糸井 |
谷川さんは、モテちゃうでしょう?
これは、ご自分では
ハイともイイエとも答えにくいでしょうから、
まあ、勝手にそうさせていただきます。 |
谷川 |
はい。 |
糸井 |
まあ、理由はいくらでもあるんですけど、
とりあえず、谷川さんはモテちゃう、と。
そのときに、谷川さんは
受注産業になりがちなんですね。
仕事を引き受けるのと同じように(笑)、
悪くないな
↓
いいかもしれない
↓
とてもいい
という道をたどる……。
|
谷川 |
(笑)かなりそんなかんじですね。
ちゃんと自分なりに
責任をもって選んでるつもりだけど(笑)、
他人から見ると
そういうふうに見えるだろうなぁ、
ということは、自覚してます。 |
糸井 |
「いえいえ、私のほうこそあなたを」
というきっかけが、ひとつできたら、
成就してしまうんですよね。 |
谷川 |
うん、うん。 |
糸井 |
ぼくはね、10年ぐらい前に、
「土下座して『やらしてくれ』と
1年に1回は言ってみたい」
と、友達みんなの前で言ったことがあるんですよ。
「俺はね、それだと思うんだよ!」って。
それは、愛も恋もなく……。 |
谷川 |
なくね。 |
糸井 |
ただ、やらしてくれと。
もう、額を地面にこすりつけて、
「たーのむから1回だけやらせてくれ!」
って(笑)。 |
谷川 |
でも、それ、
思っただけなんでしょ。 |
糸井 |
そうでしたねぇ(笑)。 |
谷川 |
やっぱり、口舌の徒なんだよ。
言葉の人なんですよ、糸井さんも。 |
糸井 |
そうなんです。
でも、ほんっとうに頼みたいほど
性的に魅力があるというのは、
どういうことをいうんだろう?
黄金にひれ伏すかのように(笑)。 |
谷川 |
もう、それはすごいことなんでしょうね。 |
糸井 |
「もしもできちゃったとしたら
後でこうなるだろうな、ああなるだろうな、
相手がしゃべったらやだな」
なんていう悩みも、
ぜんぶ抜きで土下座してる自分は、
もうイキモノそのものですよね(笑)。
ほんとに口ばっかりなんですけど、
それが……夢ですね。 |
谷川 |
いまでも? |
糸井 |
いまでも。
恋愛はともかく、その「一発」というのが。 |
谷川 |
でも、そういう女性に会ったことが
ないんでしょ? |
糸井 |
ないです。
でも、それをムードとして振りまくものは、
メディアのなかにいっぱいあるけど。 |
谷川 |
うーん。あるね。 |
糸井 |
ストリップはぜんぶそうだし。
胸を見えそうにして
「私キレイでしょ?」って
アピールしてるふうのコマーシャルは、
ぜんぶ、胸元にFOR SALE って
書いてあるわけですよ、その瞬間は。
でも、その人が目の前に現われたときには、
演出がすべて抜きになりますから、
土下座できる力までは……ないでしょうね。 |
谷川 |
と、思うなぁ。 |
糸井 |
でも、こちらにそのポテンシャルはないかというと、
ポテンシャルはあるんだと思うんです。
ただ、……見えちゃいますから。 |
谷川 |
そうそうそうそう。
そうなの。 |
糸井 |
ひとりの女の子だよ、ってなっちゃったときにね。
だけどぼくは、ちょっとだけ怪しいと思ってるのは、
年上について、ですね。 |
谷川 |
うーん。 |
糸井 |
相手の年が上だった場合には、
見えないかも! |
谷川 |
ぼくはこないだ、デュラスの映画を観ました。
38歳くらいの年下の男の人と
デュラスが同棲する話なんです。
■ |
「デュラス 愛の最終章」
作家マルグリット・デュラスが、
38歳年下の男性ヤン・アンドレアとの
愛の軌跡を描いた作品。
監督:ジョゼ・ダヤン
出演:ジャンヌ・モロー、エーメリック・ドゥマリニー。 |
|
糸井 |
はぁ。 |
谷川 |
でもそれは原作では
男の人はゲイだったっていうふうに
なってるらしいから、
どこまでスキンシップがあったのか
よくわかんないんだけど。
ジャンヌ・モローの顔を見てるだけで
飽きない映画でしたね(笑)。 |
糸井 |
すごいですね。 |
谷川 |
究極の年上の女(笑)。 |
糸井 |
谷川さん、もしジャンヌ・モローが
そばにいたら、どうでしょうね? |
谷川 |
どっちにしろ、受注はイヤだね。
こっちが迫んなきゃあ。 |
糸井 |
そうですよね! |
谷川 |
うん。
相手がもし80歳ぐらいの女の人だったら、
こっちがほんとに夢中になんなきゃさ、
つまんないですよ。
引きますよ絶対、むこうから来たら。 |
糸井 |
むこうがニュートラルな感じでいて、
好意はある、という状況がいいですね。 |
谷川 |
うん。 |
糸井 |
それがジャンヌ・モローであるとして、
場所は谷川家で、
まあ、谷川さんがひとりで
パンでもかじってるときに、
フッと現われたら、どうしましょう? |
谷川 |
うん……どうしましょう、って(笑)。
それは、とりあえず、
まあ、おコタへでも入って、
ワインでも、とか、言いますね。
何語で言うのか、よくわかんないけども(笑)。 |
糸井 |
まず、お互いに「ゆるめる」わけですね。 |
谷川 |
ん、そうそうそう。 |
糸井 |
社会を。 |
谷川 |
関係をね。 |
糸井 |
その気はありますね?
こりゃ、どうも。 |
谷川 |
でも、なんで私のところへいらしたんですか?
という疑念がどうしても湧きますよね(笑)。 |
糸井 |
ハハハ!
それも社会ですね。 |
谷川 |
困っちゃうなぁ。 |
糸井 |
ジャンヌ・モローっていいたとえですね、しかし。
すごいおばあさんですよね。 |
谷川 |
80歳近いくらいですよね。
でも、魅力的ですよ。 |
糸井 |
その、映画ではやっぱり、
十分に、きますか? |
谷川 |
きますって
どういう意味? |
糸井 |
感じるものか(笑)、と。 |
谷川 |
糸井さんはわかんないと思うけど、
ぼくぐらいの齡になると、
そこんところはもう、
ほとんど区別がつかないですね。
性欲だけっていうふうには、
なかなかならないから。 |
糸井 |
それは、ぼくでもそうです。 |
谷川 |
そうですか? |
糸井 |
ええ、正直言うとそうです。 |
谷川 |
「人間的魅力とそういうものとが
混ざり合っちゃってるものの魅力」なんです。
まったく性的な魅力がないと
ちっともおもしろくないですよね、男も女も。
ジャンヌ・モローの場合には、
ちゃんとそういうものもあって、
人間的にも、なんかおもしろそうだなぁ
という感じがして。 |
糸井 |
うーん。
その「いっしょくたになってる」ということを、
ほんとはもう、
みんなわかってるんですよね。 |
谷川 |
そうだと思いますよ。 |
糸井 |
若いときからね。 |
谷川 |
そうそう。
どっちかが突出しちゃって、
どっちかのほうに意識が行っちゃうだけで。
実際には、混ざっているんです。
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<つづきます。次をおたのしみに!> |