糸井 |
伊賀くんは、
雑誌でのスタイリングだけじゃなくて、
舞台の構成とか、
そういうことにも興味ありません? |
伊賀 |
この前、舞台のスタイリングをしました。
ラーメンズの小林(賢太郎)さんと、
たまたまお仕事で知りあいになって。
「今度、舞台をやるんだけど、
それは、ラーメンズだけの公演じゃなくて、
他の役者さんもいっぱい出てくるヤツ。
お前、やってよ」
って、酒の席で、頼まれたんです。
「俺、絶対、ほんとやりますよ!」
って返事して。
1週間、本多劇場で公演して、
そのあと5日間ぐらい大阪でやったんですけど、
すごいおもしろかったです。 |
糸井 |
ラーメンズも、そういえば、
「出る人」というよりも、
頭ん中は「スタッフ」ですよね。 |
伊賀 |
そうですね。はい。 |
糸井 |
そういう、
「入れ替えしてもいいような子たち」
ばっかりが集まってる。 |
伊賀 |
まさに、そんなかんじですね。 |
糸井 |
スタッフ側のことをできない子が
「表現」するっていうのは、
難しい時代なのかもしれないね。 |
伊賀 |
そのとおりですね。
例えば、モデルも写真のことを
わかっていたりします。
それは、写真の技術というよりは、
「写真として何がかっこいいか」が
わかっている、
ということなんです。
「俺は写真のことは詳しくないけど、
なんかこれはかっこいいと思うよ」
とか。そうすると、
フォトグラファーの人だって、
仕事のしかたが違ってきたりする。 |
糸井 |
昔はそういうのって、
はっきり分業してたもんね。 |
秋山 |
伊賀くんは、
自分で写真を撮ったりしないんですか? |
伊賀 |
僕は、スナップ的に撮ったりはしますけど、
まじめに撮ろうとは思いませんね。 |
秋山 |
けっこういますもんね、最近、
スタイリストやヘアメイクで
「写真も撮るんですよ」っていう人。 |
伊賀 |
それは、自分のいる現場の
完成形なり作品について、
「わかってる」「わかってない」
「考えてる」「考えてない」
というのとは、別のことですね。
基本的に僕は
餅は餅屋だと思ってるんで、
スタイリストはほんとに
スタイリングだけやってればいいのにな、って
思ったりするんですけど。 |
秋山 |
そういう気持ち、わかる(笑)。 |
伊賀 |
才能がほんとにあって
両方できる人っていうのは、います。
それはいいと思うんですけど、
片手間にやるのは‥‥。
スタイリストが洋服をつくったりするのも、
僕は、どうかなぁ?って思ってますよ。 |
糸井 |
へぇ。つくりたくはならない?
ぜんぜん? |
伊賀 |
たとえば、「こういうのが欲しいな」って
思うことはあるんですけど、
まずは、それを「見つけてくる」のが
楽しいと思ってます。
でも、どうしても
イメージしているものがなかったら、
1点だけ、洋服屋さんの友だちに
「つくってよ」と、頼む。
でも、それを量産することになったとしたら、
また話は別で。
その場合にはまず、「お金」の問題が
発生するでしょう。
その時点で、もうぜんぜん、
自分の「好きなもの」からかけ離れちゃう。 |
秋山 |
商業ベースになると、
いろんなことがぶら下がってくるもんね。 |
伊賀 |
そうなんです。
「これつくろうよ」って言って、
「じゃあ雑誌で出して、
若い男の子たちに買わせて」
みたいに進んでいく。
そこは、ぜんぜん、ぜんぜん、
自分の出発点からずれてるなって思う。 |
秋山 |
なんか、スタイリストっていうところから、
社長みたいになっちゃう人が、
最近けっこういるよね。
それこそ、ほんとに雑誌とかで
「はやってるから」って言い聞かせて
若い人に買わせて、という、
うまいサイクルをつくっている人たちが、
何人かいる(笑)。 |
糸井 |
いやいや、それはいますよ。
メディア持っててタレント持ってるんだから、
やり放題だよ。 |
伊賀 |
それは、みんなが
ほんとにかっこいいものに飢えてて熱狂する、
というかんじではないですよね。
「これがはやってるから」っていうことだけ。
たとえば、ビートルズが昔来たときに、
「これはすっげー!」みたいに
みんなが思った感覚とは、やっぱ違うと思う。 |
糸井 |
違いますね。うーん。 |
伊賀 |
だから、ちょっとそれは、
どうかな?と思って。
(つづきます!)
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