伊賀 |
こないだ、電気屋さんに行って
びっくりしたんですけど、
最初から「裏技」がついているゲームソフトが
売っているんですよ。
メモリーカードを入れると、
いきなり「最強」になるのがあるんです。 |
糸井 |
そうなの? |
伊賀 |
みていたら、子どもがお父さんと、
ソフトと「裏技」のカードを
買ってった。
最初から最強だったら、
なんもおもしろくないと思うんですけど。 |
糸井 |
ああ‥‥みんな、
プロセスは嫌いなんだね。 |
伊賀 |
ゲームって、偶然や自分の知恵で
裏技や、いろんな方法を発見しますよね。
そのたいせいつな「遊び心」のところを、
最初から「無敵」って、どういうことなんだ? |
糸井 |
でも、伊賀くんのスタイリストという仕事は、
「無敵のもの」をそろえたって、
仕事になっちゃいますよね。 |
伊賀 |
そうですね。確かに。 |
糸井 |
無敵願望って、ものすごい強いよな、若い子は。
無敵のはやりものを買ってきて、
あいつにこれをみせるとか。 |
伊賀 |
そうですね。
傷つきたくないですからね、みんな。 |
糸井 |
岡本太郎がいま、
みんなに興味をもたれている理由って
「横」をみてないからだと思うんだ。
はやってるものを追いかけてる人たちって、
ほんとうのところは、くたびれ果ててるんです。
「このことを知ってるか知らないか」
で、命がけ。
そこに疲れた人たちが、
「そんなに横と比べてもしょうがねぇだろう」と
思いはじめている。 |
伊賀 |
そうですね。
「負けるならとことん負けろ」とか、
まわりは岡本太郎のように
ズバッと言ってくれないから。 |
秋山 |
横みてちゃ、辛いよね。 |
糸井 |
でも、スタイリストとしては、
「ちょっと余計に知ってる」というのは、
商売にはなるわけでしょう? |
伊賀 |
はい。 |
糸井 |
そこ、困るね。 |
伊賀 |
そうですね。でも、逆に
あんまりそれを「売り」にしてないですね。
どっちかっていうと、
とにかく「できあがり」が
かっこよければいいって思います。
服だけに目がいくよりは、
「うわっ、なんだこの写真は!」って
写真で手がとまってほしい。
雰囲気や、ポーズや、ぜんぶひっくるめて
「なんだ、これは!」みたいな。 |
糸井 |
なるほどね。知識だけだと
素人の若い子なんかのほうが、
あったりするだろうから。 |
伊賀 |
デザイナーの名前とか、
いっぱい知ってる子、いると思いますよ。 |
糸井 |
こないだ夜中にみたアメリカ映画で
ブランドに詳しすぎる男が出てきたんですよ。
その男、女の子の靴をみたときに、
さっとブランドを言いあてるんだけど、
「きっとゲイの子だよ」
というくだりがあったわけ。
だから、ファッションに詳しいんだ、と。
女の靴みて、たとえば
「それはフェラガモですね」
と言える男って、
日本には山ほどいるじゃない? |
伊賀 |
そうですね。 |
糸井 |
そっちのほうがほんとは、
不思議なことなんじゃないかって思うね。 |
秋山 |
その映画、どんな映画だったんですか? |
糸井 |
B級の映画でね、
ボインの金髪の子が
大学に入る話。 |
秋山 |
ぜんっぜんわかんないけど(笑)。 |
糸井 |
要するに、ボインの女の子が
大学のキャンパスで、成績良くなってくのよ。
そこにブランドの話が出てくるんだけど。 |
秋山 |
‥‥糸井さんって、すごいなと思うのは、
ほんと忙しくて、で、
本も、もんのすごい読んでて。
でもって、
そういう映画もみてるっていうのが(笑)。 |
糸井 |
ぬはははは!
それはね、俺の1ジャンルなのよ。
もうほんっとに疲れてて、
まともなものをみられないときってあるじゃない? |
伊賀 |
はい。 |
糸井 |
そういうとき用のビデオを買うのよ。
いま言ったのは「キューティー・ブロンド」
っていう映画なんだけど(笑)。 |
秋山 |
なんか、聞いたことある。 |
糸井 |
ほかにも、バルタン星人みたいなのが
出てきたりする、
わっけのわかんないものがね、
1,500円ぐらいで売ってるんだよ。
で、それ買って。 |
秋山 |
買うんだ(笑)。 |
糸井 |
映画を1本みたあと、もう1本、
寝る前に眠いけどみられる映画というと、
そういうのがいちばんなんだよ。
いちばんムダなのは、
人のあげあしをとったりしてるものを
読んだりみたりしてる時間。
みて下さい、楽しんで下さい、ってものは、
C級でもB級でも、もう、みんなOKです。
だから、たとえば、
週刊誌を読む時間がいちばんムダなんですよ。 |
秋山 |
あ、今日、買っちゃった。 |
糸井 |
アッキィ、意外とね、そういうの、
いくんだよね。 |
秋山 |
読んじゃうんですよね〜。 |
糸井 |
俺、「キューティー・ブロンド」はみてても、
そっちはいかないんですよ。
で、そういうつまんない映画のなかに
大傑作があるのよ、
「ビートルジュース」みたいな。 |
伊賀 |
あ! 俺、いま、「ビートルジュース」と
言おうと思ってたんですよ!
|
糸井 |
最高でしょ? |
伊賀 |
あと「グーニーズ」も
すっごい好きなんです。
ほんっと、どうでもいい、みたいな(笑)。 |
糸井 |
「バック・トゥー・ザ・フューチャー」だって、
ギリギリですよね。 |
秋山 |
「パルプ・フィクション」とかも、
そうかな? |
糸井 |
そうだよ。 |
秋山 |
あの組み立て方って、新鮮でしたよね。
あと、「ラン・ローラ・ラン」も、
好きだったですけど。 |
伊賀 |
いいっすね。しかも短いですし。
俺、けっこう昔の仁侠映画とかも‥‥。 |
糸井 |
仁侠映画もいいよ。
昔は5本立てとかあったんだよ。 |
伊賀 |
マジですか?! |
糸井 |
9時ぐらいから、並んで入って、
も、ずーっと高倉健。
ほんっとに映画館で、
みんなが声を出すの。あぶねぇ!とか言って。 |
伊賀 |
いい時代だなぁ‥‥。 |
糸井 |
あと、4人でさ、なんか、
悪いやつが出てきて裏切るやつ、なんだっけな?
「レザボア・ドッグス」! |
伊賀 |
「レザボア・ドッグス」も最高です。 |
糸井 |
あのあたりの、
B級のいい映画っていうのは、
ほんとにいいよなぁ。
横にある、「現在はやってる映画」と、
自分たちとを、比べてないんだよ。
「俺、あんまりよく知らないんだよね」
と言って、つくってるような。
実は「よく知ってるから」つくってるんだよね。
‥‥そっか、伊賀くんは、
比べてないものをみたいんだ。 |
伊賀 |
そうですね。
隣がどうだから、とか、
そういうのじゃないもののほうが、
人生は楽しいんだという気がします。
超ひよっ子の俺がこんなこと言って
申し訳ないんだけど(笑)。
(つづきます!)
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