第12回 あとがつくことについて。
(去年のある日、雑誌のダヴィンチさんが
 『黄昏』の単行本を記事にしてくれることになり、
 早朝の神保町にみんなで集まりました。
 喫茶店に集まったふたりはまだ少し眠そうです。
 そのときの雑談を、どうぞ)
何頼む?
糸井 コーシー。
コーヒーだね。
糸井 うん、コーヒー。普通のコーヒー。
普通のコーヒーね。
スタッフ (お店の奥に向かって)
すみませーん、すみませーん!
糸井 なんか謝ってますね。
あ、ガラスを割ったんだ。
お店の人を呼んでるんじゃないかな。
糸井 あ、そっかぁ。
(やってきたお店の人に)
普通のコーヒーをください。
糸井 ぼくも‥‥それを‥‥。
ちょっと声が出てません。
伸坊は、朝起きたとき、
声がうまく出ないことってある?
うん。
糸井 ‥‥あの‥‥こんなふうにさ。
うん(笑)。
糸井 年をとると、そういうことが増えるんだよなぁ。
あとさ、もうご覧のとおりなんだけどさ、
うつぶせで寝るとね、シーツのシワとか、
枕の端っことか、そういうもののあとが
顔にくっきりつくのよ。
ああ、ほんとだ(笑)、
こっちにもついて、こっちにもついてる。
おいおい、どういうことなの、それ(笑)。
糸井 あっちこち、つくのよ。
でね、若いときは、ついたとしても、
朝ご飯食べてるうちに戻るんだけど、
年取ると、なかなか戻んない。
そうやって頬杖ついてると、
ほっぺたに手のあとがつくんじゃない?
糸井 まじめに答えると、
手は、柔らかいから、つかないんだ。
でも、木綿とかは硬いんだよね、わりとね。
木綿は、あとがつくと(笑)。
糸井 この、起きぬけの顔のしわについては、
今朝、妻に指摘されてさ。
「あと、ついてるよ」って。
ははははは。
糸井 「知ってるよ」って答えたけどね。
でも、「知ってるよ」って言ってるときは、
だいたい知らないんだよね。
わはははははは。
糸井 会社にいてもそうだよ、オレ。
「知ってるよ」って言うときは、
知らないんだよ。
一同 (笑)
ほんとうに起きたばっかり?
糸井 けっこうぎりぎりに起きた。
あわてて帽子をかぶってね。
だから、今日は帽子が脱げないよ。
その点、伸坊は、坊主だから気楽だね。
帽子をかぶるも脱ぐも自由でいいな。
いや、そうでもないんだ。
じつに微妙な問題だけど、
(耳の上あたりの頭囲をぐるりと指しながら)
ここにけっこう、あとがつくんだよ。
糸井 ははははは。
坊主っぽいけど、坊主じゃないからさ。
このあたりにぐるりと
輪っかみたいなあとがついちゃうんだよ。
糸井 つまり、道路工事のパイロンで
輪投げをしているような
あとがついちゃうわけね。
ふふふふふふ。
頭、とんがってるから
輪投げもしやすいと。
糸井 しやすい、しやすい(笑)。
そんなに狙って投げなくても
スポッと入ると思うよ。
人の頭を道路工事あつかいかい。
糸井 ふふふふふ。
(いつでもどこでも、こうなんだ。つづきます)


2010-06-03-THU