タモリ先生の午後2006。
去年と今年と、昭和と平成。
第6回 飽きるヒマがなかった
戦後の20年から30年というのは、
ものすごい「様変わり」なんですよね。
ものすごいですよ。

足袋、履いてたですもんね。
コハゼのついた「足袋」を持っていて。
持ってました、持ってました。
あれ、いつ消えたのかなぁ。
もう昭和30年代にはないですよね。
5〜6年で消えたんじゃないですか?
ものって、
どこかのところで、
スッと消えるんですよね。

足袋も、
遠ざかっていく景色のように
なくなっていきましたから。
そうそう。
昭和33年が
話題になっているけど、
あの時期は、
「ちょっと、おちついたころ」
ですよね。

その年よりも前は、
1年1年の風景がちがいましたから。

ちっちゃい時の食事っていうと、
「七輪をおこす」
というところから、はじまってますし。
おかずを作るには、
まず七輪で火を熾(おこ)す。
七輪。
それから
プロパンガスが入ってきた……。
あぁ、そうだった。
都市ガスは、プロパンガスの後から
きましたよね。
こたつも練炭。
それから、石油になって。
その石油ストーブも、
いつしか、景色として、
うしろに飛んでいくわけですよね。
そうそう。
戦後の何十年間というのは、
すごいですよね。
すごかったですねぇ。
またたくうちに学校ができてきて。
確かに、
新しくなることが、
いちいち、うれしかったような気がする。
飽きるヒマがなかったんですから。
飽きるヒマ、ないですね。
毎日、新しいですもんね。
リリーフランキーさんの小説は、
「よく覚えてるよなぁ」
とも言われるけど、ちいさいころって、
そもそも、覚えるものごと自体が、
あんまりなかったからでもあるんですよね。
なかった!
覚えることは何もないし、
新しいものが
どんどん入ってくるので、
鮮明に記憶に残っているんですよね。

プロパンガスが
最初に家に来た日なんて、
もう、驚きだったもの。

「なんだ? コレ」
「なんで、火がつくんだろう」
「ボンベの中に何が入ってるんだろう」

手品を見るようでしたよ。
つげ忠男が、漫画で、
貧乏な人の象徴として
「プロパンガスを配達する人」
を描いてたんです。
「都市ガスをひいてない人用の、
 ちょっと格下の燃料」に、
すぐになっちゃうものなんですよね。
オレなんかからしたら、
プロパンガスは「先端」でしたよ。
ねぇ。
それが、あっというまに、近所から
プロパンガスがなくなるんですよね。
その10年間というのは、すごいなぁ。
明日に、続きます

2006-01-22-SUN