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糸井 |
伸坊は、けっこう相撲が好きだよね。
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南 |
好きなんだよ。
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糸井 |
だいぶ、相撲好きだよね。
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南 |
そうだね。
子どものころからずっと。
まえにね、雑誌の銀座百点でもってさ、
鼎談の記事があってね。
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糸井 |
うん。
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南 |
ドイツ文学者の池内紀さんと
北原亞以子さんがホストで、
オレがゲストで呼ばれて、
3人で、こう、話してたんだけど、
なんかの拍子に相撲の話になってさ。
昔の相撲取りは、
おもしろい人が多かったねー、
とかって話になったわけ。
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糸井 |
うん、うん。
もう、誰も覚えてないような話ね。
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南 |
そうそう、誰も覚えてないような話(笑)。
たとえば、大起(おおだち)なんていう
すごく大きい相撲取りがいてさ、
「大起ってのは大きかったですねー!」
なんつって話すわけ。
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糸井 |
うん(笑)。
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南 |
その大起っていうのはほんとに大きくてさ、
ただ、立ってるだけ、みたいな相撲をとるんだ。
こう、立ち会いに手を上げてね、
相手に、もろ差しになれと言わんばかりに。
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糸井 |
ふふふふふ。
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南 |
で、「そうそうそう」とか言い合ってね。
「松登(まつのぼり)っていえば、
ぶちかましだもんね」なんつってさ。
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糸井 |
誰もわかんない(笑)。
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南 |
誰もわかんないんだよ(笑)。
でも、その3人は、
ものすごく盛り上がってるわけ。
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糸井 |
うん。
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南 |
「そうそうそう」なんて言って。
「褐色の弾丸」とかね。
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糸井 |
あ、房錦(ふさにしき)だ。
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南 |
そうそうそう(笑)。
でね、そういうことを言っちゃあ、
笑ったりしていると、
同席した編集の人が、
「すいません、ちょっと他の話を‥‥」って。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
ははははは。
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南 |
あはは。しかたがないから、
「あ、そうなの?
おもしろいのになぁ‥‥」なんて言って、
話題を変えたりしたんだけど。
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糸井 |
それ、オレは両方の気持ちわかるなぁ。
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南 |
ははははは。
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糸井 |
どっちもあるわ、それは。
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南 |
あのね、オレ、
「思いっ切り、昔の相撲取りの話をしたい!」
と思うんだけど、なかなかそれができる
相手はいないんだよなぁ。
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糸井 |
いないだろうねぇ(笑)。
若い人だとまずムリだろうし‥‥
松村邦洋とか、ああいう人は、
知識としては知ってるかもしれないけどね。
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南 |
あー、知識として知っててもねぇ。
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糸井 |
うん。
大起ってのはでっかくてさぁ、
みたいな話はできないだろうねぇ。
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南 |
やっぱり、そのとき見た人でないとね。
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糸井 |
そうそう。
ときどき、たけしさんがそういう話を
テレビでしたがってるよねぇ。
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南 |
ああ、そうなの。
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糸井 |
うん。
で、誰も知らないに決まってる、
みたいな場所で、
わざとそういう話をしてみたり。
「いたんだよ」みたいな話を。
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南 |
ふふふふ。
したいなぁ、昔の相撲取りの話が。
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糸井 |
思いっ切り?
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南 |
思いっ切り!
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一同 |
(笑)
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糸井 |
伸坊は、相撲好きだねぇ。
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南 |
うん。
相撲好きなんだよ。 |
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(相撲と黄昏も、よさそう。つづきます) |