■11月21日■
Tシャツ鼎談第4回
「嫌だけどしょうがない」の、たいせつさ。



糸井 アッキィから見ると、
アッキィが育った時代よりも、
伊賀くんは、また若いわけじゃない?
10歳ぐらい違うでしょ。
秋山 11歳違うかな。
'77年生まれでしょ?
伊賀 '77年です。
糸井 僕とアッキィが、また10歳以上違う。
でも、これまでずっと、
こういう人たちが出てくる気配が
あったんですよね。
秋山 僕らが高校生の頃って、ほんっっと、ダサくて。
もしかして、いちばんダサかった
世代かもしれないですよ。
高校を卒業するぐらいに、
やっとデザイナーズブーム
みたいなのがやってきて、
デパートの前に並んだり。
糸井 あぁ、そういう時代ね。
秋山 大学んときは、服を並んで買って、
ローンを組んで、
ダサい感じはありつつ、がんばってた。
高校生のときって、ほんっと金ないし、
それ以前の問題として、
洋服がね、ぜんぜんなかったの。
で、タカキューとかのバーゲンを
武道館でやってて、
みんなで1万円握りしめて、買いに行く。
かなり苦労してたし、ひどい時代だったんです。
だから、いまがほんっとに、
うらやましくて(笑)。
すごく安くてもそこそこ
かっこよくできるじゃないですか。
伊賀 いまはみんな、
「平均点」なかんじがありますね。
秋山 僕が20代の頃の10代っていうと、
チーマーがはやったときかな?
伊賀 ちょうど僕らから5コ上ぐらいまでは、
シブカジ、アメカジの世代。ベルボトム。
秋山 バンダナとか。
伊賀 そうですね。
僕が高1のときの高3とかが、
そういうのが「絶好調」でしたね。
僕らは、そういうのを経験して、
そのあと古着にいった、って感じです。
糸井 古着っていうのは、
どのくらい昔のものなんだろう?
伊賀 それは、ほんと、バラバラですね。
60年代とか70年代とか。
糸井 伊賀くん世代の人たちって、
音楽も古着みたいな買い方してるよね、
昔のを。
伊賀 でも、もっと若い子は、
ちょっと違うんですよ。
ふつうは、お金がなきゃないなりに、
服も買うけど、
レコードも買って本も買って、
お酒も飲んで、と、
そういうお金の回し方をします。
でも、いまの19、20歳の子は、
たとえば服だったら
服にしか金を使わないんです。
糸井 そうか。
そういう局部的なお金のつぎこみ方は、
ちょっと、つまんないね。
伊賀 この『First time』は
そういう人たちに見てほしかったんですよ、
いろんなことをやってくうちに、
こういういい顔になるんだよ、と。
でも昔の、すごいいい世代の人たちからすれば、
僕らもひと括りで「ぜんぜんダメだ」って
言われると思うんですけど。
糸井 下の世代というのはそうやって、
ずっと言われてるんですよ
、いつも。
秋山 そのくり返しなんですね。
とはいえ、いまの10代は、
やっぱり歪んでると思いますよ。
糸井 おぉ、そう?
秋山 伊賀くんの言うとおり、
ひとつのところにいったら、
もうそこにしか目がいかない、
というかんじがする。
伊賀 「遊び」がないんですよ。
秋山 女の子たちもそうだよね。
渋谷行ったらもう「キューツー」行くぞー!って、
ワーッて行って、
そこのなかで起っているものごとに対しては、
みんな受け入れちゃう。
伊賀 そうですね。小学生も。
秋山 あれは理解できないというか、
すごい世界ですよね。
伊賀 すごいです
糸井 お、こういう人たちが言うと、
そういう気になってきたぞ!
伊賀 たぶん、生まれたときから
ゲームをやってる世代だからかな。
僕たちの世代が、
メンコもやるけどテレビゲームもやるという
ギリギリの世代だと思いますよ。
やっぱ、外で遊べば先輩とかいるし。
糸井 そっか、おんなじ種類の人ばっかりと
つき合うことができるようになっちゃったんだ。
それは‥‥、ジジイ化してるってことだね。
伊賀 「嫌だけどしょうがない」とか、
そういうことがないですし、
ぶつかることもない。
秋山 あの‥‥なんか、
「ほぼ日」で言うのもなんなんですけどね、
僕は、インターネットが悪いなって
思ってるんですよ。
糸井 そう?
秋山 とくに男が。
中学のときとか、僕たちは、
「エロ」を見るのって、
すごくエネルギーが要ったんです。
糸井 買いに行くだけで大変よね。
秋山 本屋で「プレイボーイ」を買うのだって、
すごく恥ずかしい思いをして。
バターで雑誌の修正部分を消したり(笑)。
でも今は、インターネットでカチカチってやると、
とめどなく出てくる。
あれは、麻痺するっていうか、
かわいそうだなって思う。
伊賀 レコードとかにしても、
すぐオークションで落としちゃったりできる。
やっぱ、友だちがレコード屋まわって、
「ねぇよ、ほんっとにねぇよ」っていって、
誕生日プレゼントにいきなりくれたりすると。
糸井 ドーン、とくるね。
伊賀 誰かに「うわぁ、やるー!」と言われるような、
そういう「遠回り」がなくなってきました。
糸井 ふだんからよく言ってることなんだけど、
値段のつかないものに価値があるんだよね。
それこそ、お店で女の子の
生つばが売られていたりとか。
あれ、ふつうは買えないものだからこそ
値段がつくわけでしょう?
伊賀 そうですね。
糸井 ああいう、ほんとうは変にみえることの中に、
価値の気配が現われてるんじゃないかなって
気がするんだよ。
岡本太郎も、あの人が「いた」っていうことが
すごいんです。
絵は、もしかしたら買えるかもしれない。
だけど、岡本太郎が生きてた軌跡っていうのは
買えないんです。

(つづきます!)

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