われら、スジナシ応援団!笑福亭鶴瓶の即興ドラマに酔え。
第3回 『スジナシ』から落語へ。
吉田日出子さんの回
(DVD『スジナシ2』に収録)も
すごかったですねー。
すごいというか、
ひどいことするよね、あの人。

泣かされたやつね。
あの人は、天然だけれども、
すごくしたたかな人ですからね。
しかも、それで熟成されてるから。

悪いことするなーって思いながら
観てました。おもしろかった。

うん、悪いことしよる。
それとね、悪いことしよるのはね、
あの人ですよ。柄本明の嫁はん。
あっれ、おもろいでー。

あ、角替和枝さん?
あの人も出てるんだ?

「ゴミを出すおばはん」なんですよ。
朝、ゴミ収集所のところに
ふたりでゴミを出して、
そこで言い合いをするんです。
「あんたそこ置かんといて!」って、
おばちゃんに注意すんねん。

(笑)。
それだけでもまた
岩松了の影があるね。

そうですね。
まあだから、すべてね、あそこらの
日常のスケッチみたいなものは
『お茶と説教』
(1986年に発表された岩松了氏のデビュー作)
とかと同じでね、
まあ、ずるいんですよ。

ずるい(笑)。

日常を切り取ってオチもなく、
人間のひだをきゅっきゅっきゅって
切っていくっていうか。

お客が一歩でも半歩でも踏み出してくれることで
絵が見えてくるっていう。

そのへんはもう「いいずるさ」ですよね。
ぼくはもう好きですから。
岩松了さんのものも
昔は、よーう見に行ったけど。

そのへんが『スジナシ』に
つながってるのかもしれないですね。
で、『スジナシ』っていう番組のなかには、
鶴瓶さんが落語に進む原因が
ずいぶんありますよね。

あああ。そうですね。
『スジナシ』をやってるとね、
オチを決めるのはボクの役目なんですよ。
即興でいろいろやりながら、
この人とどこに行ってあげようかと考えて‥‥。

「サゲ」を見つける役ね。

そうなんです。
だから、まあ、ボクがやってきた
すべてのもののなかに
落語に行く原因はあるんですけどね。
五十過ぎて
落語やらなあかんようになったのも、
決まってたんじゃないかと思うし。
『らくごのご』
(与えられたお題で即興の落語をする番組)
をやったのが四十で。

『らくごのご』は、
建前としては落語の番組でしたけど、
ぜんぜん落語のつもりはないんでしょう?

ぜんぜんないです。
『スジナシ』と似てるところもあるんですが、
もう、できなかったら番組にならないという
がけっぷちのものでしたからね。
まあ、そういうのをやりたいというか、
やる時期だったんでしょうね。

鶴瓶さんの(自分の)鍛え方ってさ、
亀田三兄弟の親父が息子を鍛えてるのと
近いところがあるね。
なんか、急に物陰から棒かなんかで突いて、
咄嗟によけた息子が
「あ、オレって、こうよけるのか!」って。


あっはっはっは。
自分の反射行為を方法論にしていくっていう。
たとえば、見たことのないおばさんに会うと、
「あ、オレはこのおばさんを
 こういうふうに受けるのか」って。

あーー、そうそうそう。

なんかいつも、
自分を知ろうとして、たのしそうに
自分を追い込んでるじゃないですか。

だから延々自分を知ることを
続けてるんですね。

「海に落ちたらどうなるんだろう?」

そうそう。そうやね。
「海に落ちたらどうなるんやろう?」で、
「いっぺん落ちてみよ」ってなるんです。

そうそうそう。
「ちんこ出したらどうなるんだろう?」って。

「出してみよう」って?
‥‥それはないよ。絶対。
酔うてただけや。

あははははははははは!

でも、やっぱ、ほんまそうやね。

落語になってはじめて
「先の見えること」を
してるのかもしれないですよね。

(続きます!)
2006-02-16-THU