谷川俊太郎、kissなどを語る。
しかも、新作『kiss』を、「ほぼ日」で
1000枚限定特典付きで発売します。

第4回
お願いしたいほど。


 
糸井 自我がないまま生きてくっていうのは、
ものすごく難しいですね。
谷川 自我がないっていうのは
他人を傷つける
んですよね。
それはぼくにとって、いちばんの課題ね。
糸井 ぼくのほうも、そのとおりです(笑)。
谷川 ね。
糸井 永遠にアマチュアだし、
永遠に責任持たないし、
っていうことになりかねない。
谷川 それに、相手が「のれんに腕押し」みたいに
なってくとこがあるみたいね、
状況によっては。
糸井 痛いとこ出ちゃったなー!
そうなんですよ!!
でもぼくは、そこをちょっと
変えようとしてるんですよ。
谷川 うん。
ぼくも変えようとしてるんですよ。
糸井 いいですねえ。
21世紀にもなりましたし(笑)。
確かに谷川さんにも、変化を感じるんです。
自分の宣伝はできないんですよって言っても、
したほうがいいっていうことまで表明できる。
それはたぶん、昔はできなかったでしょう?
谷川 うん、かもしれませんね!
糸井 ぼくのほうは、単純なんです。
この仕事をはじめて、人を集め出しちゃったんです。
最初は「俺はどうなってもいい」って、
進化したようなこと、言ってたんですよ。
でも、自分の命が安いっていうことは、
やっぱり他人の命も安く見ちゃう
ことになる。
谷川 そうそう、そうだよね。

♪ココをクリックすると、音声を聴くことができます♪
糸井 何かが違うんだろうなぁって、
ずーっと思ってたんですよ。
まず、釣りをやったときに
ボートの修理や釣りする場所を探すことから、
何もかもひとりでやらなきゃいけないということを
まず、感じる時代があったんです。

そのあと、仕事のある先輩から、
「頼まれ仕事」と「こちらからお願いする仕事」の
大きな違いについて、教わったんです。
人が頼んでもってくる仕事というのは、
頼んでくる人が
「そうなったらいい」と思って来るんだ、
って言うわけですよ。
谷川 なるほどね。
糸井 頼んでくる人のなかに動機があるんです。
だから、どんなにすばらしく見えても、
王様になって下さいっていうお願いがあったとしても、
ぼくが王様を引き受けることで、
頼んできた人にいいことがあるんです。
谷川 うん。そうだね。
糸井 「何を断って何を断らなきゃいいかっていうのも、
 わかんなくなっちゃうし、おもしろくないでしょ?」
って言われたんですよ。
どうしてもやりたいことだったら、自分から、
土下座してでも頼むでしょ? と。
例えば、愛だ恋だっていうのも、
頼まれたからいいよ、っていうだけじゃないですよね。
お願いしますっていうこともなきゃ(笑)。
谷川 なるほどね。
糸井 もともと自分がやんなきゃいけないことや
やりたいことを探さずに
サボってたのかな? って、
ちょっと思うようになって。
谷川 単に忙しかったから、っていうのも
けっこう大っきいでしょ?
糸井 それもありますね。
頼まれ仕事で「どうでぃ!」って言ってるうちに、
時はすぎていっちゃう。
でもいまは、頼まれた仕事を、1日置くんです。
すぐに返事しないで、
俺が頼んででもやらしてくれ、という仕事かどうかを、
1日だけ考えるんですよ。

例えばテレビの出演依頼があったときにも、
ありがたいことだから、
ハイっていう気持ちはあるんです。でも、
「こういう番組があると知ってたときに、
 俺は、はたして出たいのか?」と、
お願いしに行く仕事かどうかを1日だけ考えるんです。
お願いしますって言いたいな、と思ったときには
それこそ、全力投球。
俺が頼んだんだから、ということですからね。
半端に嫌々やってやるんだ、というような
生意気な態度は、なくなったんですよ。
谷川 うん、なるほどね。
糸井 これがね、ぼくの21世紀(笑)。
谷川 わかりやすいな。
なんか、わかりやすすぎんな(笑)。
糸井 全部が全部、そうなるとは限らないんですけど、
でも、モテてて嬉しいっていうのは
もうだいたいわかったので、
今度は口説きたくなったんです。
谷川 それ、実際の恋愛の場合もそうですか?
糸井 恋愛、しなくなっちゃいましたね。
谷川 ああ、そうですか。
なんか、実も蓋もない話で(笑)。
せっかく「kiss」ってCDもって
来てんのにさ(笑)。
糸井 ハハハハ。
恋愛はね、しないんですけど、
好きですよ、ものすごくいろんなものが。
所有なしの恋愛に、近くなってる。
谷川 うん、それはよくわかるな。
糸井 うん。私はあなたに属します、という関係を
持ってなくても、もう、いいんです。
お互いに嫌ってなければ、そっからまた、
ある瞬間、何か生まれるだろうし。
谷川 うん、うん(笑)。
糸井 それにもう、うちは、カミさんいますから。
それも野放しなんですけども(笑)。
好きですよ、とっても。
谷川 うん、うん。
糸井 気にならなくなったというか、
遠くで見てられるっていうようなところにきて。
谷川 うん、うん、うん。
糸井 はやくこうなりたかったんだなって、
つくづくいまでは思います。
谷川 やっぱりそれは、年の功ってこと、ありますよね、
たぶん。ぼくよりだいぶ早いけど。
ぼくもだいたいそんな感じなんです。
糸井 だいたいそんな感じですか。
谷川 はい。
でも、糸井さんの年ごろのときには、
ちょっとまだ、
そこまでいってなかったんじゃないかなと思う。
糸井 ただ、こう言ってはいても、
突然の台風が来たりしたときに、
どうするかは自分でもわかんないですね。
谷川 そりゃ、誰だってわかんないですよ、
ぼくだってわかんないですよ。
むしろ、それを待ち望んでるかもしれないし。
糸井 良寛様みたいなね。
あるのかな?っていう気持ちは、なくはないです。
谷川 そう。そりゃあ、ありますよ。
ぼくはいままで、恋愛も
どっちかっていうと受注産業的だったような
気がするのね。
だから「自発的にお願いします」という恋愛を
しようと思って、努力してます。
努力してできるもんかわかんないけどね。
なんか、そうでないといけないっていうふうに
思いますね。


<つづきます。次をおたのしみに!>

●●●●●●谷川俊太郎さんの、詩の世界●●●●●●

男の子のマーチ

おちんちんはとがつてて
月へゆくロケツトそつくりだ
とべとべおちんちん
おにがめかくししてるまに

おちんちんはやらかくて
ちつちやなけものみたいだ
はしれはしれおちんちん
へびのキキよりもつとはやく

おちんちんはつめたくて
ひらきかけのはなのつぼみ
ひらけひらけおちんちん
みつはつぼみにあふれそう

おちんちんはかたくつて
どろぼうのピストルににてる
うてうておちんちん
なまりのへいたいみなごろし

          『あなたに』東京創元社より

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

谷川さんの「kiss」について

「ほぼ日」から販売していましたCD「kiss」は
完売いたしました。
ありがとうございました。
たくさんのご注文、ありがとうございました。
なお、CDショップなどでは、2月5日より店頭に並びます。
ショップにない場合は、
店頭にてご注文くださるか(商品番号PSCR-6105)、
インターネットの各ショッピングサイトにて
お買い求めくださいませ。

CD「kiss」のポリスターの
スペシャル・コンテンツはこちらです。

2003-01-24-FRI


戻る