糸井 |
あ、のぶひろ、いい景色だったなぁ、いま。
|
南 |
いい景色でしたね、お父さん。
|
|
糸井 |
うん。
これを日本だと思えば、そうとう雄大だよ。
|
南 |
ちょっと、日本画みたいにも見えるね。
|
糸井 |
これを日本だと思えばな。
|
南 |
いや、日本だと思わなくても。
|
糸井 |
あ、真面目な話?
|
南 |
うん。日本画みたいな風景じゃない?
|
|
糸井 |
うん、日本画みたいな風景だと思うぞ、のぶひろ。
寄り添っていくんだ、お父さんは。
|
南 |
ははははは。
生えてる木は、松なのかな、これ。
|
糸井 |
マツコデラックス。
|
南 |
植えてるのかなぁ、松。
|
糸井 |
いや、それは植えてないだろう。
|
南 |
じゃ、自然に?
|
糸井 |
うん。
松がこう、ぼっくりをころころ転がして
種が出たんじゃないか、芽が。
|
|
南 |
ああ、松が、ぼっくりを。
|
糸井 |
そう。松が、ぼっくりを、ころころと。
ほら、そういう歌があったじゃないか。
|
南 |
歌?
|
糸井 |
そう。なんか、童謡でさ。
♪まつぼっくりがあったとさー
ころころころころあったとさー
|
南 |
うーん、知らないな。
|
糸井 |
♪ころころころころォ、あったとさァー
おさるがひろって、食べたとさァー
あったとさァーー(なぜか田原俊彦風)
|
南 |
(田原俊彦風にはあえて触れず)
松といえばさ。
|
|
糸井 |
うん。
|
南 |
ブータンではマツタケがとれるんだってさ。
|
糸井 |
そうらしいねぇ。
しかも、ずいぶん安いんだって。
1キロ単位でどっさり売られてるらしい。
|
南 |
そうだってね。
あのね、ぼくの知り合いで
岡山出身の人がいるんだけど、
その人が育ったところでは
マツタケがふつうにたくさんとれたんだって。
で、その人が子どものころ、
お弁当にマツタケしか入ってなかったことがあって、
それは、すごく苦い思い出だったって言ってた。
|
糸井 |
切ない思い出なんだね。
マツタケだけのお弁当が。
|
南 |
そうそう。
マツタケとかサワガニとか、
いきなりお弁当箱に入ってたらしい。
だから、東京来たら、わざわざ料理屋に行って
マツタケだのサワガニだの食べてるのが
理解できなかったんだって。
|
糸井 |
サワガニね。
東京の人はサワガニだけで喜びすぎだと。
岡山の人は、そういうことじゃサワガニいんだ。
|
|
南 |
‥‥ああ、はい。
|
糸井 |
岡山の人は、落ち着いてるんだ。
サワガニごときのことでは、サワガニいんだ。
|
南 |
‥‥すごい景色ですねぇ、お父さん。
|
糸井 |
そうだな、のぶひろ。 |
|
|
(松がぼっくりを転がすように、つづきます) |