糸井 |
つまり、京極さんは
とっても「環境順応性が高い」ゆえ‥‥。 |
京極 |
寝ない、のかな?
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糸井 |
ものすごく、ひとことで言っちゃうと、
「丈夫な人」ってことでいいんですか? |
京極 |
いや、肉体的には、ふつうですよ。
「鍛えるのは体に悪い」という信条(笑)。 |
糸井 |
おかしいじゃないですか。 |
京極 |
‥‥あのね、最近、気づいたんですよ。
若いころには
あんまり気にもとめなかったんですけど。 |
糸井 |
なにに? |
京極 |
温度差とか、あまりわかんないんです。 |
糸井 |
暑いとか、寒いとか? |
京極 |
たとえば部屋がすごく暑かったりしても、
わりあい、平気なんですよ。 |
糸井 |
暑いのが、わからない? |
京極 |
でもね、汗はダラダラ出てるし‥‥
ようするに
「気がついてないだけ」なんですね。
身体は「もうダメだ!」って言ってるのに。
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糸井 |
それって‥‥危ないでしょう!(笑) |
京極 |
危ないですよね。
トイレとかも忘れがちなんですよ。 |
糸井 |
なにかに集中していて? |
京極 |
いや、忘れてるの。
平気で丸一日、行かなかったりとか。
事情を知ってる人なんかは
「今日は、トイレ行った?」なんて
聞いてくるくらいですから。 |
糸井 |
そのこと自体が「おかしい」ってことは
ご自身‥‥おわかりですか?(笑) |
京極 |
ええ、ぜったいおかしいです。 |
糸井 |
おかしいですよね。 |
京極 |
丸一日、トイレに行かないとか、
メシ食うのを忘れてるとか、
暑いとか寒いとかがわからないのは、
おかしいです。気づきました。 |
糸井 |
じゃ、寝ないというのも‥‥忘れてる? |
京極 |
それが、ぼくの性質なら、きっとそう(笑)。
過去をかえりみるに、多少の苦痛とか苦悩なんかは
克服しちゃってるみたいなんですよ、精神的にですが。 |
糸井 |
過酷な状況が、当たりまえだと。 |
京極 |
たとえば、会社員だったら
上司との軋轢とか、仕事のストレスとか、
いろいろあるじゃないですか。
そういうのも含めて、
イヤはイヤ、ダメはダメなんだけど、
結果おもしろいなぁと思ってるわけ。 |
糸井 |
それは、なんとなくわかるけど。 |
京極 |
怒ったり苦しんだりしてる自分が、
またおもしろいですよ。
だから、だいたいどんな仕事も
好き嫌いなく、楽しんでた節がある。
忘れてるのね、なんかしてるときは。
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糸井 |
というか、「克服してしまう」んですね。
暑い寒いから、人間関係から、仕事まで。 |
京極 |
克服というのかなあ。
食べものも好き嫌いはいっさいないし。 |
糸井 |
それ、本については
はっきりそう言ってましたけどね。
「おもしろくない本はない」って。 |
京極 |
‥‥本以外もそうだったようです。 |
糸井 |
最近、気づいたと(笑)。 |
京極 |
なんか、モメごとがあったたときなんかに
「俺が我慢すればいいんだろう」なんて、
開き直る人がいるでしょ? |
糸井 |
そういうことじゃないんだね。 |
京極 |
ぼくは、我慢はキライだからしませんが、
できることをして丸く収まるなら、
それでいいじゃん、と思っちゃう。
じつは、損してる可能性大ですが。状況優先なの。 |
糸井 |
でも、小説を書いたりするときには
なにか軸がないと
読者が不安になるじゃないですか。 |
京極 |
軸というと、作者としての? |
糸井 |
うん。だから、こういうこと言ってる人が
ああいう小説を書いてると思うと‥‥。 |
京極 |
ははは(笑)。
小説の軸は、読者が勝手にみつけるもんだろうと。
作者の主義主張なんか、見えないほうが
見つけやすいだろうと思うわけです。 |
糸井 |
ああ、だから、あんなに登場人物が多いんじゃない? |
京極 |
うん、登場人物はぼくじゃないですからね。 |
糸井 |
そうだ、そうだ。
つまり、あの古本屋、あの探偵、あの作家‥‥。 |
京極 |
それぞれの軸は立てるんだけど、
それぞれ、ぼくの軸とはあんまり関係ないんですよね。 |
糸井 |
その軸どうしに関係性を持たせれば、
ひとつの絵になってくる、と。 |
京極 |
ええ、そうです。 |
糸井 |
なるほどなぁ。 |
京極 |
だって、どっちでもいいことって
多くないですか? |
糸井 |
ええ、そうだとは思いますよ。 |
京極 |
右だろうが左だろうが、
大差ないことって、じつは多いですよね?
いや、もちろん「こうでなきゃイケナイ」って
こともあるんですが、
どっちでもいいことって多いでしょ。
そういうときも選択はするんだけど、
その理由は単なる「好き嫌い」とか
「気分」に過ぎないわけで。 |
糸井 |
‥‥寝る、寝ないの決定も。 |
京極 |
うん。まぁ、どっちでもいいでしょ。
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糸井 |
すごい「睡眠論」になってきた(笑)。
<つづきます>
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