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南 |
テレビって、昔は
ひとんちで見せてもらってたよね。
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糸井 |
うん。なに見てた記憶がある?
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南 |
相撲を見てましたね。
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糸井 |
相撲ですか。
ぼくはプロレスでしたね。
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南 |
プロレスはさぁ、
放送時間がけっこう遅いじゃない。
夜、8時とか、遅くなるからさ、
ひとんちに居座るのが
ちょっと気まずい、みたいな感じ。
なかった?
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糸井 |
うちの近所では、
遠慮なくみんなが訪れる家、
っていうのができちゃっててさ、
近所数件の人たちが一軒の家に
当たり前のように押し寄せてた。
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南 |
プロレスは、どっちかっていうと
街頭テレビみたいなので見てた感じ。
市場の入口のところにテレビがあってねぇ。
あと、サンキュー食堂っていう食堂があってね。
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糸井 |
サンキュー食堂、いいねー(笑)。
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南 |
サンキュー食堂、いいだろう?
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糸井 |
いい。サンキュー食堂。
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南 |
「サンキュー!」って言うんだ。
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糸井 |
サンキュー食堂だけに。
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南 |
うん。サンキュー食堂だけに。
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糸井 |
筋が通ってるね。
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南 |
そこでもって、
おせんべいを売ってるんだよ。
その、おせんべいを1枚買ってね、
そのせんべいをバリバリバリって
ぜんぶ食ってなくなっちゃうと、
そこにいさせてもらってる理由まで
なくなっちゃうから、
買ったおせんべいは、ゆっくり食べる。
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糸井 |
なるほどね(笑)。
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南 |
こう、まるでリスが、
ちょっとずつおせんべいを食うように。
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糸井 |
はいはいはい。
両手で持って、前歯でカリカリと。
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南 |
ちびちびと食って、
それで相撲をね、たっぷり見るわけ。
幕内から、結びの一番まで、
せんべい1枚で見るのが基本。
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糸井 |
そのおせんべいっていうのは、
食堂のメニューなの?
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南 |
メニューというか、売り物だね。
食堂の中に、なんだろうな、あれ。
こういうガラスのビンみたいなケースがあって、
そこにおせんべい入ってて。
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糸井 |
はいはいはい、わかるわかる。
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南 |
まぁ、酒のつまみに
おせんべいもどうぞ、
くらいの感じで売ってて。
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糸井 |
あの、ガラスのビンに入ったおせんべいって、
オレ、子どものときに、
しょっちゅう見たような気がする。
なんか、ちょっと食べるんならこれですよ、
みたいな感じで置いてあるんだよね。
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南 |
ああー。
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糸井 |
うちの父親の仕事場の
待合室みたいなところに、
いつもそのせんべいのビンがあってさ、
おやじのところに
おつかいで出かけていくっていうと、
せんべいを買ってもらって食べてたな。
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南 |
ふーん。
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糸井 |
でも、そんな話、
お互いに、ものすごく古い話だね。
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南 |
ははははは、そうだねぇ。
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糸井 |
子どもが足袋履いてるような時代の話だよ。
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南 |
うん、履いてました。
足袋、履いてた?
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糸井 |
履いてた。
靴下は、あとからだよ。
(周囲のスタッフなどに向かって)
オレたちはね、そういう時代から、
社会を見つめてきたの。
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南 |
(周囲のスタッフなどに向かって)
なぁ、キミたち、「こはぜ」って知ってるか?
こはぜ。知らないだろう。
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糸井 |
「小笹(こざさ)」じゃないよ?
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南 |
‥‥‥‥「小笹(こざさ)」って、なに?
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糸井 |
あ、ごめん。
「小笹(こざさ)」はね、うちのアルバイト。
通称、コザサちゃん。
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南 |
それはさすがにわかんないな。
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糸井 |
おせんべいと足袋は知っててもね。
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南 |
で、「こはぜ」は?
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糸井 |
そうだった。
(周囲のスタッフなどに向かって)
いいか、おまえら、南さんの説明をよく聞け。
先生、お願いします。
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南 |
じゃ、ふつうに言うけど、
こはぜっていうのはね、
こういうツメのようなものでね、
こう足袋を履いて、ここで留めるじゃない?
そのツメのことをいうんだ。
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糸井 |
こう、金色の金具でね。
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南 |
うん。で、この、こはぜに、
七文とか、八文半とか文字が書いてある。
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糸井 |
それがサイズを表してるんだ。
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一同 |
へぇー。
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南 |
ああ、ほんとに知らないんだね(笑)。
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糸井 |
もっと言おうか。
ちょっと色気づいたおねえさんとかは、
こはぜにマニキュアを塗る。
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一同 |
へぇー。
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糸井 |
それはウソ。
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南 |
わははははは、言った途端にうそ(笑)。
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糸井 |
はははははは、信じたね、いま、みんな。
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一同 |
‥‥‥‥。
(‥‥そりゃ信じるよ。つづきます) |