糸井 |
それじゃ、洋服の専門学校で学んだことって、
今の仕事に活かされていると思いますか? |
平 |
はい、洋服のパターンとか、基本的なことを
学ぶことができましたから。 |
糸井 |
それって、街を歩くことで学んだ以外のもの、
つまり「技術」や「ノウハウ」の部分ですよね。 |
平 |
ええ、でも、街を歩いているあいだに、
表面のデザインだけじゃなくて、
洋服のシルエットだとか、裏側のつくりだとか‥‥
そういう部分はずーっと、見てきてたんです。
だから学校で、パターンの構造を改めて学んだことで、
ぼくのアイディアをかたちにするとき、
パタンナーさんや
ニッターさん(ニットを編む職人さん)に
より的確に
やりたいことを伝えられるようになったとは思います。
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糸井 |
「魅力をつくりだす」という仕事においては、
職人的に磨き上げられる部分って、
あるていど、技術とかノウハウで補えると思うんですね。 |
平 |
はい、そうですね。 |
糸井 |
でも、これからの時代のつくり手に問われるのは
やっぱり「街を歩いて、得てきたもの」じゃないかと
思うんですよ。 |
平 |
それが、糸井さんのいう「着る人の気持ち」ですね。 |
糸井 |
そう、このブランドのTシャツがかっこいいとか、
あの店で見たスカートがかわいかったとか‥‥。
そういうことを考えている時間のほうが
ぜんぜん長いし、楽しいでしょう、みんな。 |
平 |
そこが充実してる「つくり手」がたくさんいたら、
街に、もっと、すてきなものが増えるんだろうなぁ。 |
糸井 |
うん、そのとおりですよね。 |
平 |
でも、ファッションを仕事にしようと決めてから
気がついたことなんですけど、
ずーっと一日中、お店を回るのって、
夕方ぐらいになると、すごーく疲れるんですよ(笑)。 |
糸井 |
それは、そうでしょう!(笑)
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平 |
ずーっと、ぐるぐる歩き回っているわけですから、
足が痛くなってくるとか、
肉体的な疲れも、もちろんあるんですけど‥‥。
なんかもっと、意識がぼーっとしてくるような(笑)。 |
糸井 |
だから、「消費のクリエイティブ」を
本気でやろうとしたら、
それだけ、たいへんだってことなんだと思います。
夕方になったら、意識が朦朧としてくるってくらいに。 |
平 |
仕事のことをぜんぜん考えなくてよかったら、
もっと楽だったのかも‥‥なんて(笑)。 |
糸井 |
でも、それじゃつまらないでしょう。 |
平 |
ええ、つまらないと思います。
なんかこう、
ずっと洋服屋を回ってきたその情報を
ひとつのデザインにまとめることが
たのしいんだと思うんです。 |
糸井 |
自分が「よろこぶ」んですよ。 |
平 |
はい。 |
糸井 |
「ほぼ日」がやろうとしてきたことも、そうなんです。
よろこんでいる自分たちと同じように、
よろこんでくれるお客さんを
ひとりでも増やしていきたいってことなんですよね。
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平 |
お客さんに「買ってもらう」というよりも‥‥。 |
糸井 |
お客さんの笑顔を、ふやすこと。 |
平 |
そうか‥‥。 |
糸井 |
だからね、今日、お話ししながら思っていたのは、
平さんと「ほぼ日」が、何かいっしょにやったら、
おもしろそうなことができそうだなって。 |
平 |
ええ、ぜひ、何かやってみたいですね。 |
糸井 |
じつを言うとね、平さんのようなデザイナーを
ずーっと探してたんですよ、ぼく。
もう、ファッションの専門学校かなんかに
スカウトにいこうかと思っていたくらいで(笑)。 |
平 |
えっ、糸井さんご自身で? |
糸井 |
うん、だから、平さんからメールをもらったとき、
正直いって「オレ、ついてるかも!」って(笑)。 |
平 |
ははは(笑)。
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糸井 |
いっしょに何ができるかは、これからご相談ですけど、
街を歩いて、街で考えて、
街を読んできた平さんに手伝ってもらえたら‥‥
「ほぼ日」の読者にも、
もっともっと、よろこんでもらえるだろうなぁ。 |
平 |
そのお手伝いができたら、うれしいですね。 |
糸井 |
この先の平さん、楽しみにしてます。 |
平 |
はい、今よりもっと多くのお客さんが
よろこんでいる顔、見てみたいです。 |
糸井 |
うん、見えたらきっと‥‥うれしいよー! |