糸井 | 「千年間も壊さずに残しているもの」 が、京都にあるというのも なかなかすごいことで、途中には、 壊したくなる時期もあったと思うんですね。 時間を保存しているみたいな場所と、 作りなおせばあたらしくなる場所と、 両方、自分のいる場所を作ったとしたら、 人として、 健康にいられるんじゃないかなと思いまして。 それも、距離の話ですよね。 |
佐藤 | インターネットも 携帯電話も進化していくから、 やっぱり、 人の距離感も変わっていきますよね。 |
糸井 | コミュニケーションが 「つまらなく変わる」 ということも 予想できますよね。 ボタンを押せば なんでも手に入ることを よしとする人々の群れになったら、 つまらないですもん。 そんなふうには人間はできていないと思う。 人間が持っている潜在能力からすれば、 家の中で、 頭だけで考えることというのは、 一部分にしかすぎないんじゃないかなぁ。 だから、 頭の中だけでなにかを考えていると、 腹が立ってきちゃうというか、 「腹が立つ」という文字にも 見事に内臓が入っているように、 病気になるし、ダメになると思うんですね。 怒ったからといっても、 他人のやっている格闘技を見ることだけで 満足するかといえば、そんなことはないし。 |
佐藤 | はい。 |
糸井 | 自分が 生きものとしてどう生きるか。 それを満足させないかぎりは、 どんなに知識が増えても 不幸になると思うんです。 だから、 可士和くんのしている仕事の 「歩いていった場所にあるもの」 というイメージはいいですよね。 動きまわることで メッセージを伝えあうという おもしろさが 進化しているというか。 SMAPの仕事は、 「予算のない 仕事だったんでしょう?」 と言いたくなるような…… つまり、テレビのメディアを たくさん買うことは、 お金さえあればできますけど、 それは、しなかった、 ということですよね。 だけど、CDの業界は いくら売れても、 総売りあげのおおきさからすれば、 そんなにたくさんの 広告費が使えるはずがないんですよ。 |
佐藤 | SMAPは5年ぐらい前の仕事で TUG BOATの多田さんとやったんですけど、 打ち合わせの途中で、 テレビCMはどうしましょうという話の時に、 1年前からSMAPの仕事をしていた多田さんが 「テレビCM、 やっても、なかなか見かけないんだよね」 SMAPの予算は、いわゆる アーティストのキャンペーンとしては すごくおおきいんですけど、もちろん、 クルマやビールに比べたら10分の1程度です。 だから、 ふつうにやると、深夜に チョコッと流れておしまいになっちゃう。 「それなら、SMAPの3色のティッシュを 2億円ぶんぐらいまいたら すごい量になるんじゃない? 渋谷と青山がティッシュであふれるよ」 とか、そういうことを考えて、 「ぜんぶの広告をグラフィックでやれば、 それは、そうとう見かけるものになるよね」 という考えで、サッとCMをやめたことが あの広告につながったわけです。 |