「広告サミット2005 糸井重里×佐藤可士和」佐藤可士和くんから、
「ほぼ日」の「デザイン論」の対談が
おもしろかったから、そのつづきを話しませんか?
とさそわれて実現した企画を、
広告サミット運営委員会さんのご厚意により、
「ほぼ日」で、ほとんどまるごと、おとどけしますね。

第11回 環境を考えないことには……



糸井 ものまねや、手品って、
「あれ、やってよ!」って言われても、
際限なくやってくれるというところに、
性格のよさがあるじゃないですか。

あれって、
本人はおもしろくないんですよ?
タネ、ぜんぶ、わかっているんだから。
佐藤 (笑)
糸井 手品のおもしろさって、
自己犠牲の美しさなんです。

「やってやって!」
とだけ言うやつらのために、
ガマンしてぜんぶ仕込みをして……
朝、仕込んで、出かけるわけだよ?

だから、手品をやっている人は
「みんなのために自分がいる」
というか、性格がいいし、
姿勢が美しいなと思います。



佐藤 「一緒に旅にいけるかどうか」か……。
それも、ある一定の距離の中に
入っても、許せるかどうかですよね。
糸井 自分のチームの全員が、
「すごく近くても大丈夫」
ということになったら、
こわいものはないよね。
佐藤 環境のない状態は
ありえないじゃないですか。

価値観のあう人と一緒にいたいとか、
価値観のあうものを買いたいというのは、
周辺環境をよくしたいというか……

なんらかの空間の中に存在しているから、
環境を考えないことには、
「みんなが欲しいと感じるもの」なんて
考えられないよなと思っているんです。
糸井 そういうときに、
ビジネスを
考えられないといけないんですよね。

ぼくは、ある時期に、
『お金をちゃんと考えることから
 逃げまわっていたぼくらへ』
というタイトルの本を
出したことがあったんです。

クリエイティブの仕事をしたい人は、
「お金のことは、わかんないから」
って、自慢そうに言いがちですよね。

それを言ってるかぎりは、
たとえば幼稚園を作る仕事なら、
廊下の素材がダメになっちゃう。

その一方で、
お金のことを考えることだけが
得意な人というのは、
廊下の素材が安ければ安いほど
「そのほうがトクじゃないですか」
みたいなことを言うわけですよね。

両方わかる人っていうのが、
どこにいるんだろうということは
ずーっと考えているんです。

サルバドール・ダリみたいな、
山師だかアーティストだか
わかんない人もいますし、
最近だと、パッと思いつくのは、
ずっと自前で
アートをやってる、クリストですよ。

クリストは、こないだ、
ニューヨークのセントラルパークで
「ザ・ゲート」
という出しものをやりましたけど、
あれが、28億円、
かかっているんですよね。

ニューヨーク市の
許可がおりないかぎりは
できないような企画で、
企画を行政に通して、モトもとりながら、
アートをやるわけですよね。

ああいう力があれば、
できることは
たくさんあるなと思うんです。

28億円を
29億円にしたおかげで
次のプロジェクトができるみたいな
転がしかたまでも含めて、
アートなんじゃないかと思うんですよね。
(明日に、つづきます)

2006-02-07-TUE