糸井 | 「どうしたらもうかりますか」 ということの答えは、 みんなが出せるんです。 「化学調味料の穴をおおきくしたら 倍振りかけるようになりましたね」 というようなことは 昔からよく語られていますけど……。 そういう工夫とか、 安くしたら売れたとか、 材料をよくしただとか、 そういうことはすぐに答えが出ますけど、 ほんとに商品に望まれていることは、 「そういうこと」ではありませんよね? |
佐藤 | はい。 |
糸井 | 「ほんとにおいしいものは、なんだ?」 そういう問いに 答えを出すのはむずかしいから。 脳で答えが出るものは、 クラクラくる気持ちよさがあると思うんだけど、 ボディにはこないですよね。 ぼくは、ボディにこないものは興味がないんです。 人間型をしていないロボットって、 人気がないじゃないですか。 手術を手伝ってくれるとか、 工場の中で製品を組みあげるとか、 大判焼きをひっくりかえすとか、 そういうかたちでは、 ロボットと言われていて活躍していますが、 人間型をしていないから、ほれないんですよ。 |
佐藤 | たしかに、人間型じゃないと、 ロボットだと言ってもらえませんもんね。 |
糸井 | インターネットも、 そういうものですよね。 「この道具を使えば、こんなことができる」 ということのほうが、おもしろいわけで。 ローマのコロッセアムは、 コロッセアム自体が大好きじゃないでしょ? 集まる場所ができて、そのまんなかで、 牛と人間を戦わせることを思いついたり、 牛をやっつけたいと思うバカが出てきたり、 刀を研ぐ道具のプロが出てきたりするのが、 魅力なんですからね。 ものを知っているかどうかなんかよりも、 仕組みを作るかどうかなんかよりも、 「人間のボディとして、何をするのか」 が、いちばんおもしろいですよね。 |
佐藤 | インターネットを考えた人は、 なかなかすごいですよね。 |
糸井 | 大型コンピュータどうしではなくて、 パーソナルコンピュータどうしが つながるっていうのは、 誰も想像しなかったことですもんね。 |
佐藤 | 電話線とかも、結局、 海の中を通ってんですよね。 それも、すごくないですか? 誰がひいたんだろうという……。 |
糸井 | 山から山に 電線がつながってるだけで、 すごいと思いますよ。 衛星回線とかいうのも、 どう作ったのかを考えると すごいおもしろい。 アポロの時代のロケットも、 まだ飛んでるじゃないですか。 買い替えがないものって あんまり変わってないみたいね。 「文明」って、 微細な神経系以外は あんまり発達しないものなんだな、 という気がするんです。 人間で言う「筋肉」にあたる製品は、 あんまり、大進化をとげていないじゃないですか。 自動車にしても、根本は変わっていない。 いまだに、ワイパーが ガッチャンガッチャンいうやつだよ? |
佐藤 | (笑)雨がまったくつかないとかね、 そういうの、できそうなものなのに。 |
糸井 | 筋肉系のものって、 進化しないままで、 人間のボディが 納得してるってところが、 なんかすてきだと思うんです。 |
佐藤 | 進化しているところと 進化してないところの ギャップがおもしろいですよね。 |