糸井 |
おっと、そこ。
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南 |
ん?
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糸井 |
馬糞があるね。いや、牛かな。
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南 |
わ。立派だねぇ。危ない、危ない。
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糸井 |
おーっと、危なくうんこを踏むところだったぜ。
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南 |
ふふふふ。
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糸井 |
おーっと、うんこを踏んじまったと思ったら、
うんこじゃなくてよかったぜ。
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南 |
あ、うんこじゃなかったんだね。
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糸井 |
と、思ったら、やっぱりうんこだったぜ。
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南 |
え(笑)、なになに? どういうこと?
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糸井 |
だから、踏んでしまった男の独白さ。
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南 |
そういう男がいるわけだな。
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糸井 |
そう、ある男、いわく。
「おおーーっと、うんこを踏んだようだったが、
うんこじゃなくてよかったぜ‥‥と思ったら、
やっぱりうんこだったぜ!」
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南 |
アハハハハ、ばかだね。
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糸井 |
これから、道のうんこを見るたびに言おうかな。
「おおーーっと、うんこを踏んだようだったが、
うんこじゃなくてよかったぜ‥‥と思ったら、
やっぱりうんこだったぜ!」
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南 |
「イトイ屋ぁ!」
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糸井 |
はははは、客席から声がかかるわけだ。
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南 |
いいところだからね。
幕がこう、するするするっと開くと、
そこに糸井さんが立っててね。
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糸井 |
「おおーーっと、うんこを踏んだようだったが、
うんこじゃなくてよかったぜ‥‥と思ったら、
やっぱりうんこだったぜ!」
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南 |
「イトイ屋ぁ!」
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糸井 |
はははははははは、
ダメだ、それは、伸坊、
それは、そうとう、おかしい(笑)。
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南 |
あっはっはっは、おかしいね(笑)。
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糸井 |
オレは、三度笠だろう?
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南 |
股旅者だな。
で、幕が開いて、舞台中央まできて、
「おおーーっと!」
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糸井 |
ははははは、涙が出てきたよ。
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南 |
アハハハハ。
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糸井 |
なんだろう、自分の作品に、
立派な御殿を建ててもらったような気分だ。
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南 |
幕が開くところがいいよね。
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糸井 |
そうそう、そうなんだ(笑)。
拍子木がね、「チョーン!」って鳴るわけよ。
で、幕が開く。いやー、すばらしい。
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南 |
ははははは。
で、いきなり、股旅者うんこ踏む。
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糸井 |
そんな芝居、だめだろう。
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南 |
「待ってました! イトイ屋ぁ!」
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糸井 |
そのあとのストーリーが
すっごく難しいね(笑)。
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南 |
ふふふふふ。
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糸井 |
泣かせるのかな。
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南 |
泣かせるか、やっぱり。
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糸井 |
母を訪ねるのかな。敵をさがすのかな。
ま、なにしろ次の宿場に向かうんだ。
で、ようやく着いたと思ったら、
「おおーーっと!」
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南 |
また踏んじゃうんだ(笑)。
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糸井 |
もう、あちこちで踏むよ。
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南 |
そんな股旅者を慕って、
故郷の女が追いかけてくる。
舞台上手からぱたぱたと走ってきた女、
中央でぴたりと止まって‥‥。
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糸井 |
「アラ、いやだ!
うんこを踏んじまったよ!」
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南 |
ははははははは!
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糸井 |
「と思ったけど、
うんこじゃなくてよかった‥‥と思ったら、
やっぱりうんこだわ!」
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南 |
「イトイ屋ぁ!」
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糸井 |
えっ、それも、オレなの?
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南 |
そう、もう、ぜーんぶ糸井さん。
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糸井 |
そんで、舞台に出てきちゃぁ、
つぎつぎにうんこを踏む。
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南 |
ふはははははは!
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糸井 |
あはははははは!
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二人 |
しょうがないねぇ(笑)。
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