:有賀傑
伊藤
「ことばじゃなくてもわかっちゃう」
あいだがらですものね。
──
そうなんです!
それで、写真とキャプションというスタイルに。
伊藤
あの頃、わたしが人から話を聞き出すっていうことに
まだ、慣れていなかったということもあって。
──
でも、写真に写った情報というのか、
写真自体がすごく雄弁でしたから、
「ほぼ日」ではああいう(写真とキャプションの)
表現になりました。
今回、それを伊藤さんが、
きっちりと文章になさっているのを読んで、
「なるほど、こんなふうに観察していらしたんだ」と。
レポーターの役割だったウエブの編集担当からしても、
たのしい内容でした。
伊藤
よかった(笑)。
「ほぼ日」の連載は、読み返して、
いろんなパターンがあったのが、
わたしもおもしろかったです。
インターネットには、
書籍とはまた全然違う世界が広がっていますよね。

──
そう。だから、「ほぼ日」を読んだかたでも、
この本は、とても新鮮に読んでいただけると思います。
伊藤
そうだといいですよね。
インターネットは文字数に制約のない世界、
でも書籍はページ数や文字数に制約のある世界。
その制約の中で話をまとめるということも、
たいへんだったけれど、
とても、楽しい仕事でした。
(後編につづきます)
2015-07-30-THU
 
 
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN