南 |
いやぁ、おもしろかったなぁ、おじさん。
|
糸井 |
よかったねぇ。
あの人もおもしろいし、
話もおもしろかったし。
|
|
南 |
うん。
|
糸井 |
台所があったかいから
みんなそこで寝るだろう、ってね。
ああいうのは、
知らない人には絶対言えないよね。
台所はあったかいんだよ、
火が起きてるんだよ、まだね。
そんな程度のあったかさが、
みんな大好きなんだよね。
いやー、よかったなぁ。
なんだろう、ああいう‥‥ああいうおもしろさ。
|
南 |
うん。はははは。
|
糸井 |
子どものときには
ああいうことのおもしろさは
わからなかったね。
ふつうのことみたいに思えただろうね。
ああいうおじさんの、
なんともいえないおもしろさっていうのが。
|
南 |
それから、おじさん、
糸井さんのこと
ものすごく気に入ってたよね。
|
糸井 |
あー(笑)、
オレも気に入られてるのは実感してた。
|
|
南 |
それもさ、いろいろ意見を交わしたあと、
とかじゃなくて、もう、いきなり。
|
糸井 |
そうそうそう(笑)。
|
南 |
「目を見ればわかる」って言ってね(笑)。
そんでさ、すごく気を遣っててさ、
糸井さんばっかりほめたら悪いと思って、
あのー、オレとかさ、ほかの人のことも、
「あなたもすばらしい」とかって
ほめてくれるんだ。
|
糸井 |
そのへんは、さすが村長だね。
責任感があるね。
|
南 |
でも、明らかに、
糸井さんをいちばん気に入ってるんだ。
なんか、こう、あったんだろうね。
|
|
糸井 |
一発でわかるなにかが。
|
南 |
うん。
わかるわかる、って感じが。
だって明らかにさ、
こっちは駄洒落言ってて、
誰も通訳してないのに‥‥。
|
糸井 |
笑ってたもんね。
|
南 |
そうそうそう(笑)。
いまこいつおもしろいこと言ったな、
っていう雰囲気だけで
ちゃんと笑ってるんだもん。
|
|
糸井 |
そうそうそう。
つまり、わかってるってことだよね。
|
南 |
そう。
あー、わかってるんだーと思って。
|
糸井 |
そうそうそう。
|
南 |
通訳なくても通じてる。
|
糸井 |
そういえばオレ、昔、
エスキモーの村なんかでも好かれたしね。
異国の人として、わりと受け入れられる。
|
南 |
あー、水木しげるさんがラバウルで
現地人に好かれたってのと同じだね。
やっぱりね、あるんだよ。
そのときにさ、別に好かれようと思ってとか、
よろこばれたいと思って、
なんとかやるんじゃなくて、
その、わかるんだよ、
こいつはこっち側の人間だっていうのが。
|
糸井 |
まぁ、よろこばれたいっていう気持ちは、
みんなにあると思うけど‥‥。
|
南 |
それだけじゃダメだ。
|
糸井 |
そうだね。
|
|
南 |
だから、糸井さんは、戦争のとき、
異国で孤立しても生き残れるね。
水木さん的に生き残れる。
だってさぁ、水木さんはね、
川の向こうには現地の村があるから
行っちゃいけないって言われてんのに、
行っちゃうんだもん。
|
糸井 |
はははは。
|
南 |
で、行って、ものすごく気に入られちゃうの。
|
糸井 |
なんだろうね、そういうのってね。
|
南 |
それからさ、小学校の子どもたちがさ、
授業中なのに、糸井さんのことを
ちらちらちらちら見ててさ。
糸井さんがおもしろい顔すると、
みんなつき合ってくれてたじゃない。
|
糸井 |
うん(笑)。
あんまり遊んでたから
先生に怒られてたけど。
|
|
南 |
ふふふふ、そうそう。
|
糸井 |
人としてどうこういうより、
もう、虫とか魚とかぐらいの
レベルの親近感なんだろうね。
|
南 |
ああ、そうかもねぇ。
だって、水木さんも、
最初に現地の子どもに好かれたから
生き残れたんだからね。
子どもをちょっと笑わしたりなんかして、
食べ物を持ってきてもらったりして。
|
糸井 |
あー、そうなんだ。
|
南 |
で、そのうち、そこの部落に行ってさ、
今度はそこの村長さんの奥さんが
人を見る目があって、水木さんを信用するんだ。
「目を見ればわかる」って。
|
糸井 |
おんなじだ(笑)。
|
南 |
でね、その奥さんは水木さんを
村の新しい村長にしようとするわけ。
新しい血を入れなきゃダメだっていうんで。
|
糸井 |
あ、そういえば、あのおじさんも、
ブータンで所帯を持て、
みたいなこと言ってたよ。
|
|
南 |
ジャパン、クロス、ブタン‥‥
ジャパン、クロス、ブタンつってた。
|
糸井 |
交流させようと。さすが村長。
|
南 |
(笑)
(さて、そろそろ。まだ、つづきます) |