■12月12日■
Tシャツ鼎談第7回
俺はそうとう文句を言われてると思う。



伊賀 いまの服の着方って、
「これ着ときゃあ大丈夫だろう」
っていうかんじですね。
服というより、鎧をまとってる。
そうやって「着てることで大丈夫」っていう
感覚があると、
ぜんぜん自分を出していけないんですよ。
だから、人とも打ち解けられないし。
そうすると、どんなジャンルでもそうなっていく。
しかるべき服を着ないといけないし、
しかるべきデートをしないといけないし、
おしゃれって言われている音楽を
聴かないといけない。
糸井 うん。
伊賀 そうじゃなくて、服は好きなもん着ればいいし、
好きな友だちといればいい、と思う。
外に対して気を張ってると、
おもしろいことがなにもできなくなっちゃう。
秋山 俺、最近は
そういうふうに思えるようになったけど、
学生とか、社会人になりたての頃って、
まだバブルだったの。
伊賀 はい。
秋山 そのころって、やっぱりクリスマスは、
彼女に何万円のプレゼントして(笑)、
いいレストランでご飯食べて、
ホテル泊まるみたいなことを、
みんながしなきゃいけないって思ってた。
いま思うと、アップアップなかんじ。
糸井 その世代の人たちは、
バブルのときに青春があったから、
ほんっとに難しいって、言われるよね。
秋山 小学校のとき「熱中時代」で、
中学校で「金八さん」で、
「積み木くずし」で、
その流れをもろ
みんなが汲んでるかんじがあった。
なんか、一丸となってた世代ですよ。
糸井 要するに、みんな流行で生きてたってこと?
秋山 うん。だから、いまの若い人たちのほうが、
「鍛えられてる」かんじがするな。
でも、伊賀くんって、20代の中盤にして、
そういうふうに考えてるって、
すごいと思うんです。
僕の周りの、20代の男の人って、
弱い人が多いと思う。へこむというか。
糸井 そう?
秋山 集中力がないのかなぁ。
糸井 すぐ辞めちゃうとか?
秋山 「できませーん」って、
すぐ言えちゃう。
まあ、おっさんに、
急に「ハングリーになれ」とか
言われても、なれないですよね。
あ、でも、MOTOKOさんとか、
ちょっとアグレッシブなかんじかな?
伊賀 そうですね。
楽しいこと探しに夢中ですね。
糸井 要するに、若い人のなかでも、
「夢中になれることがある子とない子」
に別れるんですかね。
伊賀 そうでしょうね。
糸井 宴会でも、
幹事を引き受ける人って
たいへんですよね。
伊賀 はい(笑)。
糸井 引き受けないと楽ですよね。
でも、引き受けたほうが‥‥。
伊賀 楽しいっす(笑)。
糸井 楽しいよね(笑)。
「プロデュースすること」って、
たいへんだけど、
そんなようなことなんじゃないだろうか?
アッキィも
引き受けるタイプだよね。
秋山 人がやってるのみると、イライラするんだよね。
じゃ、やっちゃおう、と。
伊賀 俺ならもっとできる、みたいな。
わかります、わかります。
糸井 そこで別れるんだねぇ。
幹事っていうかリーダーっていうか、
まとめ役っていうか。
アッキィも、伊賀くんも、
やんないで文句だけ言うヤツは、嫌いでしょう?
秋山 最悪ですね。
伊賀 あー、すごい嫌いですね。
糸井 邪魔すんなよ、と思うでしょう。
伊賀 しかも、文句言うヤツに訊いてみると、
解決方法がすごい単純なんですよ。
単に「やれよ」とか。
秋山 そうそう(笑)。
伊賀 「こうしたらよくなるんじゃないか?」
ではなく、
「やれよ」だけで、もうビックリ。
糸井 っていうことは、ここにいる3人は、
「文句言われる側に立ってる人たち」
ということですね。
岡本太郎も、きっとそうだったんだろうね。
文句、言われるよねぇ(笑)。
伊賀 俺は、そうとう文句言われてると思う。
秋山 そうかな?
伊賀 たぶん普通のスタイリストからしてみたら、
僕のやっていることは、
あり得ないですよね。
秋山 ああ、そういうことか。
糸井 スタイリングでメシ食ってる人の仕事として、
これが認められたとしたら、
いままでみんなが「ふかしてた」のが
バレちゃうから。
だから、伊賀くんのことは、嫌だと思うよ。
秋山 伊賀くんの、仕事の理想ってどんなの?
伊賀 そうですね‥‥、
中学生とかが、部屋に
俺のスタイリングしたページの
写真を貼ったりすることかなあ?
「なんかかっこいいな」というあこがれを
人びとに抱かせたいんです。
「そういうふうになりたいな」って
ところから、
何かがはじまっていくと思うから。
秋山 伊賀くんが、そういうふうに、
かっこいいと思ったのが、
その「THE FACE」の
1枚の写真だったんですよね。
伊賀 そうなんです。それは、
モンディーノ
(ジャン・バプティスト・モンディーノ)
かなんかが撮って。
秋山 モンディーノ。ふーん。
ねぇ、伊賀くんが自分がスタイリングしたなかで
ベスト、っていったら、何?
伊賀 ええと、けっこうありますが、
バイク好きのみんなと、
革ジャン特集の撮影をしたんです。
全員に
「明日は革ジャンだけ、俺が持ってくから、
 みんなは好きな格好して来て下さい」
と言って集まってもらったんです。
みんな、ジーパンにTシャツとか、
ライダース着たりとか
思い思いの格好をして集まった。
スタイリストだからといって、
つま先まで揃える必要はないと思うんです。
レディースは
爪まで手を入れたりするのが、
逆に楽しいと思いますけど、
男はもう、ちょっとした情報を
あげられれば、それでいい。
仕事なので、新しいものや商品を出さないと
回らないっていうのはあるんですけど、
それよりも、
「どういうのがかっこいいのか」を
知らない人の入り口になったらいいな、と
思ってます。

(つづきます!)

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