ほぼ日 お酒を飲む人の酒器はすごく使いやすくて、
飲まない人の酒器って
何かオブジェみたいだったりしますね。
道歩さん そうなんですよね。うん。
ほぼ日 いっぱい見るとだんだん分かってきます。
糸井 お茶やってる人が
掛け軸についても語れないと
だめだっていうのと同じで、
焼物やってる人たちっていうのは
文化の幅みたいなのを見せないと
やってけなかったんじゃないかな。
ほぼ日 お酒が好きじゃなくても
酒器はつくる、というような。
糸井 勉強家だよ、だからね。
けれどそういう人同士がやってるから
逆に行き詰まるのかもしれないね。
普通に、生活の中に
取り入れるっていうことについて、
話ができなくなってしまうんだよ。
お坊さんと会って
こんな話しましたんやとかって言うと、
その人の何かが上がってる気がするけど、
そこのところは町のおばさんには関係ないわけよ。
道歩さん ないない。そうですね。
糸井 そんなのは、そうかもしれないけど、
そんな話、どうでもええのんですって言って、
「これ、ええわーっ」て方にいくわけだから。
ほぼ日 そうですねえ。ほんとにそうです。
糸井 だからほんとにこのお店では
「勝負」になっちゃいますね。
おばさんたち、おじさんたちとの。若い人と。
道歩さん ほんとですね。
糸井 「これかな」っていう、それだけだからね。
このお店は、お客さんが、
立ち上がって「買いたいです」って
手を挙げてくるようなものだから。
値段もばらばらでしょ。
ほぼ日 ばらばらです。
糸井 「安いから」っていう人がいても
全然構わないわけだから、
それはそれで嬉しい話だよね。
道歩さん はい。
円さん うん、うん。
糸井 円さんはもうずーっと、
たくさん買ってくれる人用のもの、
作っているんですよね。
円さん はい。
糸井 その経験てどういうものですか。
ひとつずつ、つくるんだろうけれど、
変えた方がいいんじゃないかとか
思ったりすること、あるんですか?
円さん そうですねえ‥‥。
糸井 旅館なんかは、
まとめて幾つ仕入れるとか、
幾つぐらいの単位とかがある?
円さん あ、旅館というよりは
旅館のギャラリーさんで
扱ってくださっているんです。
糸井 ああ、なるほど。
円さん はい、できただけ。
糸井 できただけっていう感じですか。
円さん はい、ひと窯分全部買うからっていう、
俵屋さんがいてくれはったから、
私は、家を出れたんやと思います。
家を出るというのは、
半分は──、逃げました。
でも半分は、もうちょっと自分を
厳しいところへ置いてみたり、
家を離れてほんまにものを作ってみたい、
っていうのがあって、
それで磁器土に出会ったんです。
そのときに後押ししてくれたのが俵屋さんで、
全部買ったげるから何でも持ってらっしゃいと。
糸井 すごいですね、それ。
円さん そうなんです。
もうほんとに感謝してもしきれないぐらいです。
糸井 すごいですね‥‥。
円さん 私はそれで家を出れたんだと思ってます。
糸井 「半分は逃げました」っていうのを
すっと言えるのもすごいね。
円さん (笑)。
糸井 ねえ。言えないよね。
円さん 半分は逃げました。
だから、道歩には申し訳ないって、
今、手伝えることはと思ってるんですけど、
‥‥なかなか手伝えないけど(笑)。
糸井 そうですか(笑)。
円さん はい。
道歩さん (笑)。
糸井 逃げたのに戻ってきた人ですからね。
道歩さん そうですよね。結局、逃げられへんかった。
糸井 どっちも一度は逃げてますね。
道歩さん わたしも逃げました。
ほぼ日 そのお話、このあと、くわしく掲載します。
おふたり、それぞれにインタビューしたので。
糸井 そう。面白いね。
ほぼ日 はい、面白い、すごく面白かったです。
糸井 その逃がしたお父さんはどうなんです?
ほぼ日 逃がしたお父さんのインタビューは、
結局できなかったんですが‥‥。
道歩さん そうですね、確かに。
糸井 あの決して広くはない場所に
エネルギーが多すぎるんだと思う。
道歩さん そうかもしれないですね。
糸井 あれが敷地が6倍ぐらいあって、
道歩さん 1ヶ月1回ぐらいしか会わんかったらね。
円さん (笑)。
道歩さん よくも悪くも影響が大き過ぎて。
円さん ですね。
糸井 でも、イライラしてても喧嘩してても、
もうプロだからできちゃうんでしょ。
道歩さん 作ればできますね。
糸井 そこが、そこが切ないよね(笑)。
道歩さん うーん、そうですね。ほんとに。
糸井 そのときほどいいのができたりするものなんだろうな。
道歩さん 父は特にそうで、もうほんま、
ぶっつけ本番でやらはるんで、
そういう意味では、いつも真新しいんですね。
普通の人は定番みたいなの作るんですけど、
定番を作らない。
ほぼ日 自分の二番煎じはしない、
っておっしゃってましたね。
道歩さん 自分のマネはしないって言う人なんで。
だからもう、ほんとに父のものは
絶対に二度と作れない。
ない。
土も変わるし、釉薬も変わるし、全て変わる。
円さん もっといいものができるはずって。
今度作るときはもっとよくなるはず、
もっと、もっと。
いつもそれの繰り返しで
それは私らも教えてもろうて
守ってるつもりでやってます。
もっと、次はもっとええもん作りますって
いつも思いながら。
糸井 僕らもよく最近、
1個の終わりに必ず次の始まりが
含まれてないとだめだっていう言い方をするんだけど、
終わりって、「終わりだ!」って、
みんな、思っちゃうんですよね。
円さん はい。
糸井 終りは始まりなんですよね。
円さん 私、何百個も作るっていうのは
土楽のときからずーっと、
今も、やってる仕事です。
でも、今度作るときは
もっとこうしてやるって
終わったときに必ず思う。
そんで、必ず備忘録に書く。
糸井 なるほどね、
円さん で、読んで、そうだ、そう思ったっていうのを、
また今度作るときにたしかめる。
1年間のサイクルでだいたい、
何を作るって決まってきてるんで、
そういうことはしてます。
糸井 うん。
円さん もっといいものが、
もっといいものがって思います。
糸井 やっぱちょっと兄弟子っぽいね。
道歩さん ですよね、うん。
どうしよ。
糸井 考えた形跡を感じる。
昔は考えてなかったけど、
あるときから考えるようになったんですって
ことだらけじゃないですか。
円さん そうなんです。
道歩さん なあんも考えてなかった(笑)。
糸井 いや、しょうがなく考えるんです。
道歩さん ね。
糸井 あの、弱ったなと思うから考えるんだよ。
道歩さん うん。
(つづきます)
2011-02-14-MON
 

 
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