糸井 |
ぼくらがいま泊まっているホテルは
ほんとうにすばらしくて、
問題はなにひとつないんですが。
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南 |
うん。
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糸井 |
なにひとつないっていう前提で、
もう、ぜんぜんそうしなくていいんですけど、
どうしても一個だけリクエストしろっていうんなら、
やむをえず、言わせていただくことが
ただひとつだけあって。
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南 |
あるんだな(笑)。
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糸井 |
もう、ほんと、たいした問題じゃないんですけど
その‥‥シャワーの‥‥
お湯と水の区別が‥‥つきづらい。
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南 |
あっ、それはそう(笑)。
まったく同じ蛇口が並んでるんだ、壁にふたつ。
ものすごくおしゃれなデザインなんだな。
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糸井 |
そうそう、それで、けっこう、
わかりづらく‥‥あ、いや、もう、
ほんと、忘れてもらっていいです。 |
南 |
あ、そうなの?
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糸井 |
まったく気にしないでください。
ただ、その、ほんのちょっとだけでも
こっちの蛇口をひねると水で、
こっちの蛇口をひねるとお湯だという
マークかなんかつけていただけると‥‥。 |
南 |
わはははは。
しかも、水は天井から降ってくるからね。
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糸井 |
そんなマークとか、表示なんてね、無粋ですよ。
シックな雰囲気がぶちこわしですよ。
‥‥でもね?
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南 |
ねぇ(笑)。
いろいろ実験とかしなきゃいけない。
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糸井 |
そう、まずは右を出してみて、
「あ、違うな」とか、「お、来たな」とか。
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南 |
考えもなしに、
いっしょに回しちゃったりすると、もう。
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糸井 |
それ、ダメ。
元も子もなくなっちゃう。
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南 |
そうなんだよ(笑)。
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糸井 |
だから、けっきょく、
右で試して、左で試して
みたいなことをね、やらざるをえなくて。
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南 |
しかもさ、試してる間、
ちょっと待ってなきゃいけないわけじゃん。
温度が変わるまで‥‥。
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糸井 |
そうそうそう。
それで、裸になんかなってた日にゃね。
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南 |
ぼくの場合はね、
いきなりなっちゃってるんですよ。
アハハ。
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糸井 |
そういう人もいらっしゃいますよね、やっぱりね。
で、ね? 以上のことを踏まえまして、ね? |
南 |
なに。 |
糸井 |
こんなことは、ほんとうにもう、
忘れてもらってけっこうなんですけど、
その、どうでしょうね、なんていうか、
‥‥赤と青なんかは、わりと好みですねぇ。 |
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一同 |
(笑)
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南 |
ハハハハハ、デザイン的にいって、
赤と青は、あまりにも、でしょ。
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糸井 |
いや、ですからね、なにもね、
ひねるところ全部を真っ赤にしろとか、
水が出るほうを真っ青にしろとか、
そういうことを言ってるんじゃなくてね、
どうでしょう?
その、誰かが間違ってマニキュアつけちゃった、
みたいな‥‥ぽつんっていう‥‥
点くらいのものでもね。
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南 |
はっはっはっは。
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糸井 |
じゃなければ、ほら、なんていうの?
「H」とか? 「C」とか?
ベタなところでいえば?
アルファベットひと文字だけ、書いちゃうとか?
いや、なくていいんですよ、ほんとに。
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一同 |
(笑)
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南 |
ははははははは。
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糸井 |
なくていい、ほんとになくていい。
だから、たとえばね、
このホテルの系列店の全支配人が
世界中から集まってね、
「我々はこのホテルのどこをどう改善すべきか?」
っていう年に一度の会議があったとするでしょ。
そこで、ゲストとして招かれたぼくが、
どうしてもということで発言をうながされたなら、
「私からいうべきことは何もないのです」
と、言っておいてから、その話を‥‥。
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南 |
しますか?
けっきょく、しますか(笑)。
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糸井 |
まぁ、することはする。
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南 |
アハハハ、
あのー、この際、だから、
もう、温泉マークをね!
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糸井 |
わははははは!
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南 |
あれを世界に広める、
っていう意味合いでも。
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糸井 |
むしろ、そういうチャンスとして。
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南 |
そうそうそう。
もう、世界中に、誇らしく。
「これ、お湯の象形文字です!」つって。
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糸井 |
いいかもしれません(笑)。
(いいかもしれません。つづきます) |
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