第23回 タコを切る。
タコは貴族なんですよ。
切ると、青い血が出る。
糸井 たしかに、そういう液体が出るね。
あれ、血なんですか?
うん。青い血。高貴の血ですよ。
オレもはじめて見たときびっくりした。
糸井 それはどこで見たの?
それはね、タコの取材に行ったときに見た。
糸井 タコ漁の取材(笑)。
あなたもあなたでお持ちですね。
いろいろとね(笑)。
去年、いや、一昨年かな。
『dancyu』の取材で。
糸井 『dancyu』の取材でタコの血を見たと。
それはなに? 伸坊がタコに襲いかかったわけ?
『dancyu』の取材で?
糸井 あ、そうか。
襲いかかったとしたら、
『dancyu』じゃないね。
そう思う。
それを見たのは、漁のあとなんだけど、
すぐにおじさんがさばいてくれることになってね。
こう、タコがまな板の上に乗せられて、
いわゆる、まな板の上の、鯉、鯛、鯉‥‥
あれ? まな板の上は鯉だよな?
糸井 まな板の上は鯉ですよ。
まな板の上の?
糸井 鯉。
鯉。そう。鯉。
「まな板の上の鯉」状態でね。
ふつう、魚っていうのは、
まな板の上に乗ったらあきらめるわけだ。
糸井 うん。ふつうはね。
ところが、さっきの話じゃないけど、
タコっていうのは、あきらめない。
糸井 そうなんだよ。タコはしぶとい。
こう、おじさんがタコをしごくとね、
まな板の表面に、一所懸命しがみつくんだ。
糸井 し、しがみつく?
そう、もう、こういう感じさ。
糸井 へーーー。
タコって、ふだんは、
うにゅうにゅしてるじゃない?
それがね、こうーやってしごくと、
もう、こうやって、必死で、
まな板にしがみつくんだ。
そうするとね、切るほうとしては、
すごく切りやすくなるわけ。
糸井 ああ、なるほど、なるほど。
「これがたすかるんだなー」
なんて言いながら、おじさんが、
しごきながら、切ってくれるわけ。
糸井 いい話だ。で、血は?
出たよ。青い血が出てきたの。
そしたらね、さーっと、色が抜けるんだよ。
糸井 タコから。
そう。それまではタコって、
茶色っぽい色をしてるんだよ。
それが、青い血が抜けると、
さーっと白っぽくなっていく。
糸井 へーー。
(続くがいい)

2008-05-27-TUE


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