谷川俊太郎、kissなどを語る。
しかも、新作『kiss』を、「ほぼ日」で
1000枚限定特典付きで発売します。

第5回
混ざり合っているものを好きになる。


糸井 谷川さんは、モテちゃうでしょう?
これは、ご自分では
ハイともイイエとも答えにくいでしょうから、
まあ、勝手にそうさせていただきます。
谷川 はい。
糸井 まあ、理由はいくらでもあるんですけど、
とりあえず、谷川さんはモテちゃう、と。
そのときに、谷川さんは
受注産業になりがちなんですね。
仕事を引き受けるのと同じように(笑)、
悪くないな

いいかもしれない

とてもいい

という道をたどる……。

谷川 (笑)かなりそんなかんじですね。
ちゃんと自分なりに
責任をもって選んでるつもりだけど(笑)、
他人から見ると
そういうふうに見えるだろうなぁ、
ということは、自覚してます。
糸井 「いえいえ、私のほうこそあなたを」
というきっかけが、ひとつできたら、
成就してしまうんですよね。
谷川 うん、うん。
糸井 ぼくはね、10年ぐらい前に、
「土下座して『やらしてくれ』と
 1年に1回は言ってみたい」

と、友達みんなの前で言ったことがあるんですよ。
「俺はね、それだと思うんだよ!」って。
それは、愛も恋もなく……。
谷川 なくね。
糸井 ただ、やらしてくれと。
もう、額を地面にこすりつけて、
「たーのむから1回だけやらせてくれ!」
って(笑)。
谷川 でも、それ、
思っただけなんでしょ。
糸井 そうでしたねぇ(笑)。
谷川 やっぱり、口舌の徒なんだよ。
言葉の人なんですよ、糸井さんも。
糸井 そうなんです。
でも、ほんっとうに頼みたいほど
性的に魅力があるというのは、
どういうことをいうんだろう?
黄金にひれ伏すかのように(笑)。
谷川 もう、それはすごいことなんでしょうね。
糸井 「もしもできちゃったとしたら
 後でこうなるだろうな、ああなるだろうな、
 相手がしゃべったらやだな」
なんていう悩みも、
ぜんぶ抜きで土下座してる自分は、
もうイキモノそのものですよね(笑)。
ほんとに口ばっかりなんですけど、
それが……夢ですね。
谷川 いまでも?
糸井 いまでも。
恋愛はともかく、その「一発」というのが。
谷川 でも、そういう女性に会ったことが
ないんでしょ?
糸井 ないです。
でも、それをムードとして振りまくものは、
メディアのなかにいっぱいあるけど。
谷川 うーん。あるね。
糸井 ストリップはぜんぶそうだし。
胸を見えそうにして
「私キレイでしょ?」って
アピールしてるふうのコマーシャルは、
ぜんぶ、胸元にFOR SALE って
書いてあるわけですよ、その瞬間は。
でも、その人が目の前に現われたときには、
演出がすべて抜きになりますから、
土下座できる力までは……ないでしょうね。
谷川 と、思うなぁ。
糸井 でも、こちらにそのポテンシャルはないかというと、
ポテンシャルはあるんだと思うんです。
ただ、……見えちゃいますから。
谷川 そうそうそうそう。
そうなの。
糸井 ひとりの女の子だよ、ってなっちゃったときにね。
だけどぼくは、ちょっとだけ怪しいと思ってるのは、
年上について、ですね。
谷川 うーん。
糸井 相手の年が上だった場合には、
見えないかも!
谷川 ぼくはこないだ、デュラスの映画を観ました。
38歳くらいの年下の男の人と
デュラスが同棲する話なんです。


「デュラス 愛の最終章」
作家マルグリット・デュラスが、
38歳年下の男性ヤン・アンドレアとの
愛の軌跡を描いた作品。
監督:ジョゼ・ダヤン
出演:ジャンヌ・モロー、エーメリック・ドゥマリニー。
糸井 はぁ。
谷川 でもそれは原作では
男の人はゲイだったっていうふうに
なってるらしいから、
どこまでスキンシップがあったのか
よくわかんないんだけど。
ジャンヌ・モローの顔を見てるだけで
飽きない映画でしたね(笑)。
糸井 すごいですね。
谷川 究極の年上の女(笑)。
糸井 谷川さん、もしジャンヌ・モローが
そばにいたら、どうでしょうね?
谷川 どっちにしろ、受注はイヤだね。
こっちが迫んなきゃあ。
糸井 そうですよね!
谷川 うん。
相手がもし80歳ぐらいの女の人だったら、
こっちがほんとに夢中になんなきゃさ、
つまんないですよ。
引きますよ絶対、むこうから来たら。
糸井 むこうがニュートラルな感じでいて、
好意はある、という状況がいいですね。
谷川 うん。
糸井 それがジャンヌ・モローであるとして、
場所は谷川家で、
まあ、谷川さんがひとりで
パンでもかじってるときに、
フッと現われたら、どうしましょう?
谷川 うん……どうしましょう、って(笑)。
それは、とりあえず、
まあ、おコタへでも入って、
ワインでも、とか、言いますね。
何語で言うのか、よくわかんないけども(笑)。
糸井 まず、お互いに「ゆるめる」わけですね。
谷川 ん、そうそうそう。
糸井 社会を。
谷川 関係をね。
糸井 その気はありますね?
こりゃ、どうも。
谷川 でも、なんで私のところへいらしたんですか?
という疑念がどうしても湧きますよね(笑)。
糸井 ハハハ!
それも社会ですね。
谷川 困っちゃうなぁ。
糸井 ジャンヌ・モローっていいたとえですね、しかし。
すごいおばあさんですよね。
谷川 80歳近いくらいですよね。
でも、魅力的ですよ。
糸井 その、映画ではやっぱり、
十分に、きますか?
谷川 きますって
どういう意味?
糸井 感じるものか(笑)、と。
谷川 糸井さんはわかんないと思うけど、
ぼくぐらいの齡になると、
そこんところはもう、
ほとんど区別がつかないですね。
性欲だけっていうふうには、
なかなかならないから。
糸井 それは、ぼくでもそうです。
谷川 そうですか?
糸井 ええ、正直言うとそうです。
谷川 「人間的魅力とそういうものとが
 混ざり合っちゃってるものの魅力」なんです。
まったく性的な魅力がないと
ちっともおもしろくないですよね、男も女も。
ジャンヌ・モローの場合には、
ちゃんとそういうものもあって、
人間的にも、なんかおもしろそうだなぁ
という感じがして。
糸井 うーん。
その「いっしょくたになってる」ということを、
ほんとはもう、
みんなわかってるんですよね。
谷川 そうだと思いますよ。
糸井 若いときからね。
谷川 そうそう。
どっちかが突出しちゃって、
どっちかのほうに意識が行っちゃうだけで。
実際には、混ざっているんです。


♪ココをクリックすると、音声を聴くことができます♪

<つづきます。次をおたのしみに!>

谷川さんの「kiss」について

「ほぼ日」から販売していましたCD「kiss」は
完売いたしました。
たくさんのご注文、ありがとうございました。
なお、CDショップなどでは、2月5日より店頭に並びます。
ショップにない場合は、
店頭にてご注文くださるか(商品番号PSCR-6105)、
インターネットの各ショッピングサイトにて
お買い求めくださいませ。

CD「kiss」のポリスターの
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2003-01-27-MON


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