鈴木 |
ぼくは奥さんから
人間として欠落している部分があることを
教えてもらってると思います。 |
糸井 |
うん。
社会でなまじ役に立つ人間って、
実は、欠落してるわけです。
そこでけっこう金になっちゃうんですよ。 |
鈴木 |
はいはい、そうですね(笑)。 |
糸井 |
人に物をあげるときの
アイディアなんていうのは、
使えちゃうんですよね。
そんなことはやっぱり下品なことだと
奥さんは教えてくれる。
あの奥さん、画面からもわかるけど、
すごく品がいいんですよ。 |
鈴木 |
あ、はははは。
おしり、出してるけど。 |
糸井 |
おしりは出してるけど、
すごく品がいいんです。
出す人ほど品がよかったりするんだけど、
奥さんは、その典型的な人です。
その、プレゼントのあたりにある話は
だいたいが、女の人のほうが師匠です。
男はどこまでも間違いますよね(笑)。 |
鈴木 |
そうですねぇ。 |
糸井 |
それは、男の子の育ち方の
しょうもない悪さです。
そのあたり、特にあの人はすごく
見抜く力があると思う。 |
鈴木 |
いま、自分はもう
親といっしょには暮らしてないし、
怒ってくれる人はどんどん減っていきます。
そんななか、そういうことを
いちばん近くにいる人が
言ってくれるのはありがたいと思います。 |
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糸井 |
まずは、「鈴木おさむ」が
どんなに売れっ子だろうが稼ごうが、
それに感謝してないというのが、
ポイントですよ。
いちばん重要なのはそこです。 |
鈴木 |
はははは、そうですね。 |
糸井 |
尊敬しても、感謝せず。
オレは、そこのところが
妻の仕事じゃないかな、という
気がするなぁ。 |
鈴木 |
そうですねぇ(笑)。 |
糸井 |
「ありがとう」って言葉、
すごい万能なんだけど、
ほんとうはそんなことじゃないところで、
妻たちは「ありがとう」なんだよね?
売れっ子になっていくと、男は
「売れっ子だから、おまえは好きなんだろ?」
みたいになっちゃうんだけど、
そんなことじゃない。 |
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鈴木 |
はい(笑)。 |
糸井 |
「オレ、いま首位打者だよ?」
なんつったって、
女の人は、
首位打者は関係ないよねぇ(笑)。
なぜなら、女性って、
生まれてからずっと
そこじゃないところで
採点されてきているからです。
特に「美しいです」というコンテストには
「参加しません」というところも含めて
出発してるから
さらに鍛えられてますよ。 |
鈴木 |
ぼく、大島から
「小学校や中学校のときに、
ブス、って言ったやつのこと、
ブスなやつは全員憶えてるからね!」
と言われて
心底ドキッとしました。 |
糸井 |
うーん、なるほどねぇ。 |
鈴木 |
「あんたも言っただろ!」
たしかに言ったことあるんです。
ブスとか、菌がつくぞ、なんてやってた。
あいつは
「わたしはいまでも全員の名前が言える!」
って言うんですよ。
ブスっていうのは、そういうもんだって。
だからぼくは
昔そう言ってしまった子たちに、
ひとりずつ謝って回りたいなと思いました。 |
糸井 |
いい人に30歳で出会いましたね。 |
鈴木 |
はい(笑)。
そういう30代を経て、
ぼくはこれから40代になっていくんですが、
糸井さんからごらんになって、
40代はどんな時期ですか? |
糸井 |
40代はねぇ、
「こんなにやれることが増えたのに、
届かない世界のほうが広かった」
ということがわかる季節ですよ。 |
鈴木 |
へぇえ。 |
糸井 |
横山やすしさんが
久米宏さんといっしょに
ニュースの司会なさってたときって、
憶えてます? |
鈴木 |
憶えてます。 |
糸井 |
ブルーの背広着て、痩せてて、
めがね、めがねってやりながら、
世界中に向けて、
「どあほう!」って言ってたとき。
スキャンダルがあっても何しても
「無敵だなぁ」
みたいになさってたときが、
38歳だったんですよ。 |
鈴木 |
へぇー! |
糸井 |
38って、あそこまで行くんだ、
と思います。
世界中を敵にまわしても
オレは負けない、なんて思えます。
いまの38歳で
そんな人がいるかどうかはわかんないけど、
おおよそはまぁ、そのミニチュア版で、
そう思ってるかもしれない。
テレビ局であろうが、映画界であろうが、
鈴木おさむという人が来たら、
「いやいやいや、お待ちしておりました」
って言われる。
行き詰まったときやなんか、
「鈴木おさむ、何言うかなぁ?」
なんて思いながら待っててくれて、
「オレも考えてないんだよ」
なんて、ぽろっと言うと
案外よかったりして(笑)。 |
鈴木 |
うん(笑)。 |
糸井 |
そうやってあらゆるものが
案外うまく進んだり、
追い込まれても、土壇場で
見せ場作って勝ってみせる
ぐらいのことは言えるし、できる。
5戦したら5勝はいけるかな?
みたいなところまで、
たぶん、30代で行けます。
負ける試合しなきゃいいんだから。 |
鈴木 |
バーっとした勢いで30代になると、
テクニックが身についちゃって、
負けない試合が、
なんとなくできるようになってしまいます。 |
糸井 |
無謀に引き受けて、
功やら名を求めたりすると
痛い目にあうのもわかってる。
あくまで一般論として言うと、
30代って、世界と勝負できるんですねぇ。 |
鈴木 |
はぁ、なるほど。 |
糸井 |
だけど、40代になったときに、
不慮の事故みたいに
そうじゃない世界に出会うんです。
そうじゃないの世界の入口、
たくさん開いてるんですよ。
アバターじゃないですけど、
そっちの世界に、
ものすごくたくさんの人が住んでて、
「ええ?!?! そっちのほう広いわけ?」
なんて、びっくりする。
あるいは‥‥例えばですけど、
鈴木おさむという人が、地元で
政治家みたいな人に会ったとする。
「いやー、あなたのことは前々から」
といって握手するんだけど、
特に何にもあなたのこと知らないんですよ。 |
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鈴木 |
ははは。 |
糸井 |
そういう人に出会うようになるんですよ。 |
鈴木 |
ははははは。
なるほど、なるほど。 |
糸井 |
そっちにちゃんと通じてる人も
こっちの世界にいることはいるんだけど、
ま、ぼくらはそうじゃないです。
だから、びっくりするんですよ、
有名な政治家が、自分のことを
歯牙にもかけないというようなことに。
「あれ? オレは
世界と勝負したつもりなのに、
世界ってこういう人だらけなんだ」
というのが、40代(笑)。 |
鈴木 |
よくわかります。なるほど。 |
|
(続きます) |