|
南 |
もうひとつ、
見てきたっていう話だけど、このあいだ、
三菱一号館っていう煉瓦の建物が
復元されたっていうんで行ってきたんだ。 |
糸井 |
いろいろ見に行くね。 |
|
南 |
うん。
それは呼ばれて行ったんだけど。
行って見ると、見事に復元してるんだよ。
煉瓦なんかも、わざわざ昔の
古い手法でつくって元通りにしてある。 |
糸井 |
ほぅほぅ。 |
南 |
でね、建物の中に、
大理石づくりの暖炉があって、
見事に復元されてるんだけど、
その中のひと部屋の大理石だけ、
当時の石をそのまま使ってるわけ。 |
糸井 |
うん。 |
南 |
きっと、煤で汚れてたやつを、
ものすごくきれいにして、
ほとんど新品みたいになってるんだけど、
ちょっと、こう、なんていうのかな、
彫刻とか摩耗して、なだらかになってる。
パッと見は、ほとんどいっしょなんだよ、
キレイにした古い石も、新品の石も。
ちゃんとおんなじ模様なの。
でも、よーく見ると、違いがわかる。
で、ね。比べると、やっぱり、
古いほうの石のほうがいいんだよ。 |
|
糸井 |
新品じゃなくて、
古い石をきれいにしたほうが。 |
南 |
そう。古いほうの石が。
それが、なんとも不思議なんだ。
ちょっと、欠けたりしてる石のほうが
新しいものよりもよく見える。
じゃ、欠けてるところがいいのか? |
糸井 |
たぶんね、だいたいのものは、
「そのままになってる」ほうがいいんだよ。 |
南 |
そのまま? |
糸井 |
欠けたほうがいいとか、
なだらかになってるほうがいいとかじゃなく。
長くつかってる、そのままがいいんだよ。
あの、オレ、京都で木造の家に
住んでるじゃないですか。 |
南 |
うん。 |
糸井 |
建ててくれた大工さんとか
設計してくれた人とかが
ときどき遊びにくるんだけど、
「やっぱり、住むといいですねぇ」
って言うんだよ。 |
|
南 |
うん、うん。 |
糸井 |
いわれてみると、たしかにそうなんだよ。 |
南 |
そうだね。 |
糸井 |
うん。
できたばっかりの家って、
やっぱり、おもしろみがないんだよね。
どこがどう違ってくるのか
わかんないんだけど、
たしかに違いが出てくるんだよ。
こう、軽いエッジが取れていくみたいな。 |
南 |
そう、それそれ。 |
糸井 |
それなんだよね。
じゃあどんどん古くなればいいかというと、
それもまたちょっと違う。 |
南 |
うん。汚くなるのとは違うからね。 |
糸井 |
そうそうそう。
だから、家のなかの柱なんかは、
そのまんまにしておくんだけど、
屋外に出ている板や柱の部分なんかは
洗ったほうがいいらしい。
それ専門の「洗い屋」っていう
人たちがいるんだって。
|
南 |
あ、苛性ソーダとかで洗うやつ? |
糸井 |
そうそうそう。
そういうので外側は
キレイにしたほうがいいらしい。
つまり、ただ、自然に
劣化してくっていうのを
たのしむだけじゃなくて‥‥
どう言えばいいんだろうね? |
南 |
かなり深いところ。 |
|
糸井 |
深いところだね。 |
南 |
朝からするような話じゃないね。 |
|
一同 |
(笑) |
糸井 |
はははははは。
いや、朝からとばしていこうよ。 |
南 |
はっはっはっはっ。 |
糸井 |
オレは朝からカツ丼食える男だから。 |
南 |
なんだそりゃ(笑)。 |
糸井 |
カツ丼でも、ラーメンでも食えるよ。 |
南 |
どんな自慢だよ。 |
糸井 |
もうね、顔のシーツの跡が消えないうちから、
食うよ、カツ丼でもラーメンでも。 |
南 |
うん、まだついてるよ。 |
糸井 |
今日は、一日中ついてそうだな。 |
|
南 |
ははははははは。 |
|
(糸井、最近は食べないみたいです。つづきます) |