糸井 |
若い子でも「本を読むのが好き」な人って、
伊賀くんみたいに、
やっぱりいるんですよね。 |
伊賀 |
そうっすね。
趣味や仕事は違うのに、
「本好き」なだけで
繋がってるところもあったり。
1年に1回ぐらいしか会わないのに、
安部公房をいきなりもらうとか(笑)。 |
糸井
秋山 |
ワハハハハハ! |
伊賀 |
「これはお前、絶対好きだよな、マジ」
とか言われて(笑)。 |
秋山 |
読んで感想を
言ったりするんですか? |
伊賀 |
夜に遊びに行ったときなんかに、
「あれはヤバイよ」って言いあう。
遊びに行って、話は本のことばっかり。
「あーれは、ほんとにすごい」って。 |
糸井 |
なんだか、1冊ずつの本の重さが、
昔の子たちよりも大きいようなかんじだね。
いっぱい本を読んでるんじゃなくって、
1コを「ちゃんと」読んでるような
気がするんです。
そのほうが、本としては幸せな読まれ方ですよ。
永ちゃんの本をつくったときに、
「俺は本なんて、一生に1冊しか読まないよ」
って言っているヤツがその本を読んでた、
というエピソードがあって、
それがものすごくうれしかった。 |
伊賀 |
‥‥ちなみに、僕は
20冊ぐらい買いましたよ、『成りあがり』は。
すいません、50、いってなくて。 |
糸井 |
わー、ほんと?
うれしいです。 |
伊賀 |
僕、『MOTHER』も
並んで買ったんですよ。 |
糸井 |
ほんとに?
ありがとね(笑)。 |
伊賀 |
小5ぐらいのときですよ、あの赤い箱を。
今日それを、ぜひ言わないと、と
思って来たんです。 |
糸井 |
『MOTHER』って、本みたいでしょう? |
伊賀 |
そうですね。 |
糸井 |
『MOTHER』を5年生かぁ。
うれしいなぁ。 |
秋山 |
ふふふ。
ほかは、どんな本が好き? |
伊賀 |
宮沢賢治とか、すごい好きです。
あとは、夏目漱石。
夏目漱石は『坊ちゃん』が超好きですね。
あと、『ライ麦畑でつかまえて』が、
すんごい好きなんですよ。 |
糸井 |
ライ麦一派なんだ(笑)。
昔の子みたいだね、なんか。 |
秋山 |
なんか、古いな。 |
糸井 |
古着、古着だ。
思えば、『MOTHER』のテイストも
古着だしなぁ。
言ってみれば、岡本太郎も、そうだ。
大(おお)古着だよ。 |
伊賀 |
偉大な大古着を、
いっぱいいっぱい、
たのしませてもらってる。 |
秋山 |
けっこう俺たちの世代が
見すごしてきた空白を埋めている気がするな!
いまも古着を買うことが多いんですか? |
伊賀 |
ほとんど7割ぐらいが古着ですね。
新品って、なじまないから苦手なんです。
ジーパンとかも、
いま、外ではこれを履いてるんですけど、
家に帰ったら、
次の日用のジーパンに
履き替えて寝るんですよ。 |
糸井 |
あ、わかる。俺も、
家で履いて、まず、鍛えます。 |
秋山 |
寝るときに? |
伊賀 |
僕は寝るときも
ジーパンとTシャツなんです。 |
糸井 |
俺は、それはしてないけどね(笑)。 |
伊賀 |
ジーパンを買ってくると、
とりあえず一緒に風呂とか入ったりして。
それで、乾かして、寝るときずっと着てて。
足に合ってきたなって思ったら
外に履いて出るんですよ。 |
秋山 |
はぁぁ。 |
伊賀 |
Tシャツも、そういうかんじなんです。
ジャケットは新品で着たりするんですけど。
基本的に、肌に慣れ親しんだ
コンディションのものが好きです。 |
糸井 |
家に帰って、
なるべく長い時間履いてないと、
なじまないんだよね。
苦労すんのよ、けっこう(笑)。 |
伊賀 |
本とかも、読み込んで、読み込んで
たのしむほうですね。 |
糸井 |
ところで、岡本太郎って、
自分のつくった壁画とかを、
壊されてもぜんぜん平気だって
聞いたことがあるんだけど。 |
伊賀 |
その話、すごい好きなんです。
つくったらもうどうでもいい、と
思っているんですよね。
すごい青臭いこと言うと、
自分と未来を信じてるかんじがして、
すごい、いいなと思います。 |
糸井 |
俺自身も、自分のつくったものに対して、
一度つくってしまえば
あとはどうでもいいって、考えるほうなんです。
でも、
「『MOTHER』やってたんです」
とか、言われるんですよね、
伊賀くんみたいな人に(笑)。
自分はどうでもいいと思ってても、
人の心には残ってるから。 |
伊賀 |
はい。 |
糸井 |
自分の家には『MOTHER』のソフトや
関連のグッズなんてひとつもない。
レコードや本も、
探してやっとあったりする程度です。
だけど、いいものをつくると
人が大事に持っててくれるんですね。
(つづきます!)
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