第24回 きらきら星と玄関の鍵。
糸井 『きらきら星変奏曲』ってあるでしょ。
「♪きーらーきーらーひーかるー」
っていう、あの、有名な曲。
うん。
糸井 あれの作者は、モーツァルトなんですよ。
あ、そう。
糸井 ‥‥と、いうところまでが、
クイズ番組的な教養なわけだけどね。
エエッ(笑)。
糸井 で、こないだ、ぼーっとしてたらね、
その『きらきら星変奏曲』が聴こえてきたんだ。
で、ああ、これモーツァルトなんだよな、
って思ってあらためて聴いてたら、
やっぱり、すごい曲なんだよ。
へぇー。
糸井 なんていうのかな、
ものすごく生意気な感じのする曲なんです、
『きらきら星変奏曲』って。
こう、「どないだ!」って
言わんばかりの先走った曲なのよ。
へぇ、そうなの。
糸井 で、ちょっとびっくりしちゃって。
クイズ番組によく出てくる
「きらきら星はモーツァルトですね」
っていう雑学として覚えてたのに、
しっかり聴いてみると、
もう、どっかーん! なのよ。
うっとりするっていうか、
まるで、なんだろう、
ジェフべックのギターを聴くようだったんだよ。
ほう、ほう。
糸井 で、驚いちゃってね、
あたらめて、すげーなと思って
そういう原稿書いたんだけど、
こういう「すげーな!」って
オレが思うようなことってね、書くと、
「糸井さんいまごろ気づいたんですか」
って必ず言われるから。
一同 (笑)
はははははは。
糸井 そんな、悪気じゃないにしても、
必ず言われるんだ。
で、まあ、それはぜんぜん、いいんだ。
むしろ「いまさら」っていうタイミングこそ
オレの間合いだからさ。
ふふふふ。
糸井 だからそれを言われるのは平気なんだけど、
困るのは、そういうことを書くと、
「それはじつはまちがってます」なんて
言われることもよくあって。
ああ、そうなんだ。
糸井 そうなると、ちょっと面倒だから、
こう、得意分野じゃないことについて
いまさらなことを書くときは、
いちおう、調べてみるわけ。
インターネットで?
糸井 インターネットで(笑)。
ふふふふ。
糸井 で、インターネットで調べてみたら、
なんと、『きらきら星変奏曲』の
大元になっているあのメロディーっていうのは
フランスのシャンソンだったって書いてある。
「お母さん、わたし恋をしてしまったみたい」
っていう、恋の歌らしいんだよ。
えッ!
糸井 で、当時、それが流行ってたんで、
モーツァルトが14歳だか15歳だかのときに
それを変奏曲にして弾いたらしいんだ。
ああ、そういうことなの。
糸井 そう。つまり、流行ってるあの曲を
わたしが見事に弾いてみせようじゃないか、
っていうことでさ。
ふーん、なるほど。
糸井 つまり、そういう意味では、
「どないだ!」って言わんばかりの
生意気な曲だと感じたことは、
まちがってなかったわけだよ。
あーー、そうだね。
むしろ、そのとおりってことだ。
糸井 そうそうそう。
自分のつくった曲を披露するっていうより、
若きモーツァルトが自分の技術を
アピールするために弾いてるわけだから。
合ってたんだ。
糸井 合ってたんだよ。
で、それだけじゃなくて、まだあってね。
その『きらきら星変奏曲』っていう曲は、
『のだめカンタービレ』っていう
映画だかドラマだかで使われてるんだって。
で、それは、大元のシャンソンの
「わたし、恋をしちゃったみたい」っていう
意味合いでもって効果的に使われていると。
ほう、ほう、ほう。
糸井 っていうのをね、インターネットでね、
ものの30分くらいで知っちゃったわけ。
それだけの情報を、ごそっと。
すごいねー。
糸井 すごいよ。
で、おもしろかったっていう思いは
もちろんあるんだけど、それ以上に
「速すぎないか、これ」
っていう気持ちもあるわけ。
そうだねぇ(笑)。
糸井 ふつうだったらね、
こう、本とか、知り合いの話とかで
ちょっとずつたのしめたのに、
もう、かたまりで、わかっちゃうからさ。
すごいね、インターネットは。
糸井 すごいよー。ちょっと困っちゃうね。
だから、あれだね、インターネットで
「うちは玄関にカギかけてない」なんていうと
たいへんなことになっちゃうね。
一同 (笑)
糸井 そうなんだよ(笑)。
みんなに知れわたっちゃうから。
糸井 もう、泥棒にバンバン入られちゃう。
泥棒じゃないやつまで来ちゃうよ。
糸井 だから、ここで、もう一度、
念を押しといたほうがいいね。
あの、伸坊んちの玄関は、
鍵がかかってます。
かかってますから。
一同 (笑)
糸井 ここまで言っておくとね。
インターネットでこれを読んでる泥棒も、
「ああ、そうか、あいつら
 かかってないようなこと言ってるけど、
 けっきょく、かかってるんだな」って
思ってくれると思う。
うんうん。よかった、よかった。
糸井 伸坊んちは、鍵が、かかってる。
そう、かかってますから。
一同 (笑)
(ほんと、かかってますから。つづく)


2010-07-11-SUN