タモリ先生の午後2006。
去年と今年と、昭和と平成。
第5回 ノーパン小学生
ゴルフの練習場で、
「見た目がヤクザみたいな男」に、
会ったことがあるんです。

どういうわけか、その男とは
ゴルフにいくことになりまして。
「じゃあ、ぼくのクルマでいきましょう」
と言われたんですね。

クルマで
話しているうちにわかったんだけど、
「顔がヤクザみたいだ」というだけで、
「大のヤクザ嫌い」の男だったんですよね。

そのころ、まだ
高速道路が開通していない区間があって、
クルマで2時間半ぐらい、
そいつとふたりでいたんですよ。

気まずくてね。
なにを話そうかなぁと。

「何年生まれですか」
「昭和20年生まれです」

「同い年ですね。
 どちらで生まれたんですか」
「栃木です」

「おもしろいですねぇ。
 おたがい、
 栃木と博多で生まれた後、
 53年を経て、
 ここで一緒にゴルフにいっている。
 じゃあ、1年ずつ、
 その時々に何をしていたのか、
 語りましょうか」

「昭和何年、何をしていた」
「次の年は、何をしていた」
クルマの中の、ヒマつぶしとして。
ほぉー。いいですねぇ。
個人史をきいてみると、
そいつも
いろんなことをやってきたなかで、
1回だけ、すれちがってるところがあるんです。

そいつは波乱万丈で、失敗したり、
人にダマされたりしたりもしたんだけど、
ある年に、学芸大学駅の工場で
はたらいていた時期があったらしいんです。

ぼくが東京に出てきて、
都立大学駅から
学校に通っていた時期。
鉄道好きだから、
その工場は毎日見てたの。

「ここに、工場があるんだなぁ」
毎日、
ぼんやり見ていたことを覚えていた。
そこに、そいつが
働いていたんですね。

……そこからまた、
ふたりは、離れていくんですけどね。
(笑)ふたりは、離れていく。
そいつは
村の村長の息子かなんかだけど、
すごい貧乏で、
「パンツを替えない」どころか、
「パンツがはけなかった」っていうんです。

小学生のころ、
「パンツをはいてないことを意識してた」
っていう。
「意識してた」と。
まだ、バレてはいないんですね。
バレてはいないけど「意識」してたって。
ノーパン小学生。
(笑)はい。
そいつ、ある時、バレたんだって。
(笑)イタいなぁ……。
「おまえ、パンツはいてない!」
だけど、実は、
ほかにもまだふたり、
はいていないヤツがいたっていう……。

昭和は、そういう事実が
まだ、残っていた時代ですよね。
ぼくよりずっと年下のやつの話で、
靴下をはいている転校生を
いじめたとかね、聞きますよ。
(笑)あるある。
明日に、続きます

2006-01-21-SAT