「ひと目みて心を奪われる」といわれる、
色彩あふれる絵を描くジミー大西さんは、
数年前までは「お笑い」のタレントさんでした。
2002年12月より日本全国を巡回している展覧会に
足を運んだ人の数は
いまや、ゆうに30万人を超えるといいます。
ジミー大西さんが
タレントから画家に転向したきっかけには、
晩年のTAROがかかわっていたとか。
darlingがお話をうかがいましたよ。


第2回
とりあえず、宇宙人やろうな、あの人は。


大西 僕は、岡本太郎先生ご本人には
お会いしたことはないんですが、
作品にはずっと触れていましたよ。
まあつまり、
「太陽の塔」のことなんですけど。
糸井 万博は、何年生のときでした?
大西 万博は昭和45年だったんで、
えっと、僕は39年生まれやから、
6歳ですね。
糸井 そのときは、
まさか自分が将来絵描きになるとは
思ってないですよね。
大西 いや、まったく思ってなかって。
糸井 ハハハハ。
大西 万博に行くと、「太陽の塔」が
屋根からバーンと
「突き出てた」んですよ。
むちゃくちゃびっくりしました。
「いったいこんな‥‥
 こんなもんを誰がつくったんやろう」
って思て。
万博やから、てっきり
「世界の人」がつくったとばかり
思ってたんですが。
糸井 世界中の人が(笑)。
大西 はい(笑)。
ほんだら実は、岡本太郎さんという人が
つくったと聞いた。
日本人の、ひとりの、岡本太郎さんという人がね。
そっから、僕の岡本太郎先生に対する、
ずーーーっと続く興味が、はじまったんです。
糸井 もう6歳のときから。
大西 だって、屋根から塔が
突き出てるんですよ(笑)。
糸井 ふつう、屋根は、「屋根」だよね。
大西 そうそう。雨が降ったらどうすんねやろ?
屋根に穴が開いてたら、
雨がずーっと、かかってしまうし。
糸井 はいはい。
大西 子どもの頭でですけど、
ふつうに考えていくと、
おかしいことばっかり。
だから、
「これは、宇宙人が
 住みつくとことちゃうかな?」

とか、考えた。
糸井 いろんなこと思ったんだ(笑)。
大西 「もしかしたら、UFOが
 『太陽の塔』の上で
 消えてしまうんちゃうかな?
 ほんで、地下に、
 宇宙人の基地があるんや!」
と思ってました。
糸井 UFO好きの子どもだったわけ?
大西 いや、そんなことはないんですけども、
いかにもそういう気がしたんですよ。
あの「太陽の塔」のてっぺんの、
金の顔のところから
小っちゃい、なんやアンテナみたいなんが
出てるんですよ。
「あれは絶対宇宙と交信してんねんで!」
と思いました。
糸井 それ、友だちに言った?
大西 ‥‥これね、言えなかったんですよ、
恥ずかしくて(笑)。
糸井 言ったら、やっぱりバカにされる?
大西 はい。
糸井 ププッ(笑)。

大西 だいいち、あの塔の格好が
おかしいじゃないですか。
子どもなりに、それまで
「人物」をみてきた経験からすると、
もう、おかしいんですよ。
まず、太陽が、おかしい。
ふつうは丸を描いて、
8本くらいダーッと光があるものを
太陽だとみんなが思っていると
思うんですけれども、
太陽が思いっきり「顔」になってて、
それが頭かと思ってたら真横から手が伸びてて。
さらに赤い稲妻みたいなんがデザインされて。
「これをつくった人も絶対に宇宙人や!」
完全にそう思いました。
糸井 つくった人も(笑)。
大西 ほんで、
テレビのCMで
「グラスに顔があったっていいじゃないか」
って言うてはったでしょう。
グラスの下に、あの、
「太陽の塔」の顔があったんです。
うわ、この人がつくったんや!
この人はきっと宇宙人や!
糸井 ハハハハ。
大西 ほんで、太郎先生は、格好も
宇宙的なポーズをするのでね。
人間じゃないよ、きっと、って
さらに思ったんですよ。
糸井 太郎さんのこと、
ものっすごく気になったんだ。
大西 めーっちゃくちゃ気になってました。
ほんで、その、あの、その、
世界史の授業で、
有名な画家とかを
学校の先生が
みせてくれるんですけども、
もうそんなんは比じゃないと、
思いましたね。
糸井 はああ。
大西 あんな、歴史に載ってる、
有名な画家のことよりも、
あの岡本太郎さんって人は、
いったいどういう人なんやろ、
そればっかり思ってたんですよ。
糸井 子どもにとって
気になる人というのは、
ふつうだと、
スポーツ選手とかなんだけど。
大西 もう、比べものになんなかったです。
糸井 そのころから、
美術や絵が好きだった?
大西 いや、ぜんぜん絵には興味がなかったです。
それよりも「岡本太郎」という人そのものに
すっごい興味を持ってしまった。
糸井 大西さんは、きっとインタビューとかで、
何回もこの話をしたと思うんですけど、
興奮してるね、やっぱり。
大西 フー、そうなんですよ。
この話になると(笑)。
糸井 太郎さんの話になると(笑)。

(つづきます!)

2004-02-06-FRI

このページに関するメッセージをpostman@1101.comまでお寄せ下さい。
このページの全部または一部の無断複製・転載を禁じます。