タモリ先生の午後2006。
去年と今年と、昭和と平成。
第4回 スキマだらけですからね
極端に言えばですけど、
戦後の中にも、まだまだ、
「江戸時代の末期」みたいな成分が
残っていたような気がするんですよね。
うん。
みんな、いま、
「近代を生きている」
みたいなふりをしていますけど、
『三丁目の夕日』の時代なら、
まだ、くみとり便所もありましたし。
ありました、ありました。
人の考えには、当然、
ちょんまげ時代のものが、
山ほど残っていましたよね。
うん。
昭和初期なら、夜這いすらも、
あったんじゃないですか?
あったと思いますよ。

〔※註:
 昭和初期の夜這いの風習は、
 『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』
 (筑摩文庫)などで体験談が語られている〕

日本は戦争に突入していったけど、
「今まで語られてたことは、
 ほんとうにそのとおりだったのか?」
と疑問に思うんです。

日本の軍部が悪い結果を導いたのか、
その実態を知りたいですし、
欧米の列強が実際に正義だったのかも、
もしかしたら、わからない。

植民地政策を見ただけでも、
欧米列強たちのやっていたことは、
けっこう、あやしいんですよね。
勝った国も、負けた国も、
戦争の時の動きは、
どちらも、あやしいですからね。
うん。あやしい。

外交上は
「すみませんでした。
 ほんとに悪うございました」
で、いいのかもしれないけど、
もうちょっと、詳しく見てみたい。

うちの親父は、
9人ぐらいのきょうだいで、
おふくろも82歳なんですけど、
うちの親戚のことをきいてみると、
けっこう、とんでもないやつがいて、
やっぱり「昭和の歴史」を反映してるんです。
きょうだいが9人もいたら、
目がとどかないですからねぇ。
(笑)とどかないですね。
目のとどかないところには、
なにかが、ありそうですよね。
「一族のほとんどが満州に行っていた」
という話を、
おふくろが元気なうちに、
記録をとっておこうと思って……
昭和の歴史を取材しようと思ったんです。

だいたい聞いたんですけど、
ほかにも聞きたいこといっぱいあったの。

とにかく、
系統のわからない親戚がいっぱいいて、
系統が残ってるかどうかもわからないらしくて。
「タモリ家の昭和」なんですね。
そう。
「目がとどいてなかった場所の広さ」
が、おもしろいなぁ。

ついこのあいだまで、
家のあちこちにあった「闇」が
ほんとになくなったのって、
万博ぐらいからだと思うんですよ。

なんか、それまでは、立ち小便をする
チャンスがあった気がするんですよね。
そうですね。
まあ、スキマだらけでしたから。
テレビをちょっと見ていても、
「あんまり、歯をみがかないんですよ」とか、
「パンツをとりかえない日もある」とか、
「シャワーを浴びながら
 おしっこしちゃうんです」とかいうことが、
いまでは、もう、
タレントの「恥ずかしい告白」に
なっちゃうけど、つい数十年前までは、
そんなことはもう、当然だったでしょう?
当たり前のことでした。
歯を毎日みがく、とか、
風呂にも毎日入る、とかいうことが
当たり前のように語られてるのは、
人間の歴史の中でも、ごく最近ですよね。
うん。
明日に、続きます

2006-01-20-FRI