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へぇ、おもしろーい!
そういう見かたもできる写真集なんですね。
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瀧本 |
たとえば
「ジェミニ9Aの耐熱タイル」というのは、
大気圏に突入するとき
摩擦で高温に熱せられ、傷めつけられて
ああいう面様になっています。
かたや、火山の噴火口に転がっている溶岩も、
地中のマグマのエネルギーを受けて
そうなっているわけですよね。
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── |
ええ、ええ。
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瀧本 |
うまく表現できないんですけど、
最先端の科学文明の産物として生み出された
シャトルの耐熱タイルも、
火山の噴火口の溶岩も、苔の大地も、
「我々の地球が生きているということの結果」
なんじゃないかなと思って。
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── |
なるほど‥‥。
そういうイメージが込められていたと知ると、
もう一回、
最初から見返してみたくなります。
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瀧本 |
スペースシャトルをかっこよく撮影して
かっこよく並べて、かっこよくまとめよう‥‥
という方向性でつくれば
「かっこいい写真集」にはなるんです。
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── |
はい。
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瀧本 |
でも、それって「それだけ」と言いますか‥‥。
写真集を見た人が想像する「余白」は必要で、
そこに
自分なりのメッセージを入れたかったんです。
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── |
ちなみに「苔の大地の写真」って
「顕微鏡で覗いた、生物の細胞の拡大写真」
みたいな感じにも見えますね。
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瀧本 |
そうそう、「宇宙」のことを考え出すと、
そこへ行きつくような気もします、最終的には。
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そこというのは、「ミクロなところ」へ?
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瀧本 |
イームズの『Powers of Ten』という本を
ご存知ですか?
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あ、このあいだ観た
『ふたりのイームズ』という映画のなかに
出てきたような気が。
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瀧本 |
宇宙から地球へ向かって
カメラがずんずんズームアップしていくと
最終的には
公園に寝そべっている人の細胞のなかに
入っていく‥‥みたいな本なんですが。
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── |
あ、それです。見ました。
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瀧本 |
あれって、現代の最新テクノロジーが実現した
グーグルアースみたいなアイディアを
もう何十年もまえに
椅子で有名な
家具デザイナーのイームズが考えてたんですけど
イメージとして、
そのあたりにも繋がっていきそうな。
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そうか、宇宙のことを考えていると
不思議な気分になるのは、
「無限の宇宙という超マクロなもの」と
「生物の細胞という超ミクロなもの」とが
なんというか‥‥
あたまとおしりでくっついてそうな気が
するからかもしれませんね。
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瀧本 |
うん、うん。
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写真集のなかの「LAND」の写真も
どこか「地球じゃない」みたいですしね。
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瀧本 |
カメラのフレームのなかに
敢えて「空」を入れないで撮っているのですが、
そうすることで
スケール感が曖昧になるし、
「別の惑星の風景」みたいにも見えますね。
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つまり「SPACE」の写真が
「見たことのないスペースシャトル」
であるのに対して
「LAND」の写真のほうは
「見たことのない地球の風景」なんですね。
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瀧本 |
そうかもしれません。
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つまり『LAND SCAPE』の魅力って
全体的な「見たことない感」なのかも。
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瀧本 |
そういう意味では、このスペースシャトルは、
かなり「見たことない」はずですよ。
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