ほぼ日 | お願いした作家の皆さん、 おっしゃるのは、 「ごはん茶わんって難しいんだよ」って。 細川護光さんは 「僕は2年ぐらいかかるかもしれません」と、 ごはん茶わんについて、 ほんとにこう、 ずーっと考えてらっしゃった。 |
糸井 | いいねえ! |
ほぼ日 | ほんとうに皆さん、おっしゃるんですよ。 作り手の道歩さん、円さんに お聞きしたいんですけど、 あれはどういう気持ちなんでしょう? |
道歩さん | だって主食じゃないですか。日本人の。 で、何ていうんかな、 自分が食べたい器を作るのもありだと思うんですけど、 いろんな人がどう思ってご飯を食べるのかな、 っていうのを考えたときに、 もう、ごはん茶わんて 出尽くしてるくらいいっぱいある。 その中で自分の個性みたいなものって どうやって出そうかなっていうのはありますよね、 どうしたら自分のごはん茶わんというものが できるかなあみたいな。 |
糸井 | 円さん、経験多いんですよね、 ごはん茶わん、ね? ぼくは飯島奈美さんのところで いいなあと思ったごはん茶わんが 円さんのものだったんですよ。 |
円さん | ありがとうございます。 いろいろ作ってきましたが、 たとえば、毎日、 夜ご飯にご飯とお味噌汁がある人がいる、 ない人もいる、 私らみたいにお酒を飲むから ご飯は食べませんという人もいる。 父もそうなんですよ。 父がごはん茶わんを作るときに言うてた言葉が、 「お茶漬けを食べるんや」なんです。 お酒のあとのお茶漬けっていうことを想定していて、 それしか思ってないぐらい。 「お茶漬けは熱いから こうやって持って食べる。 そのために高台を高く、 啜りこむために口あたりはこう」 ということを決めている。 |
糸井 | なるほど、それで高台が高いんですね(笑)。 |
円さん | 高くないと熱いんや、 お茶漬けっちゅうのは熱いんや、 ずーっとそう言って作ってました。 |
道歩さん | (笑)。 |
円さん | わたしもそうなんです、 ご飯は食べない。基本、食べないけど、 お茶漬けとか丼とかするときに ちょっとだけ食べる。 そういうのを考えて、基本、 自分の基本に合わします。 そして私は今、磁器を始めたので、 磁器にしたときにはやっぱり 清潔感のあるものを作りたい。 それで白いお米が合うものを作りたいとか、 自分の中でイメージが固まるまでずーっと考えて、 それで最後、どういう口にするかとかいうことまで 決まったときにやっとろくろに向かう、 というような感じです。 |
糸井 | それ、重要なんだよ。 気に入る人と会うための場所だから。 今言った円さんの考えは 違うなと思ってる人だっているわけじゃない。 まさかお茶漬けじゃないよ、これは、 って人もいるし。 |
円さん | うん、そうです。 磁器ではなく土(陶器)の方が やっぱりあったか味ある、 それがごはん茶わんやて いう人ももちろんいますし。 |
ほぼ日 | ちなみに磁器は、円さんともうひとり、 長野の山中恵介さんというかたが 参加くださっています。 雅武さんに私淑しているかたで、 福森家でもよく山中さんのうつわを 使われているんですよね。 |
道歩さん | けんかしないうつわなんです。 |
糸井 | 道歩さんのごはん茶わんは、 托鉢僧の持っているものみたいだね。 |
道歩さん | そうですか! そう思うたんかな、やっぱり。 わたし、お寺にいた時期があるから。 |
糸井 | この中にくださる分だけください、 って感じがするね。 |
道歩さん | そう、そうなんです(笑)。 |
糸井 | この人、そういう人かもよ。 |
道歩さん | そうかもしれないですね。 |
糸井 | うん。つまり、お米じゃないものが入っても いただけるものはいただきますっていうか、 玄米であろうが、お赤飯であろうが、 葉っぱであろうがさ。 |
道歩さん | そっかあ。何かね、 私だけちゃうなあと思ってましたけど(笑)。 |
糸井 | でも、それに、いいなあと思う人が、 絶対いるよ。 |
道歩さん | いるかなあ。来てくれー、思います。 |
糸井 | お見合いですから。 俺は結構好きですよ。 |
ほぼ日 | 今、強度テストのためもあって、 サンプルを使わせていただいてるんですけども、 卵かけご飯には道歩さんのこれ、 っていう感じになりました。 |
円さん | あー、なるほど。 |
道歩さん | そうなんです。 で、どんぶりも食べたいなみたいな。 ラーメンとかね、そういうのも大丈夫。 |
糸井 | 何入れてもいい。 仏様にお供えするのにさ、 ちょっとだけご飯を盛って、 置いてもいいよね。 |
ほぼ日 | 何か親しみがありますね、それは。 |
糸井 | 仏様、喜びそうだよ。 そして円さん、やっぱね、 社会に出てますよ。 その面白さがあるんですよ。 |
道歩さん | うん。 |
ほぼ日 | 糸井さん、ダイエットをはじめた頃で、 いっぱいに見えるんだけど ほんとは少ししか入ってない ごはん茶わんを探していたときに 円さんのお茶わんに出会って、 ぴったりだって。 |
円さん | あ、そうおっしゃってましたね。 |
糸井 | そしてこの、 石原さんの、彫刻のような面白さ。 |
円さん | なるほど、なるほど。 |
糸井 | 家に持って帰って、 他の食器と一緒にあったときには、 これ、違うなって 言いたくなる人もいるかもしれない。 「暮らし」じゃない部分に 腹を立てる人がいるかもしれない。 でもたとえば、 テーブルを木じゃなくガラスや、 金属で作りたい人だっているじゃない。 いろーんな人、いるじゃない。 「自分の家をこうしたい」と思っている人、 そういう人にとって石原さんは ほんとうに魅力的ですよね。 |
道歩さん 円さん |
うん、うん。 |
糸井 | で、どれがいいって選ぶときには、 この人のはやっぱりチャーミング。 |
道歩さん | そうなんですね。 私も石原さんだけは説明ができないんです。 作り方も。 もっかい塗ってまた焼くっていうのを 3回ぐらいしいはんのや。 |
糸井 | したいんですよ。そういうことを。 単独でそこにあったときの味がいちばんある器ですよ。 ある意味では孤高なんですよね。 |
道歩さん | そうなんですよ。 |
糸井 | それがいいっていう気持ちって絶対あるわけで。 で、お父さん(福森雅武さん)ですよね、 このあたりのものは? |
道歩さん | そうです、そうです。 |
糸井 | あやしいよね。 |
ほぼ日 | あやしいですー。これもそうです、これも。 |
道歩さん | 身内ですけれど、 やっぱり上手、ですよね。 |
糸井 | お父さん、まだ、こう、 何かモテたいっていうのが、 むんむんしてますね。 |
道歩さん | そうなんですか??? それは、わからへんですわ。 そういう空気ありますか? |
糸井 | うん、ありますねえ。 |
道歩さん | へえー。 面白いです! |
(つづきます) |
2011-02-10-THU |