第4回 脳よ、もっと自由にやりたまえよ。

糸井 深い眠りだけでなく、
浅い眠りである「レム睡眠」がなければ、
「満足のいく眠り」は、得られない。

たしかに、風邪薬を飲んだときなんか
目覚めの感覚からすると
「損した」ような気になること、ありますね。
高橋 それは「浅いノンレム睡眠」が
ずっと続いていたから。

実際には8時間くらい眠ったとしても、
レム睡眠が少ないから、
よく眠れたとは、とても思えないんです。

そして、ノンレム睡眠が深いところまでいかないと、
レム睡眠は、きれいに出てこないことがわかっています。

糸井 そうか‥‥睡眠薬や風邪薬なんかの場合は
「ノンレム睡眠が浅い」から、
つまり、深い眠りがないから、
レム睡眠が訪れず、満足感が得られない‥‥と。
高橋 ややこしいですが、そういうことです。
糸井 やはり、「満足のいく眠り」には
ノンレム睡眠とレム睡眠が
健康的なパターンで繰り返されることが
重要だということですね。
高橋 そもそも、ノンレム睡眠は
高等生物が、複雑な脳を休めるための深い眠り。

他方で、レム睡眠というのは
基本的には、身体を休めるための浅い眠りで、
身体は金縛りになったように、動かせなくなります。

そのとき、脳は活発に活動しているので、
昔は、「逆説睡眠」なんて呼んでいましたが。
糸井 ふん、ふん。

高橋 でも、睡眠による「脳の休息」ということを
よくよく調べると、さらにパラドキシカルでして‥‥。
糸井 逆説の逆説?
高橋 わたしたちが起きているときっていうのは、
ある種の「制約」を受けているんですね。

じつは、自由気ままに動いているわけではなくて、
脳のいろんな部位が働いていて、
それらがお互いに作用しながら、何かをしているんです。

おもしろくないと思っていても
さも、おもしろいかのような顔をするとか‥‥。
糸井 つまり、すごく苦労をしながら生きている(笑)。
高橋 ええ、なすがまま、自由にやってるわけじゃない。

で、「脳よ、もっと自由に動きたまえよ」という
役割をになっているのが
どうやら「レム睡眠」らしいぞ、ってことが
このごろ、言われだしたんですよ。

糸井 ははぁ‥‥夢なんか、
それこそ「自由に」見てるわけですもんね。
高橋 ええ、そのとおりです。

で、レム睡眠のあとっていうのは、
睡眠全体からみると「覚醒度」が上がっていますから、
目覚めることが、けっこうあるんですよ。

で、その時点で起きると、
比較的、目覚めが不快でないことがわかっています。
糸井 じゃ、レム睡眠のときに、起きればいいんだ。
高橋 ええ、レム睡眠が続いたかたちで覚醒すると
非常に快適に起きられるんです。

また、レム睡眠のときには
かならず夢を見ているだろうっていうのが
通説になってきていますね、今。

だから、レム睡眠の直後に目が覚めると、
夢として、起きた後も覚えているんです。
糸井 ああ、なるほど‥‥。
高橋 でも、そこで目覚めずに
ふたたびノンレム睡眠に入っちゃうと、
見ていたはずの夢のことは、もう覚えていない。
糸井 つまり、眠りというのは「二層」に別れていて、
上層のレム睡眠で、夢を見ているんですね。
高橋 レム睡眠時の脳波をとってみると、
まるで「起きている」かのようなパターンなんです。
糸井 ああ、それで「逆説睡眠」。なるほどなぁ‥‥。



<つづきます>


2007-11-07-WED


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN