テレビファン ぼくら、テレビが大好きだから。   鈴木おさむ─────糸井重里
第12回 テレビが大好き。
糸井 最近、何十代のときどうでしたか、と
訊かれることばっかりだなぁ。
いやぁ、年齢を感じます。
鈴木 でも、それを訊きたい人であるってことが
すごいことですよ。
糸井 今日は鈴木さんと
いったい何の話をしに集まったんだか
わかんないけど(笑)、
お互いテレビが好きで、
テレビに出てる人の話が
充分できて、うれしかったです。
鈴木 はい。
糸井 鈴木さんはこの先も
たぶん何年かは
放送作家をやっていくんですよね。
鈴木 やっていきます。
糸井 うん。
テレビを助けてあげてください。
鈴木 はい。
‥‥と、ぼくは思っているんですけどね。
糸井 ぼく、大好きですから、テレビ。
鈴木 テレビに対して批判的な人も多いけど、
それは単純に、
批判を言うツールが
増えてしまったからだと思います。
文句はみんな、
昔っから言ってたと思うんですよ。
 
糸井 ああ、なるほど。
鈴木 ツールが異常に発達したから、
そういう行為も多いのかなと思うんです。
欽ちゃん(萩本欽一さん)が
「欽どこ」(「欽ちゃんのどこまでやるの!?」)
をはじめるとき、
夜9時の時間帯に
バラエティ番組がなかったそうです。
そう考えると、
いま、純粋にバラエティーの数が多いんだろう、
ということがわかります。
多すぎると、文句を言われる対象になりますから。
糸井 しかも、バラエティがどんどん
ドキュメンタリーになってるでしょう。
鈴木さんの『ブスの瞳に恋してる』
自分のドキュメンタリー化だし、
芸人さんたちが
普段の生活で何をしてるか、という
ドキュメンタリーを語ることが
バラエティーになっています。
鈴木 そうですね、多いですね。
糸井 だから、言いようによっては
出演者たちが、生活と命、全部かけて
番組を成立させてるとも言えます。
フィクションもいいけど
一緒に知らないものを見ていくという番組を
やっぱり作りたくなっていくんでしょう。
それは寿命も短くなるよ、ということは
よーくわかります。
その振り幅をどうしていくかが
これからの道かもしれません。
 
鈴木 うーん、そうですね。
糸井 鈴木さん自身が
『キミハ・ブレイク』
スタジオに、放送作家として座られました。
あれは、ひとつの過渡期だと思います。
これからはおそらくプロデューサーが
あの場所に座るようになると思うんですよ。
どういう意図で番組をやってるのか、
いちばん知ってるのはプロデューサーだからです。
鈴木 実は、あの番組のプロデューサーに
最初に言われたことが、まさに、
「ぼくの代わりに座ってください」
ということでした。
糸井 ああ、そうなんですか。
鈴木 「ほんとだったら、ぼくが座りたいんですよ。
 ぼくの代わりに座ってください。
 そういう理由で、タレントさんじゃ
 ダメなんです」
と言われました。
糸井 そのとおりだと思います。
ハリウッド映画でも
Jブラッケンハイマーみたいなプロデューサーが
いまは人を集められますよね。
テレビはもっとそうなると思います。
ディレクター感覚で言う
「ものづくり」ではなく、
システムまで構築することが
「ものづくり」になりますから。
鈴木 いま、農作物も
誰が作ってるのか見える
時代になってますよね。
糸井 そうですね。
鈴木 テレビって、ぼくらが思ってる以上に
「作り手」で見る時期が、
いよいよ来てるんだと思います。
 
糸井 そうなりますよ。
鈴木 映画は、もちろんもともとそうですし、
日本の映画もどんどんそうなっていますが、
そういう意味では、ぼくは、
三谷幸喜さんがすごいなと思っています。
「作り手でテレビを見る」という空気を
作った人だなと思います。
宮藤さんもそうです。

銘柄で見るということは、
テレビは、実はいちばん
遠かったと思うんですが、
そういう時代になってくるのかなぁ。
糸井 うん。
こうしてぼくと鈴木さんが話してることは、
結局ネットで出すしかありません。
人数限られてるけど、ネット上に、
おもしろいと思ってくれる人がいる。
ほんとうはもう、テレビもそのくらいまで、
やっちゃっていいと思うんですよね。

テレビって、時間の不動産価値が高すぎるから、
いまはやっかいなんだけど、
いろんなやり方があると思う。
昼も夜も関係ない、
アンダーグラウンドなものでもない。
「ああ、この時間に
 こういうことやってるんだぁ」
ということだって、何だってある。

これまで稼ぎすぎたんだ、
ということだって言えるよね。
鈴木 いままで稼ぎすぎた、
たぶんそうなんでしょうね。
放送開始から60年くらいで。
糸井 いちど定年ですね。
鈴木 おそらく一回、仕切り直しでしょう。
テレビの稼ぎ方がCMであることもそうだし、
そのCM価値も見直していく、
そういう時期に来ている。
糸井 やりながら探すしかないよね。
鈴木 そうするしかないです。
なんだか‥‥、今日は自分の中で
いろんなこと整理されていきました。
たのしかったです。
糸井 人の整理してるときに、
自分の整理もできます。
それはお互いにそうですね。
鈴木 人から受けた相談とかも、
けっこうそういうふうになってる気がします。
 
糸井 そういう意味でも、奥さんの存在、
ほんとにでかいね。
どうぞ、よろしく伝えてください。
鈴木 ありがとうございました。
糸井 ありがとうございました。
  (おしまい)
2010-08-11-WED