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南 |
糸井さん、ロン・ミュエックっていう
現代美術作家知ってる? |
糸井 |
知らないです。 |
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南 |
あ、知らないか。 |
糸井 |
どういうことした人? |
南 |
最新式蝋人形みたいな、
ものすごくリアルな人間を
つくるんだけど。 |
糸井 |
ああ、どうだろう。
たぶん、見たことないと思うけど。 |
南 |
それはね、ちょっとすごい。
日本にはあんまり作品がないんだけど、
十和田現代美術館っていうところに
ひとつあって、
それは、おばさんなんだ、ただの。
おばさんが黒いアッパッパー着て、
立ってるだけなの。 |
糸井 |
ふーん。 |
南 |
東京の現代美術館にも
作品が来たことがあって、
そのとき展示されてたのは、
これもおばさんなんだけど、
こう、ベッドでシーツにくるまってるの。
寝てるわけじゃなくて、起きてて、
あらぬ方向を見て、ぼーっとしてる。 |
糸井 |
うん。 |
南 |
それがね、なにがおもしろいってね、
肌の感じとかがものすごくリアルなんだ。
蝋人形の比じゃない。 |
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糸井 |
ああー。 |
南 |
もう、ほぼ本物なんだよ、
皮膚の半透明な感じとかさ、
眼とか、まつげとか、
しわとか、ホクロとかさ。
だけどね、明らかに本物の人間と
違うところがあってね‥‥でかいの。 |
糸井 |
なにが? |
南 |
全体が。
すごくリアルで本物そっくりなんだけど、
実際の人間の3倍か4倍くらいあるんだよ。 |
糸井 |
あ、全体が? へーーー! |
南 |
実際に見るとわかるけど、
そういうのって、
はじめての視覚体験なんだよ。
つまり、人間の顔が、本物そのまんまなのに、
こーんなに大きい、とか。 |
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糸井 |
仏像なんかとは違うね。 |
南 |
リアルだからね。
つい触って確かめたくなるんだよ。
その、でっかい人間を。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。 |
南 |
だから、ほかの展示物より、
監視員がたくさんいる。
つい触りたくなるから。 |
糸井 |
たぶん見てないって言ったけど、
それはオレ、断言できるわ。
見てない。それは、見たことがない。 |
南 |
あれは見たほうがいい。
見たほうがいいっていうか‥‥。 |
糸井 |
見るといい。 |
南 |
見るとおもしろい。 |
糸井 |
見るといいようなものだよ。 |
南 |
(笑) |
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糸井 |
見る機会があったら、見るといいね。 |
南 |
見るといいや、キミ。
え? どうだい。 |
糸井 |
じゃあ、ぼくも、
見る機会があったら見るとしよう。 |
南 |
ははははは、
また『時事放談』だね(笑)。 |
糸井 |
ははははは。
それはいいネ、ぼくも見る機会があったら
見ることにしよう。 |
南 |
そうだよ、そうしたまえ、キミ。 |
糸井 |
ありがとう。
キミに言われて、そういう気になったよ。 |
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南 |
ははははは。 |
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(どうして急にそうなるのか。つづきます) |