「広告サミット2005 糸井重里×佐藤可士和」佐藤可士和くんから、
「ほぼ日」の「デザイン論」の対談が
おもしろかったから、そのつづきを話しませんか?
とさそわれて実現した企画を、
広告サミット運営委員会さんのご厚意により、
「ほぼ日」で、ほとんどまるごと、おとどけしますね。

第7回 ほんとにおいしいものは、なんだ?



糸井 「どうしたらもうかりますか」
ということの答えは、
みんなが出せるんです。

「化学調味料の穴をおおきくしたら
 倍振りかけるようになりましたね」

というようなことは
昔からよく語られていますけど……。

そういう工夫とか、
安くしたら売れたとか、
材料をよくしただとか、
そういうことはすぐに答えが出ますけど、
ほんとに商品に望まれていることは、
「そういうこと」ではありませんよね?
佐藤 はい。
糸井 「ほんとにおいしいものは、なんだ?」
そういう問いに
答えを出すのはむずかしいから。

脳で答えが出るものは、
クラクラくる気持ちよさがあると思うんだけど、
ボディにはこないですよね。
ぼくは、ボディにこないものは興味がないんです。

人間型をしていないロボットって、
人気がないじゃないですか。
手術を手伝ってくれるとか、
工場の中で製品を組みあげるとか、
大判焼きをひっくりかえすとか、
そういうかたちでは、
ロボットと言われていて活躍していますが、
人間型をしていないから、ほれないんですよ。
佐藤 たしかに、人間型じゃないと、
ロボットだと言ってもらえませんもんね。
糸井 インターネットも、
そういうものですよね。
「この道具を使えば、こんなことができる」
ということのほうが、おもしろいわけで。
ローマのコロッセアムは、
コロッセアム自体が大好きじゃないでしょ?
集まる場所ができて、そのまんなかで、
牛と人間を戦わせることを思いついたり、
牛をやっつけたいと思うバカが出てきたり、
刀を研ぐ道具のプロが出てきたりするのが、
魅力なんですからね。
ものを知っているかどうかなんかよりも、
仕組みを作るかどうかなんかよりも、
「人間のボディとして、何をするのか」
が、いちばんおもしろいですよね。



佐藤 インターネットを考えた人は、
なかなかすごいですよね。
糸井 大型コンピュータどうしではなくて、
パーソナルコンピュータどうしが
つながるっていうのは、
誰も想像しなかったことですもんね。
佐藤 電話線とかも、結局、
海の中を通ってんですよね。
それも、すごくないですか?
誰がひいたんだろうという……。
糸井 山から山に
電線がつながってるだけで、
すごいと思いますよ。
衛星回線とかいうのも、
どう作ったのかを考えると
すごいおもしろい。

アポロの時代のロケットも、
まだ飛んでるじゃないですか。
買い替えがないものって
あんまり変わってないみたいね。

「文明」って、
微細な神経系以外は
あんまり発達しないものなんだな、
という気がするんです。
人間で言う「筋肉」にあたる製品は、
あんまり、大進化をとげていないじゃないですか。
自動車にしても、根本は変わっていない。
いまだに、ワイパーが
ガッチャンガッチャンいうやつだよ?
佐藤 (笑)雨がまったくつかないとかね、
そういうの、できそうなものなのに。
糸井 筋肉系のものって、
進化しないままで、
人間のボディが
納得してるってところが、
なんかすてきだと思うんです。
佐藤 進化しているところと
進化してないところの
ギャップがおもしろいですよね。
(明日に、つづきます)

2006-02-01-WED