── |
タナカさんは、
映像作品もたくさん
つくっていらっしゃいますが、
世にたくさんある映像の作品について、
正直言って「わからないな」と思って
みてしまうことが多いんです。
現代的な音楽にあわせて、
グルングルンとテーマのような
CGがまわっている。
「わかる」ということよりも、
楽しむものなんだと思おうとしても
「わっからんなー‥‥終わった‥‥」と
なってしまうことが多い。
ところが、タナカさんの作品は、
なぜか見入ってしまうんですよ。 |
タナカ |
うーん。そういう場合は、もしかしたら、
作家がわからんまま、
つくってるのかもしれないね。
少しは自分のつくっているものを
わかりながらつくるとええんとちゃうかな。
全部をわからなくてもいいですけれども。 |
── |
スタイルでやっているかんじが、
ちょっとわかってしまうというか。 |
タナカ |
ああ、そうね。スタイルの上に
あぐらをかいてるかんじでしょ?
なんなんですかね、スタイルねぇ。
‥‥そういうときに
岡本太郎がまたええこと言うんですよ。 |
── |
あ! どんなことでしょう! |
タナカ |
えっとなー(笑)!
人間の根源的なとこで感じろ
とか、言うのよ。
なにしろ、なにかの一部を切り取って
そこで盛り上がってるものはあかん、と。 |
── |
はい。 |
タナカ |
たとえば、「伝統」というものは、
スタイルの最たるものでしょ?
伝統伝統言うたって、
ただ伝統を守りゃええのではなくて
おもろいもんだけを残しゃあええやないか、と
太郎はよく言っていたと思うんですよね。
そもそも、スタイルで
なにかをつくろうとしているときは、
「おもしろい」と
思てないでしょ。 |
── |
あ、つくる側が! |
タナカ |
そこですよ。
魂がないですやん、魂が! な?
スタイルとかいうもんには、
魂があれへんやん。 |
── |
‥‥でも、
それは、若いとしょうがないかもしれません。 |
タナカ |
そやね! |
── |
すぐに肯定しますね! |
タナカ |
タハハハ。 |
── |
「あの人と比べて私は負けている」
「うまくやっていかないとだめだわ」
と思っているとしたら、
スタイルに入ることがまずはいちばんの
近道のような気がしてしまうんですよ。
ですから、前髪バッツンしてみたり。
『オッス! トン子ちゃん』より |
タナカ |
そやね、そやね。
それは、そうしてしまうもんなんやね。
でも、トン子ちゃんは
前髪バッツンの人のことを、
認められないんですよ。
それはそれで悲しいことやね。
あのね‥‥この子はね、
なんにも信じれないんですよ。
なににも「はまる」ことができないわけですよ。 |
── |
「前髪バッツンめ!」
『オッス! トン子ちゃん』より |
タナカ |
「型にはまってろっつの!」
でもまあ、トン子も一種の型だよね。
こういう人、いるやん。 |
── |
「自己紹介はニガテダス」。 |
タナカ |
そうそう(笑)。斜に構えて、距離を置いて、
ちょっとマニアックなものが好き。
そういう型に入っている人も、
たくさんいるよ。
「型にはまって、魂を忘れたらだめよ」 |
── |
ところで、
「スタイルには魂というものがない」
という話が出ましたが、
魂って、どこから生まれてくるんでしょうか? |
タナカ |
そうやね。例えばふだんは
こまかーいウソつきながら
生きているわけです。
「今日は天気いいですね」と言われたときに
ちょっと曇ってるなーって思っても
「曇ってますけどねえ」言うたら、
だめでしょ。
そこを飲み込んで「いい天気ですね」と言う、
そういうことがいっぱいあります。 |
── |
はい。 |
タナカ |
そんな生活のなかで
ある日、夕焼けを見て、
それがめちゃくちゃきれーかったら
そこでは、こまかいウソをつく必要が
なくなるんです。 |
── |
ただ、「きれー!」という気持ちで
いっぱいになりますね。 |
|
タナカ |
うん。もうひとつ例を挙げますね。
ちっちゃいときって、みんな
虫に興味を持つでしょ?
でも、大人になったら
好きじゃなくなる。なんでか? |
── |
気持ち悪いから。 |
タナカ |
そう、それはたぶん、
いろいろ知るからですよね。
気持ち悪いということが、なんなのかも。 |
── |
虫は、足がゲジョゲジョ動いていて、
気持ち悪いです。 |
タナカ |
うん、例えば、
足がいっぱいある虫の代表、ゲジゲジですが、
あれは、裏向けたら、
等間隔で足がはえていて、すごいでしょ?
ほんとは、美しいんですよ。
きっと数式が書けるくらいきれいなんです。
でも「気持ち悪い!」と思ってしまうのは、
魂のところにある扉を
無理やり開かれるからなんです。
「あかん!」という力が働くのよ。 |
── |
へえ! |
タナカ |
あかんねん!
ここ開いたら、
こまかいウソが
つけなくなるから!
ふだんはみんな、
人やものとの関係のなかで生きてるから、
無意識に避けてしまうんですよ。
そこに、魂がかくれているんです。 |
── |
はあー!
(つづきます!)
|