湿板写真、というのは、古典的な写真の技法。
いま、ほとんど失われてしまったこの技法を、
現代のものとして復活させ、
みずからの作品として発表をつづけているのが
写真家・菅原一剛さんです。
湿板写真というのは、
あの「坂本龍馬」の肖像写真をイメージしていただければ
わかりやすいかもしれません。
およそ150年前に日本に渡来した写真の技法で、
フィルムが発明される「以前」の技術です。
ガラスの板にコロジオン溶液を塗布し、
硝酸銀溶液に浸すことで感光性を持たせます。
その湿った状態で撮影をおこない
(像を結ぶまでには時間がかかります。
数秒から数十秒ということも!)、
現像には硝酸第一鉄溶液をつかい、
シアン化カリウム溶液で定着させ‥‥という、
(わかりにくいですよね)
とってもたいへんな方法なのです。
菅原さんがこの技法を使う理由、
研究をかさねて実現させたかった理由は、
銀塩写真に比べて、紫外線に強く反応するという特徴ゆえ。
湿板写真には「ひとの目に見えない光」が写るのです。
(くわしいことは、このふたつのコンテンツをどうぞ。)
桜の花びらが、はらはらと散る理由。
目に見える光と、目に見えない光。
今回の「江戸桜」のラベルは、
まさしく菅原さんの湿板写真による
桜の花がベースになっています。
場所は、東京都小金井市と
小平市・西東京市・武蔵野市にまたがる
都立の「小金井公園」。
「江戸時代、小金井公園の
すぐ横を流れる玉川上水に、
多くの山桜が植樹されました。
おそらく今では、その桜たちの子孫が
公園内の桜となっているのでしょう」
(菅原さん)
現在では、山桜を中心に、
染井吉野、霞桜、大島桜、里桜など、
50種類、約1700本の桜が拡がっている小金井公園。
それを写した湿板写真は、
「江戸桜」のデザインにぴったりだったのです。
「桜たちのキラキラと輝くすがたを写したくて、
江戸時代に渡来した
湿板写真という古典技法を使ったんです。
もちろん、いまでも、
この桜たちを撮り続けていますよ」
(菅原さん)