大西 |
僕は、岡本太郎先生ご本人には
お会いしたことはないんですが、
作品にはずっと触れていましたよ。
まあつまり、
「太陽の塔」のことなんですけど。 |
糸井 |
万博は、何年生のときでした? |
大西 |
万博は昭和45年だったんで、
えっと、僕は39年生まれやから、
6歳ですね。 |
糸井 |
そのときは、
まさか自分が将来絵描きになるとは
思ってないですよね。 |
大西 |
いや、まったく思ってなかって。 |
糸井 |
ハハハハ。 |
大西 |
万博に行くと、「太陽の塔」が
屋根からバーンと
「突き出てた」んですよ。
むちゃくちゃびっくりしました。
「いったいこんな‥‥
こんなもんを誰がつくったんやろう」
って思て。
万博やから、てっきり
「世界の人」がつくったとばかり
思ってたんですが。 |
糸井 |
世界中の人が(笑)。 |
大西 |
はい(笑)。
ほんだら実は、岡本太郎さんという人が
つくったと聞いた。
日本人の、ひとりの、岡本太郎さんという人がね。
そっから、僕の岡本太郎先生に対する、
ずーーーっと続く興味が、はじまったんです。 |
糸井 |
もう6歳のときから。 |
大西 |
だって、屋根から塔が
突き出てるんですよ(笑)。 |
糸井 |
ふつう、屋根は、「屋根」だよね。 |
大西 |
そうそう。雨が降ったらどうすんねやろ?
屋根に穴が開いてたら、
雨がずーっと、かかってしまうし。 |
糸井 |
はいはい。 |
大西 |
子どもの頭でですけど、
ふつうに考えていくと、
おかしいことばっかり。
だから、
「これは、宇宙人が
住みつくとことちゃうかな?」
とか、考えた。 |
糸井 |
いろんなこと思ったんだ(笑)。 |
大西 |
「もしかしたら、UFOが
『太陽の塔』の上で
消えてしまうんちゃうかな?
ほんで、地下に、
宇宙人の基地があるんや!」
と思ってました。 |
糸井 |
UFO好きの子どもだったわけ? |
大西 |
いや、そんなことはないんですけども、
いかにもそういう気がしたんですよ。
あの「太陽の塔」のてっぺんの、
金の顔のところから
小っちゃい、なんやアンテナみたいなんが
出てるんですよ。
「あれは絶対宇宙と交信してんねんで!」
と思いました。 |
糸井 |
それ、友だちに言った? |
大西 |
‥‥これね、言えなかったんですよ、
恥ずかしくて(笑)。 |
糸井 |
言ったら、やっぱりバカにされる? |
大西 |
はい。 |
糸井 |
ププッ(笑)。
|
大西 |
だいいち、あの塔の格好が
おかしいじゃないですか。
子どもなりに、それまで
「人物」をみてきた経験からすると、
もう、おかしいんですよ。
まず、太陽が、おかしい。
ふつうは丸を描いて、
8本くらいダーッと光があるものを
太陽だとみんなが思っていると
思うんですけれども、
太陽が思いっきり「顔」になってて、
それが頭かと思ってたら真横から手が伸びてて。
さらに赤い稲妻みたいなんがデザインされて。
「これをつくった人も絶対に宇宙人や!」
完全にそう思いました。 |
糸井 |
つくった人も(笑)。 |
大西 |
ほんで、
テレビのCMで
「グラスに顔があったっていいじゃないか」
って言うてはったでしょう。
グラスの下に、あの、
「太陽の塔」の顔があったんです。
うわ、この人がつくったんや!
この人はきっと宇宙人や! |
糸井 |
ハハハハ。 |
大西 |
ほんで、太郎先生は、格好も
宇宙的なポーズをするのでね。
人間じゃないよ、きっと、って
さらに思ったんですよ。 |
糸井 |
太郎さんのこと、
ものっすごく気になったんだ。 |
大西 |
めーっちゃくちゃ気になってました。
ほんで、その、あの、その、
世界史の授業で、
有名な画家とかを
学校の先生が
みせてくれるんですけども、
もうそんなんは比じゃないと、
思いましたね。 |
糸井 |
はああ。 |
大西 |
あんな、歴史に載ってる、
有名な画家のことよりも、
あの岡本太郎さんって人は、
いったいどういう人なんやろ、
そればっかり思ってたんですよ。 |
糸井 |
子どもにとって
気になる人というのは、
ふつうだと、
スポーツ選手とかなんだけど。 |
大西 |
もう、比べものになんなかったです。 |
糸井 |
そのころから、
美術や絵が好きだった? |
大西 |
いや、ぜんぜん絵には興味がなかったです。
それよりも「岡本太郎」という人そのものに
すっごい興味を持ってしまった。 |
糸井 |
大西さんは、きっとインタビューとかで、
何回もこの話をしたと思うんですけど、
興奮してるね、やっぱり。 |
大西 |
フー、そうなんですよ。
この話になると(笑)。 |
糸井 |
太郎さんの話になると(笑)。
(つづきます!)
|