テレビファン ぼくら、テレビが大好きだから。   鈴木おさむ─────糸井重里
第2回 最初の男で運命が決まる。
糸井 鈴木さんのやってることを見てると
何て言うんだろうなぁ、
おもしろいんですよ。
なんだか、あまりにも
全部に通用してるから。
鈴木 そんなことないですよ。
糸井 裏にいることも表に出ることも、
番組の大小も、
関係なくやってる感じがします。
鈴木 うーん‥‥、
ぼくは放送作家なので、
自分のやっていることが
最終的には全部
テレビに返っていけばいいなぁと
思ってるんですよ。
糸井 うん。
鈴木 大島との本もそうですが、
ぼくは、いろんなことをやらせてもらってます。
それが最終的に、放送作家の仕事として
テレビに返っていけばいいと思っています。

放送作家って、やっぱり、
「放送」がつきますからね。
AV女優じゃないですけど、
あたまに何がついてるのかは、
大きいと思います。
 
糸井 そうだね。
「作家」の上に
「放送」がついてるから。
鈴木 「放送」がつくと、
形がなくなります。
糸井 うん。
鈴木 形がない部分で、
バカにされることもあります。
だけど、そのおかげで
できることがたくさんあります。
ですから、放送作家をやるのは
やっぱりたのしいんです。
糸井 「鈴木おさむ」という人の
やってることを見ていると、
どこかで道の分かれた
「宮藤官九郎」じゃないかな、と
思うことがあるんですよ。
鈴木 ああ、宮藤さんは、ぼくより
年がふたつ上なだけです。
糸井 つまり、同世代。
鈴木 はい。宮藤さんとは、
いっしょに仕事する機会もあるし、
仕事が交差することもあります。
でも、そのたびにぼくは
「宮藤さんとは
 すごく近いようで、
 けっこう明確に離れてるなぁ」
と思っています。
糸井 業種がちがう感じ?
鈴木 そんな感じでしょうか。
糸井 でも、おんなじものを見て育った、
という雰囲気は持ってますよ。
鈴木 そうですね、
同世代と言えば同世代です。
宮藤さんの作るものを見て
嫉妬もするし、
すごくおもしろいなぁと思います。
近い世代のクリエイターと言われれば、
宮藤さんがいちばんに挙がります。
‥‥と思うんですけど、
何かが違うんだよなぁ。何だろう?
糸井 きっと、最初に入った場所が
劇団だったら「宮藤官九郎」になるし、
テレビやラジオの仕事だったら
「鈴木おさむ」になるってことかな?
そういう道の分かれ方をしてるのかもしれない。
鈴木 そうかもしれないですね。
糸井 そうすると、最初の‥‥
最初の男じゃないけど(笑)、
それはものすごく。
鈴木 そうですね。
最初の入口って、けっこう大事。
糸井 もし、鈴木さんが
「放送」がつかない仕事を
最初にひとつ、やってたら‥‥?
 
鈴木 ああ、もしそうだったら。
糸井 もし最初に、小説書いてたら?
そうしたらもっと激しく
アングラっ気のようなものが、
出てたかもしれないし。
鈴木 うーん‥‥たしかに、
宮藤さんの作ったもののなかに、
劇団から入ったんだなぁ、と感じる要素は
あるかもしれないですね。
糸井 例えば、下ネタの扱いなんかでも、
宮藤官九郎だと、
「飽きるまで下ネタ言うと
 下ネタじゃなくなる」
そういうような描き方をしますよね。
鈴木 はい(笑)。
糸井 そういうのって、まさしく、
舞台で、閉じられた場にいる観客向けに
やることです。
鈴木さんが下ネタをやる場合には、きっと
「電波の中でどのへんまでいくと
 足踏み外すのかな?」
ということをすると思う。
踏み外したふりをして
転んで見せるけど、
「まだ平気でした」というようなことを。
鈴木 はい、そのとおりですね。
糸井 だけど、ぼくから見ると、
おんなじじゃねぇか(笑)、って感じがあって。
鈴木 うん。
糸井 そのあたりの人たちは、やっぱりみんな
境界線を触ろうとするし、
踏み外さなくても、踏んでる。
その意味ではおんなじです。
鈴木さんと宮藤さん、
おんなじ番組やってましたよね。
鈴木 はい。宮藤さんとは
深夜の木村拓哉くんの
「TV's HIGH」(ティーヴィーズ・ハイ)
という番組でご一緒してました。
糸井 ああそうだ。
おもしろいの、やってましたよねぇ。
鈴木 あれ、すごくおもしろかったです。
あの番組の放送作家は、ぼくと
いまは映画監督をされている三木聡さん、
宮藤さんと木村祐一さんだったんですよ。
糸井 それはすごい。
鈴木 「ダウンタウンのごっつええ感じ」をやってた
小松さんがディレクターでした。
宮藤さんも舞台があるし、
その5人はそれぞれ忙しくて
どうしても時間が取れないから、
毎週土曜の深夜に集まることにしてました。
朝5時か6時まで会議するんですよ。
糸井 へぇえ。
鈴木 あのときにはじめて
宮藤さんと一緒にやらせていただいて、
しかも三木さんやみなさん、
それはもう、個性的な人たちで(笑)、
すごくたのしかったです。
 
  (続きます)
2010-07-28-WED