糸井 |
伊賀くんの写真集
『First time』を
「いい」って言い出したの、
もとはアッキィなんだよね。 |
秋山 |
うん。写真を撮ったMOTOKOちゃんに
『First time』をみせてもらって、
すごくいいなと思った。 |
糸井 |
僕はページをめくってみて、
とにかく「すげー」って思った。
こういうのを、いまの年寄りは
見なきゃいけないよ。 |
秋山 |
アハハ。
伊賀さんがプロデュースした写真集『First time』
(ソニー・マガジンズ) 2,900円(税別) |
糸井 |
写真のなかのみんなが、とにかく
いい顔してるじゃん?
「近ごろの若者は」とか言われてる人たちが、
それぞれに、いいじゃん!
で、ふと、これをプロデュースするのは
すごいことだなって思った。
まず、スタイリストは、
何もしてないようにも思える。 |
伊賀 |
(笑)そうですね。 |
糸井 |
いったいどこまで「何もしていない」のか?
その話になったんだよね。 |
秋山 |
うん、うん。 |
糸井 |
「してるのとしてないのを混ぜてんのかな?」
とか、いろんなことを話してて。
結局謎のままだったんだけど、
そのときから、伊賀大介さんって人に
会ってみたいなと思ったんです。 |
伊賀 |
ありがとうございます。
写真集、やってよかったっす。 |
糸井 |
それでね、またべつのあるときに
岡本太郎さんのことを会議で話していて、
わけもなく、ふと、この写真集のことを
思い出したんだよ。
で、その場にいた事務所のみんなに
「いいんだよ、みてみてよ」
って、オススメしてたわけ。
そしたら、その3日後くらいに、
事務所のヤツが、
「伊賀さんが太郎さんの記事で
AERAに出てます〜!」
って、飛んできて。 |
伊賀 |
そうだったんですか(笑)。 |
糸井 |
いましたよ、こんなところに!
50冊も岡本太郎の本を
お買いになってますよ!って。 |
秋山 |
すごいね。 |
糸井 |
「50冊買った」というのは、
『今日の芸術』だよね? |
伊賀 |
はい。でも、いっぺんに買ったわけじゃないです。
通算ですよ、通算50冊。 |
糸井 |
伊賀くんは、
知りあった人に『今日の芸術』を
配ったりしてるんだって。
『今日の芸術』、まず最初に
自分で読んでみたとき、どうだった? |
伊賀 |
僕が『今日の芸術』を読みはじめたのは、
ちょうど文庫になったばかりのときです。
手に取って、読んでみて、まず
「50年前の日本で、
こんなこと言う人がいたんだ」
って、びっくりした。 |
秋山 |
あ、そういえば、ウチの嫁も、
こないだ買ってましたよ、『今日の芸術』。
YO-KINGとかも、岡本太郎のファンですよ。
もうムッチャクチャ好き。 |
糸井 |
ミュージシャンにも、俳優にも
ファンの人は多いよね。
展覧会だって、どこでやっても満員。
普通の親子連れとかが普通に見てて、大人気。 |
伊賀 |
そうですよね。
あんな人、ほかにいませんもん。
僕、岡本太郎の絵をはじめて見たとき、
ほんとに絵の前で動けなくなって。 |
糸井 |
うん、うん。 |
伊賀 |
美術館に行くと、みんな、
並んでる絵を同じ時間だけみて動くから、
絵の前が、平均したようにずっと混んでますよね?
それを、いつも
「かっこつけやがって」
「いちいち止まらずに、
いいのだけ見てりゃあいいのに」
と思ってた。
でも、川崎の岡本太郎美術館に行ったときは、
もう、ガッツンって、きた!
『今日の芸術』のいちばん最初に、
「森の掟」っていう絵が載っているんです。
いきなり本の最初に、これですよ。
1950年に描かれた、「森の掟」 |
秋山 |
生きものの背中のところが
チャックになってる‥‥。 |
糸井 |
すっごいよね。
読んだのは、最近のこと? |
伊賀 |
『今日の芸術』の文庫化が、'99年ですから、
最近です。
それまでは、まあ、
存在としてすごい人だったんだな、
というふうに思っていただけだったんです。
で、本屋さんで「岡本太郎の本なんだ」と思って、
読みはじめたんですけれども、
まさか50年前に出てる本だと思わなかった。 |
糸井 |
おぉ、うん。 |
伊賀 |
読んでみたら、
「今日の芸術は、
うまくあってはいけない」
とか、書いてあって!
もう何回も、ずーっと、毎日読んだ。
ちょうど、スタイリストのアシスタントを
終えるときくらいだったから、
「ああ! こういうふうにやりたいな」
と思ったんです。
スタイリングというものは、
あんまり高尚なもんにしてもしょうがない。
岡本太郎の「芸術はみんなのものだ」みたいな
考え方がすごいいいなって、思った。
僕ね、好きな本を人にあげるクセがあって(笑)。 |
糸井 |
『今日の芸術』、
友だちに配ると、ウケる? |
伊賀 |
ウケますよ、8割ぐらいの人には、必ず。 |
秋山 |
こういう言葉が欲しかったんだよな、
みたいな気分なのかな? |
伊賀 |
そうっすね。
それぞれ、行き詰まってることがあって、
たぶんグッとくるとこは違うんでしょうけど。
『今日の芸術』もそうだし、
ほかの岡本太郎の著作もそうだけど、
すごいいっぱいの、言葉のフックがあるんです。
ぼくは、川崎の岡本太郎美術館によく行くんです。
煮詰まったときは太郎に触れに行く。
青山の記念館にも、フラッと行きます。
岡本太郎美術館の奥のほうに、
モニターがいっぱい配置されているところがあって。
そこで岡本太郎さんが言ってる言葉、
かなりキますよ。 |
糸井 |
いっぱい作品を展示してあるけど、
結局みんなビデオんとこへ行っちゃうって、
聞いたことがあるよ。
やっぱり、「人」に魅力があるんだね。 |
伊賀 |
「太陽の塔」には、
こないだはじめて行ったんですよ。
ちょっと見に行ったら、
ものすごい興奮してしまって!! |
糸井 |
ああ、俺は見てないんだ、実は!
子どもの城の前にある、
モニュメントは知ってるでしょ?
あれ、俺、好きなんだよ。 |
秋山 |
銀座の公園の時計も。 |
伊賀 |
ああ、あの、数寄屋橋の! |
糸井 |
もう壊されてしまったものもあるけれども、
そこここにあるんだよね、
岡本太郎の作品。
日本中、いたるところにあって、
みんながふだんから触れられるように
残っているんだね。
(つづきます!)
|