乳酸菌でトリプル発酵!?
よい香りをつくる
パラカセイという乳酸菌の働きで
トリプル発酵させた微発泡の日本酒
それが「パラカセイ」というお酒です。
香り高いほのかな甘さと、ほどよい酸味。
山田錦(酒米)が出す深いコクと旨味。
洋食全般、とくに肉料理やチーズに合う、
微発泡ならではの爽やかさがあります。
「パラカセイ」と呼べる酒質と香味にするには、
発酵させるときに酵母と乳酸菌の働きを
うまくコントロールすることが必要です。
日本酒づくりは並行複発酵といって、
タンクのなかで2つの変化が並行して起きています。
①麹の酵素によってデンプン(お米)を
グルコース(ブドウ糖)に変える糖化。
②できたグルコース(ブドウ糖)を酵母によって
アルコールと炭酸ガスに変える発酵。
この糖化と発酵が同時に起こる
並行複発酵という製法によって、
アルコール度数が高い(度数20%前後)
お酒をつくることができます。
アルコール度数は、ビールは5~6%、
ワインは12%くらいです。
日本酒はアルコール度数が20%近くでます。
並行複発酵というのは
効率よく発酵させるテクニックなんです。
この製法は日本酒ならではで、
世界に類を見ない技術です。
パラカセイをつくる工程では
その世界に類を見ない製法にプラスして、
生きた乳酸菌の働きを加えることで、
トリプル発酵をさせています。
3つの変化を同時にさせるためには、
糖からアルコールを出したい酵母と、
アルコールが苦手な乳酸菌の関係を
コントロールしてあげる技術が必要になります。
うちでは、うまいこと「トリプル発酵」をさせて、
ほんの少し炭酸ガスが残る「微発泡」の
お酒をつくっているんです。
ビンづめのひみつ
多くの酒蔵さんは、ほとんどの場合に
できたお酒を殺菌に必要な温度に温めてから
ビンに入れてキャップをします。
殺菌に必要な温度と、かかる時間は決まっています。
小さなビン(180mlなど)の場合は、すぐに冷えてしまい
殺菌に必要な温度を必要な時間キープできないので、
もとのお酒の温度を上げちゃうんですよ。
本来なら、63℃でいいものを、
小さいビンの場合は、70~75℃に上げるので、
炭酸ガスやアルコール分や香りや味がとんでしまって、
たとえばカップ酒などビンが小さくなるほど、
どのお酒を飲んでも同じになっちゃう。
うちは、お酒を搾ってそのまますぐにビン詰めをして
そのあとビンごと湯煎にかけて殺菌するんです。
冷えた状態で密閉してしまえば、香りや味が逃げません。
一升瓶も小さなビンも、同じ酒質にできます。
もちろん炭酸ガスも封じ込めているので
パラカセイ独特の「微発泡」を感じる風味が出るんです。
開栓するるとき「シュッ!」と音がするのはうちならでは。
みなさんもパラカセイを「シュッ!」としてみてください。
(つづきます)
取材・文:金澤一嘉