第1回 日米を超えて使いやすい男 2008-03-03
第2回 監督と同じレベルで考えている 2008-03-04
第3回 クラブハウスでラジコン 2008-03-05
第4回 仰木マジックはマジックじゃない
2008-03-06
第5回 仰木監督と大ゲンカ
2008-03-07
第6回 生涯でもっとも緊張したバント
2008-03-10
第7回 初球だけ狙わせてください 2008-03-11
第8回 ホームランという最高の誘惑
2008-03-12
第9回 ど真ん中は大嫌い
2008-03-13
第10回 守備は知識。打撃は我慢
2008-03-14
第11回 たとえばクレメンスと対戦するときは 2008-03-17
第12回 どんどん野球がおもしろくなる 2008-03-18






糸井 シーズン中は、いつもブログを拝見してました。
田口 ああ、ありがとうございます(笑)。

糸井 あのブログは本当におもしろいですね。
プロ野球選手がシーズン中に
ブログを書くっていうことが
まずありえないと思うのに、
あの頻度で、あのクオリティーですから。
田口 いえいえ、もう、毎晩格闘してます。
糸井 試合とは、関係のない部分を
しっかり読み物として読ませてくれるじゃないですか。
あのへんの距離感はすばらしいですよね。
田口 ああ、そうですか。
ありがとうございます。
糸井 もう、他人事みたいに書くこともありますよね。
よくもあんなに軽やかに
自分から離れられるなぁって思うんですけど、
ご自分では自覚なさってますか。
田口 どうでしょうね‥‥。
でも、いわれてみれば、ぼくは基本的に
物事を客観的に見るタイプなので。
糸井 ああ、やっぱりなぁ。
田口 つねに自分を違う位置から
見てるような部分があります。
糸井 そういうタイプの選手は、
メジャーリーグという、
競争社会の典型のような世界では
損をしたりしないですか。
田口 う〜ん、どうですかね。

糸井 もう「オレがオレが」っていう
選手ばっかりでしょう?
田口 そうですね。
糸井 たとえばピッチャーが打たれて、
監督から交代を告げられる。
素人から見ても「交代だろ」って思うけど、
マウンド上でピッチャーだけが
「冗談じゃない!」って怒ってたりしますよね。
あれは、客観的に見られていないわけでしょう?
田口 そうですね。
ただ、怒っていいときはあると思います。
ですから、ぼくも客観的でないときはあります。
糸井 あ、そうですか。
田口 うん。
怒っていいときっていうのは絶対ありますから。
ぼくもブチ切れるときはあるんで。
糸井 怒ったときはどうするんですか。
田口 そういうときは、監督室に行きますね。
糸井 あ、なるほど、なるほど。
田口 ただ、そこで大ゲンカするかというと
そういうことはないですね‥‥いわれてみれば。
糸井 監督室に行ってる時点で
客観的になってる気がしますね。
田口 そうかもしれません(笑)。
やっぱり、基本的には、
田口という選手がどういう選手であって
どういう使われ方をするのが正しいか
というのをゲームを通して客観的に見ていますから
だいたい、監督と意見は合っていくんですね。
糸井 ええ。ブログを拝見していると、
どうやら、そうみたいですね。
田口 それで‥‥いま言われて気づきましたけど‥‥
監督にとって、すごく、
「使いやすい選手」になってるんでしょうね。
ちょっと、なりすぎてるくらい。

糸井 あぁ、言っちゃった(笑)。
田口 いやいや(笑)、いま言われて、
あ、そうか、そうかと。
だから、まぁ、はっきり言ってしまうと、
なかなかレギュラーがとれなくて、
「4番目の外野手」ということで
落ち着いてしまうのもそういうことなのかなぁと。
糸井 いや、それはそれで、
ものすごいことだと思いますよ。
ワールドチャンピオンになったチームの
4番目の外野手なんですから。
田口 いや、でもね、思い当たることがあって、
オリックスにいたころ、
仰木監督もそういうことを言ってたんですよ。
あの、ぼく、仰木さんに、
打順をメチャクチャ変えられたんですよ。
糸井 たしか、守備位置も(笑)。
田口 守備位置も変えられたんです!
ぼく、レフトでゴールデングラブ賞、
2年連続でとったんですよ。
それなのに、つぎの年に仰木さんから
「セカンド守れ」言われたんですよ。
糸井 はははははは、おかしい(笑)。
田口 で、そのずっとあと、
もう選手と監督という関係じゃなくなってから、
仰木さんのところへ行って、問い詰めたんです。
「監督、正直に言ってください」と。
「なんであんなことばっかりぼくにしたんですか。
 ぼくは、つらかったですよ」と。
そしたら、監督は真面目におっしゃいました。
「ひとことで言うたら‥‥
 使いやすかったんや」と。

糸井 ははははははは。
田口 「そ、それだけですか?」
「うん。だっておまえ、
 なんにも言わんでやるし」って。
糸井 いや、でもね、
仰木監督の気持ちもわかる(笑)。
田口 いや、ぼくも、わからんことはないんです。
だからたぶん、カージナルスの
トニー・ラルーサ監督もいっしょなんですよね。
糸井 ああ、いっしょなんですね(笑)。
つまり、日米を超えて、
「使いやすい選手」なんですね。
田口 はい、日米を超えて(笑)。
糸井 また、ふたりの監督が、
似たタイプの監督だったのかもしれませんね。
田口 そうかもしれないです。
糸井 ふたりとも、田口さんのような選手を
うまく使いたがる監督だったという‥‥。
いや、しかし、そうだとすると、
プロに入ってからずっとそういうふうに
田口さんは使われてたということになりますね。
今年で日米合わせて何年目でしたっけ?
田口 16年になりますね。
糸井 うわぁ(笑)。



(続きます)


2008-03-03-MON


(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN