糸井 |
監督にとってすごく使いやすい田口選手は、
「4番目の外野手」として、本当に、
チームになくてはならない存在に
なっているとは思うんですけど、
たとえばこれがレギュラーをとっていたとすると、
つぎのチームでの年俸も
大きく違ってくるわけですよね。 |
田口 |
全然違ってきますね。
おそらく3倍、4倍、変わってきますね。
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糸井 |
はぁー、なるほどねぇ。
レギュラーっていうのはすごいんですね。 |
田口 |
すごいですね。 |
糸井 |
じゃあ、いまはやっぱり、
「どうしてレギュラーじゃないんだ」というのが
考えるテーマとしてあるわけですか。 |
田口 |
いえ。もう、それは。 |
糸井 |
思わない? |
田口 |
それは考えないですね。 |
糸井 |
それよりも、使いやすい選手でいるほうが。 |
田口 |
はい。使いやすくいるべきだろうと思ってます。
「4番目の外野手」としての立場を
アメリカで確立できたわけですから、
それを活かしていくべきだろうと思ってますね。 |
糸井 |
はぁーーー。そうですか。
ちょっといいですね、そういう見方も。
まぁ、たしかに、みんなが、
おんなじビジョンを持つのも変ですしね。 |
田口 |
もちろん、野球選手としては
「レギュラーをとるぞ」というのはあるんです。
それは、あるんですけど、
ぼくが4番目にいることによって
チームを活性化したいというがあるんです。
やっぱり、チームを勝たせたいというのがあるので。 |
糸井 |
ああ、なるほど。
チームが強くなるためには、
自分のいる場所がすごく重要だということを
実感しているわけですね。 |
田口 |
そう思ってます。
だから、下からいつでも
「おまえら、ちょっと手を抜いたら
レギュラーとるぞ」っていう
刺激を与える存在でいたいんですよね。
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糸井 |
いやぁ、そういう考え方ができる現役選手は
なかなかいないでしょう。 |
田口 |
あ、でも、これは、
いまの時期だからいえることですけど、
前にいたカージナルスというチームのレギュラーが
ぼくより上なのかといったら
「そりゃ、ぼくのほうが上やろ」
っていう自負があるので‥‥。 |
糸井 |
ああ、だから、言えるんだ。 |
田口 |
そうですね。 |
糸井 |
あの、田口さんが言う
「レギュラーとるぞ」っていう選手が
チームにとって重要だというのは、
昔、駅伝の監督をやってらっしゃった
大後さんという方がおっしゃってたことと
そっくりなんですよ。 |
田口 |
あ、そうなんですか。 |
糸井 |
ええ。まず、駅伝というのは、
トラック競技なんかとくらべると、
まだまだ理論が確立してなくて、
新しいチームでも、しっかり鍛えれば、
勝てるチャンスがある競技なんだそうなんです。 |
田口 |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
で、チームを強くするためには、
レギュラーになるかならないかの選手に
徹底的に目をかけてやるといいそうなんです。
つまり、その選手より上の選手はあわてるし、
下にいる選手は希望を持つことができる。
だから、補欠の1番目の選手が重要なんだと。 |
田口 |
同じですね。 |
糸井 |
同じですよね。
つまり、下が追いかけてきても
追いつかれっこないと思ってる人は
やっぱり手を抜きやすいですし、
「オレはレギュラーは無理だ」
ってみんなが思ってたら、
水が止まって淀むだけですからね。 |
田口 |
そうですね。 |
糸井 |
と、いうような話を、
ほかの選手もわかってるんですかね。 |
田口 |
どうなんでしょうね。
おそらく、監督はわかってますよね。
とくに強いチームの監督は
みんなわかってると思います。
セントルイス・カージナルスの
トニー・ラルーサという監督も、
選手の起用法を見てると明らかに
チームに刺激を与えるようにやってますから。 |
糸井 |
なるほど。 |
田口 |
彼は、選手全員の性格を把握してるんですね。
で、直接言うのがいいか、
間接的に伝えるのかいいか、
実際に試合でわからせたほうがいいか、
そういうことまで、いちいち考えているんです。
だから、ある選手は、監督室に呼びつけて怒るし、
ある選手は、わざとスタメンからはずす。
あるいは、メディアにわざと批評を書かせて、
それを読ませて伝えるということもやりますし。 |
糸井 |
はぁーー。
で、その監督の意図というのを
選手全員がわかってるわけではないですよね。
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田口 |
全員ではないでしょうね。 |
糸井 |
田口さんの場合は、
それがわかっているというだけじゃなくて、
監督と同じレベルで考えているというか、
いわば「考え方がタメ口」に
なってると思うんですよ。 |
田口 |
ああ、そうですね。 |
糸井 |
で、監督のほうも、
「おまえは、わかってるから」ということで
田口さんを扱ってますよね。 |
田口 |
はい(笑)。
ですから、怒られることもないですし、
たとえミスをしたとしても
「おまえはわかってるはずだからいいよ」
「つぎはミスするなよ」ということになるんです。 |
糸井 |
それはもう、ことばの壁なんかないですよね。
プレーとか態度でわかり合ってるというか、
わかり合ってるということを
わかり合ってるという。 |
田口 |
そうですね。
ま、英語を全部聞き取れているかというと
全部は無理なんですけど、
野球について話すかぎりは、全部わかってますね。 |
糸井 |
つまり、野球っていう言語を使うかぎりは
同じレベルにあるんですね。 |
田口 |
はい。
(続きます)
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