第12回 どんどん野球がおもしろくなる

糸井 いやぁ、ほんとに、うかがっていると
お話がおもしろくてしょうがないんですけど、
すべての野球選手が田口さんのように
自分がやっていることをきちんと
ことばにできてるわけじゃないですよね。
 
田口 いや、どうでしょう。
ぼくはぼくなりの理論というか
野球の考え方を持ってるんで、
それが、いま、いちおうまとまりつつあるんです。
ですから、しゃべれるというか、
まぁ、もう1回しゃべったら
ことばは変わるかもしれませんけど、
だいたい同じようなことが
言えるようになってきたんですね。
糸井 つまり、大学生のときの田口さんに訊いても、
こうはいかないわけですね。
田口 いかないでしょうね。
糸井 やっぱり、ずーっとやってきたことが
ひとつひとつ積み重なって、
ようやく1冊のアルバムのように
なっているというようなものですね。
田口 そうですね。
続けてやっているから、少しずつまとまって、
ちゃんと整理できてきていて。
そういうのはありますね。
糸井 いまは、まとまってきたことが
やっていることにも作用するから
おもしろい時期なんじゃないですか。
田口 はい。
もう、どんどんどんどん
野球がおもしろくなっていくんです。
 
糸井 はぁ‥‥たまりませんね。
田口 はい(笑)。
糸井 いや、変な言い方ですけど、
うらやましいってつくづく思います。
田口 ありがとうございます。
糸井 自分のやってきたこの意味が
少しずつわかってきて、
ときにはいろんな理屈を跳び越えるような
ホームランも打って。
田口 本当に、「ときには」ですけど(笑)。
糸井 いや、でも、ほんとうに、
「ホームランは飛び上がるほどうれしい」
っていう話もないとダメだと思うんですよ。
それなしに、全部を理解できてても、
おもしろくないと思うんです。
田口 ああ、そうですね。
糸井 だから、いまの田口さんが
しゃべる話っていうのは、
ほんとにおもしろいんですよねぇ。
田口さん、あと何年ぐらいやれそうですか。
 
田口 どうなんでしょうね。
体の続く限りいきたいんですけど‥‥。
まぁ、商品として買ってもらえるまで。
体力的には、どうですかね、5年ぐらいは
できるかなと思ったりもするんですが
やっぱり、野手ですからね、
投手よりも選手寿命は短いと思います。
最低でもあと2年はやりたいなと思ってますね。
だから、40歳まで。
糸井 2年。それは短いですねぇ。
田口 そうですね。
で、2年やれたら、そこから
1年ずつ、延びていけばいいかなと。
糸井 サドンデスに入るわけですね(笑)。
田口 はい(笑)。
糸井 日本でやるつもりはもうないんですよね。
田口 ないですね、いまのところは。
糸井 いや、いま話を聞いてても、
もっとそこにいたいって気分が
伝わってきますもんね。
田口 そうですね。
もうちょっとやっぱり勉強したいというか、
違う世界も見ないといけないかなと思ったり。
糸井 で、たとえ引退しても、
野球界にかかわっていたいって気持ちは?
田口 ありますね。
というよりも、野球界から離れると、
おそらくなんの仕事もできないんで。
やっぱり野球で育って
野球でお仕事いただいてるんで、
やっぱり野球に返すっていうのが
いちばんいいかなとは思ってます。
その機会を与えてもらえるように
がんばらないといけないのかなと思うんですけど。
 
糸井 やっぱり、ずっと関わっていたいと思えるほど、
おもしろい仕事なんですね、野球って。
田口 うん。深いですね。
 
糸井 いや、どうもありがとうございました。
ぼくらはたいへん楽しかったです。
野球がまたおもしろくなりますし、
野球以外でも参考になるような話を
たくさんうかがえました。
田口 いいえ、とんでもないです。
いや、ぼくも、楽しかったです。
糸井 あと、こうやってお会いすると、あらためて
応援したくなる気持ちが増えますからね。
やっぱり、応援したくなる人が増えるのって、
観てる側からすると、すごくうれしいから。
田口 ありがとうございます。
糸井 だから、がんばってください(笑)。
田口 はい(笑)。
 
  (田口選手とのお話は、これで終わりです。
 お読みいただき、どうもありがとうございました)


2008-03-18-TUE

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN