伊賀 |
いまの服の着方って、
「これ着ときゃあ大丈夫だろう」
っていうかんじですね。
服というより、鎧をまとってる。
そうやって「着てることで大丈夫」っていう
感覚があると、
ぜんぜん自分を出していけないんですよ。
だから、人とも打ち解けられないし。
そうすると、どんなジャンルでもそうなっていく。
しかるべき服を着ないといけないし、
しかるべきデートをしないといけないし、
おしゃれって言われている音楽を
聴かないといけない。 |
糸井 |
うん。 |
伊賀 |
そうじゃなくて、服は好きなもん着ればいいし、
好きな友だちといればいい、と思う。
外に対して気を張ってると、
おもしろいことがなにもできなくなっちゃう。 |
秋山 |
俺、最近は
そういうふうに思えるようになったけど、
学生とか、社会人になりたての頃って、
まだバブルだったの。 |
伊賀 |
はい。 |
秋山 |
そのころって、やっぱりクリスマスは、
彼女に何万円のプレゼントして(笑)、
いいレストランでご飯食べて、
ホテル泊まるみたいなことを、
みんながしなきゃいけないって思ってた。
いま思うと、アップアップなかんじ。 |
糸井 |
その世代の人たちは、
バブルのときに青春があったから、
ほんっとに難しいって、言われるよね。 |
秋山 |
小学校のとき「熱中時代」で、
中学校で「金八さん」で、
「積み木くずし」で、
その流れをもろ
みんなが汲んでるかんじがあった。
なんか、一丸となってた世代ですよ。 |
糸井 |
要するに、みんな流行で生きてたってこと? |
秋山 |
うん。だから、いまの若い人たちのほうが、
「鍛えられてる」かんじがするな。
でも、伊賀くんって、20代の中盤にして、
そういうふうに考えてるって、
すごいと思うんです。
僕の周りの、20代の男の人って、
弱い人が多いと思う。へこむというか。 |
糸井 |
そう? |
秋山 |
集中力がないのかなぁ。 |
糸井 |
すぐ辞めちゃうとか? |
秋山 |
「できませーん」って、
すぐ言えちゃう。
まあ、おっさんに、
急に「ハングリーになれ」とか
言われても、なれないですよね。
あ、でも、MOTOKOさんとか、
ちょっとアグレッシブなかんじかな? |
伊賀 |
そうですね。
楽しいこと探しに夢中ですね。 |
糸井 |
要するに、若い人のなかでも、
「夢中になれることがある子とない子」
に別れるんですかね。 |
伊賀 |
そうでしょうね。 |
糸井 |
宴会でも、
幹事を引き受ける人って
たいへんですよね。 |
伊賀 |
はい(笑)。 |
糸井 |
引き受けないと楽ですよね。
でも、引き受けたほうが‥‥。 |
伊賀 |
楽しいっす(笑)。 |
糸井 |
楽しいよね(笑)。
「プロデュースすること」って、
たいへんだけど、
そんなようなことなんじゃないだろうか?
アッキィも
引き受けるタイプだよね。 |
秋山 |
人がやってるのみると、イライラするんだよね。
じゃ、やっちゃおう、と。 |
伊賀 |
俺ならもっとできる、みたいな。
わかります、わかります。 |
糸井 |
そこで別れるんだねぇ。
幹事っていうかリーダーっていうか、
まとめ役っていうか。
アッキィも、伊賀くんも、
やんないで文句だけ言うヤツは、嫌いでしょう? |
秋山 |
最悪ですね。 |
伊賀 |
あー、すごい嫌いですね。 |
糸井 |
邪魔すんなよ、と思うでしょう。 |
伊賀 |
しかも、文句言うヤツに訊いてみると、
解決方法がすごい単純なんですよ。
単に「やれよ」とか。 |
秋山 |
そうそう(笑)。 |
伊賀 |
「こうしたらよくなるんじゃないか?」
ではなく、
「やれよ」だけで、もうビックリ。 |
糸井 |
っていうことは、ここにいる3人は、
「文句言われる側に立ってる人たち」
ということですね。
岡本太郎も、きっとそうだったんだろうね。
文句、言われるよねぇ(笑)。 |
伊賀 |
俺は、そうとう文句言われてると思う。 |
秋山 |
そうかな? |
伊賀 |
たぶん普通のスタイリストからしてみたら、
僕のやっていることは、
あり得ないですよね。 |
秋山 |
ああ、そういうことか。 |
糸井 |
スタイリングでメシ食ってる人の仕事として、
これが認められたとしたら、
いままでみんなが「ふかしてた」のが
バレちゃうから。
だから、伊賀くんのことは、嫌だと思うよ。 |
秋山 |
伊賀くんの、仕事の理想ってどんなの? |
伊賀 |
そうですね‥‥、
中学生とかが、部屋に
俺のスタイリングしたページの
写真を貼ったりすることかなあ?
「なんかかっこいいな」というあこがれを
人びとに抱かせたいんです。
「そういうふうになりたいな」って
ところから、
何かがはじまっていくと思うから。 |
秋山 |
伊賀くんが、そういうふうに、
かっこいいと思ったのが、
その「THE FACE」の
1枚の写真だったんですよね。 |
伊賀 |
そうなんです。それは、
モンディーノ
(ジャン・バプティスト・モンディーノ)
かなんかが撮って。 |
秋山 |
モンディーノ。ふーん。
ねぇ、伊賀くんが自分がスタイリングしたなかで
ベスト、っていったら、何? |
伊賀 |
ええと、けっこうありますが、
バイク好きのみんなと、
革ジャン特集の撮影をしたんです。
全員に
「明日は革ジャンだけ、俺が持ってくから、
みんなは好きな格好して来て下さい」
と言って集まってもらったんです。
みんな、ジーパンにTシャツとか、
ライダース着たりとか
思い思いの格好をして集まった。
スタイリストだからといって、
つま先まで揃える必要はないと思うんです。
レディースは
爪まで手を入れたりするのが、
逆に楽しいと思いますけど、
男はもう、ちょっとした情報を
あげられれば、それでいい。
仕事なので、新しいものや商品を出さないと
回らないっていうのはあるんですけど、
それよりも、
「どういうのがかっこいいのか」を
知らない人の入り口になったらいいな、と
思ってます。
(つづきます!)
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