南 |
あ、もう、できないよ。 |
糸井 |
なに?
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南 |
さっき、ホテルを出るときにさ、
我々の旅の無事を祈ってくれた
お坊さんがいたでしょ? |
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糸井 |
うん。
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南 |
あのお経、あ、真似できる! って、
小声でちょっとできてたのに、
もうできなくなってる。
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糸井 |
ああ、ちょっと特徴的だったね。
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南 |
サボサボツサボ‥‥‥‥。
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糸井 |
そうそう(笑)。
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南 |
もっと似てたんだ。
さっきまで。
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糸井 |
すぐがいいんですか、やっぱり。
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南 |
そう、すぐだね。
特徴がどんどん飛んでいくからね。
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糸井 |
ああー、揮発性なんだ。
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南 |
そう、揮発性なの(笑)。 |
糸井 |
いろんなことが揮発するよね。
占いのありがたみとかも揮発する。
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南 |
ははははは。
それは、ゆうべの占い?
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糸井 |
そうです。
せっかく、えらいお坊さんに
来世のことを占ってもらってるのに、
南さんが明らかに眠そうだから、
ありがたみが揮発して、揮発して。
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南 |
ふふふふふ、
来世はゾウだってね、オレ。
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糸井 |
そうらしいね。
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南 |
ほんとはよくないらしいんだ、アレ。
「このままだと来世はゾウです。
功徳を積みなさい。
そしたら、また人間に生まれ変われる」
っていう話だったみたいなんだけど、
「来世ゾウ」って聞いて、
そりゃいいやって思っちゃってさ(笑)。
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糸井 |
お坊さんも張り合いがなかっただろうね。
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南 |
しかも、最後に、お坊さんが
「他に何か占ってほしいことはあるか?」
って訊いてくれたのに、
「とくにありません」って。
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一同 |
(笑)
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南 |
悪いことしちゃったな。
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糸井 |
あのお坊さん、顔的には、
そうとうよかったよね。
若いのに、きりっとしてて、威厳があって。
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南 |
うんうん。立派な顔してた。
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糸井 |
あんなにかっこいいのに、
南さんに揮発させられて。
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南 |
ハハハハ、悪かった。
あのさ、あのお坊さん、芸風が、
マーロン・ブランドだったよね。
こう、あんまり口をあけないで、低い声で、
ぼそぼそ、ぼそ、ぼそぼそぼそって。
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糸井 |
マーロン・ブランド(笑)。
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南 |
『地獄の黙示録』んときの
マーロン・ブランド。 |
糸井 |
『地獄の黙示録』の
マーロン・ブランドってね、
撮影前に交わした約束を守らずに、
すごく太って撮影現場に現れて
みんなを困らせたんだって。
あんなふうにぼそぼそしゃべるのも
当時、太りすぎてたせいかもしれない。
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南 |
へー、そうなの。
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糸井 |
あと、共演のマーティン・シーンが
鏡を割ってケガしたり、
デニス・ホッパーがセリフを憶えなかったりして、
たいへんだったらしいよ、あの映画。
マーロン・ブランドも、
デニス・ホッパーといっしょの撮影は
いやだとか言い出したりしてさ。
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南 |
ふーん。
マーロン・ブランド、とんでもないね。
どうなの、俳優として?
あんなジャングルまで行ってさ、
どういうことなんだろうね。
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糸井 |
まぁ、それはさ、
わざわざブータンまで行って、
こんなしょうもないことをしゃべってる
ぼくらと同じことでさ。
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南 |
え!? そうなの!? |
一同 |
(笑)
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糸井 |
ま、伸坊がマーロン・ブランドなら、
ぼくはマーティン・シーン。
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南 |
え、そうなの?
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糸井 |
取り替えてもいいよ?
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南 |
いや、でも、マーロン・ブランドのほうがいいか。 |
糸井 |
じゃあ、南さんはマーロン・ブランド。
で、来世はゾウ。
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南 |
うん。マーロン・ブランドより、
ゾウのほうがしっくりすんだよなぁ。
(来世がゾウ。ちょっとうらやましい。つづきます) |