「広告サミット2005 糸井重里×佐藤可士和」佐藤可士和くんから、
「ほぼ日」の「デザイン論」の対談が
おもしろかったから、そのつづきを話しませんか?
とさそわれて実現した企画を、
広告サミット運営委員会さんのご厚意により、
「ほぼ日」で、ほとんどまるごと、おとどけしますね。

第5回 町を作ることなら、できるぞ



佐藤 SMAPの広告は、
代理店を辞めて独立して
一発目の仕事だったんです。

代理店にいたころから、
考えてはいたことなんだけど。
糸井 代理店にいたときには、
やりづらい決断ですよね。
佐藤 なかなか、実行できにくいですから。
糸井 代理店というのは、構造的に、
「メディアを買って、媒体を
 売り買いすることで商売している」
という会社だから、
テレビをやりませんというのは、
イヤなことになりますもんね。
佐藤 そうですね。
代理店としては、
テレビCMの
売買メディアの扱いなしでは
ぜんぜんもうからなくなるし、
ティッシュを作っても
「トク」とは言いがたいし、
あとは、大企業の営業の立場からすれば、
特殊な媒体で広告を打つというのは、
めんどくさいことですからね。
糸井 「手がかかる」ものだもんね。
ヘタしたら赤字になりますし。
佐藤 「前例のない方法」は、
通りにくいですものね。
糸井 SMAPの場合は、
全国各地にファンがいるから、
東京だけでやっていることでも、
「それを見るためだけに
 飛行機に乗ってくる人」
も、いるわけですよね。

東京の一角で、
「ほんとに人目に触れたのは
 50万人しかいませんでした」
というイベントだとしても、
それが、SMAPの場合には
コミュニケーションが
玉突き的に増殖するんですよね。
佐藤 そうですね。
SMAPだからできたキャンペーンです。
「ポスターからシールがはがせます」
とかいう特色があると、
ニュースもスポーツ新聞も
ワイドショーもぜんぶ取材してくれて
あれはもう、媒体に換算したら、
すっごい金額ですよ。何億もの……。
報道は全国に流れるから、
全国の人も知るだろうという仕組みは、
確信犯でやったんですけど。




糸井 昔の
「お伊勢参り」に近いですよね。
「お伊勢さん」に行ける人数は限られているけど、
「いきたいな」と思う人の母数はすごくおおきい。
無作為にばらまくんじゃなくて、
ちいさいひとつの噴水みたいなところに
集中して伝えるという方法は、
ある意味、先祖がえりだと思ったんです。

みんな、テレビの効率のよさを中心にして
「これで一気に撒けます」
シャワーみたいに広告をしていたんだけど、
そうじゃないことをやったんだな、という。
佐藤 昔に比べたら、
自分自身もテレビCMを見なくなりましたし。

代理店に入ったばかりのころは、
まだ、CMを作りたいと思っていたんです。
「ホンダ ステップワゴン」
とかをやった時は効いた感じもあったけど、
それも、どんどん、
急速に効かなくなってくる……。
そういうことを考えていたときのものでした。

たとえば、ポスターを一所懸命に作っても、
自分の思うとおりには
貼られていなかったりする。
そこをなんとか
コントロールしたかったんだけど、
町というか
「渋谷区」というふうに考えた場合は、
町全体を作ることなら、
できるなと思いまして。
糸井 うん。目の届く距離感ですよね。ああ。
佐藤 だから、
「どこでもいいから
 ビルボードをお願いします」
ではなく、
「あそこのボードをおねがいします」と、
値段も媒体も計算して考えていたんです。
糸井 つまり、もう、
「なんか、当たるのやってよ」
という広告では通じないんですよね。
(明日に、つづきます)

2006-01-30-MON