第18回 ロン・ミュエックを見たまえ。
糸井さん、ロン・ミュエックっていう
現代美術作家知ってる?
糸井 知らないです。
あ、知らないか。
糸井 どういうことした人?
最新式蝋人形みたいな、
ものすごくリアルな人間を
つくるんだけど。
糸井 ああ、どうだろう。
たぶん、見たことないと思うけど。
それはね、ちょっとすごい。
日本にはあんまり作品がないんだけど、
十和田現代美術館っていうところに
ひとつあって、
それは、おばさんなんだ、ただの。
おばさんが黒いアッパッパー着て、
立ってるだけなの。
糸井 ふーん。
東京の現代美術館にも
作品が来たことがあって、
そのとき展示されてたのは、
これもおばさんなんだけど、
こう、ベッドでシーツにくるまってるの。
寝てるわけじゃなくて、起きてて、
あらぬ方向を見て、ぼーっとしてる。
糸井 うん。
それがね、なにがおもしろいってね、
肌の感じとかがものすごくリアルなんだ。
蝋人形の比じゃない。
糸井 ああー。
もう、ほぼ本物なんだよ、
皮膚の半透明な感じとかさ、
眼とか、まつげとか、
しわとか、ホクロとかさ。
だけどね、明らかに本物の人間と
違うところがあってね‥‥でかいの。
糸井 なにが?
全体が。
すごくリアルで本物そっくりなんだけど、
実際の人間の3倍か4倍くらいあるんだよ。
糸井 あ、全体が? へーーー!
実際に見るとわかるけど、
そういうのって、
はじめての視覚体験なんだよ。
つまり、人間の顔が、本物そのまんまなのに、
こーんなに大きい、とか。
糸井 仏像なんかとは違うね。
リアルだからね。
つい触って確かめたくなるんだよ。
その、でっかい人間を。
糸井 なるほど、なるほど。
だから、ほかの展示物より、
監視員がたくさんいる。
つい触りたくなるから。
糸井 たぶん見てないって言ったけど、
それはオレ、断言できるわ。
見てない。それは、見たことがない。
あれは見たほうがいい。
見たほうがいいっていうか‥‥。
糸井 見るといい。
見るとおもしろい。
糸井 見るといいようなものだよ。
(笑)
糸井 見る機会があったら、見るといいね。
見るといいや、キミ。
え? どうだい。
糸井 じゃあ、ぼくも、
見る機会があったら見るとしよう。
ははははは、
また『時事放談』だね(笑)。
糸井 ははははは。
それはいいネ、ぼくも見る機会があったら
見ることにしよう。
そうだよ、そうしたまえ、キミ。
糸井 ありがとう。
キミに言われて、そういう気になったよ。
ははははは。
(どうして急にそうなるのか。つづきます)


2010-06-18-FRI